表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
ローランへ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
454/470

ステファニーの本屋再び


「で、今回は何の本を?」


 私は張り切ってひよこ島に転移してきたアマネに聞いた。


「うん。僕、探偵の話が好きだから、そういうので読む練習がしたい。フレ兄のは女の子ばっかり出てくる本ばっかりでつまんない」


「そうねえ、勉強するなら好きなジャンルの本を読むのがいい。好みは人それぞれだから、あなたが推理小説好きならそれがいいんじゃない」


「うん」


「私も好きなのよ。どんでん返しも好きだけど、叙述トリックとか」


「叙述トリックってどんなの?」


 私は説明しようとして、言葉に詰まった。

 アマネはこちらに転生してきて半年あまりで、うまい喩えが見つからない。


「……あ、そうだ。音楽の授業でクラリネットを壊して困ってる歌があったでしょう、題名は忘れちゃったけど」


 アマネはにっこりして頷いた。


「小学校で歌った!」


「あれが叙述トリックに近い」


「クラリネットが?」


 私は立ち止まってアマネを見た。


「歌詞は覚えてる?」


「うん」


「パパのクラリネットを壊して困ってるんだったわね」


「そうだよ」


「さあ、歌詞を書いてみて」


「…………」


「あれ、音が全部出てないな」


「その通り。音が出なくて困ってる歌と見せかけて、答えは全部書いてある──この子はクラリネットを壊したんじゃなくて、ちゃんと吹けてないだけ」


「ほんとだ、あれぇ……ほんとだぁ」


「パッと見たらクラリネットが壊れた歌。でもなんで音が出ないのかは二番の歌詞でヒントが出てくる」

 

「うん」


「でも、最初に壊れたクラリネットの歌って思い込んで覚えた子は、ヒントに気が付かない場合もある」


「あー、うん」


「叙述トリックっていうのは、それの小説版だと思えばいいと思うわ。読者の思い込みを利用して、作者の思い通りに解釈させていくの」


「へえ〜、面白そう」


「そうして最後に種明かし、面白い本だとまた最初から読み直したくなる」


「そういうの読みたい」

 

「十五歳くらいが対象の面白い本があるわ。流浪の冒険者ルークってシリーズ。確か三十巻くらいあったはず」


「どんなの?」


「世界中の珍しいものを見て歩く話。冒険あり、推理ありの人気シリーズだから勉強と地理を覚えるのにすごくいいと思うわ」


 話している間に古書店に到着した。


「入る時は細く扉を開けて」


「本が逃げるから?」


「そう。あと襲ってくる時もあるし」


 私達はそっと店内に入った。

 グレムリンのステファニーは、二冊の図鑑っぽい本と格闘中だった。


「ああ、いいところに来た!エルフと龍人の子!赤い方の本を叩き落とせ!」


 アマネはチラリと私を見て、私が頷くと赤い図鑑を捕まえに突進していった。


 二人はしばらくバッタンバッタンと大立ち回りをしていたが、ようやく図鑑たちを縛り上げることに成功した。


「……龍人の子、お前中々やるなぁ」


 ステファニーは手を叩いて喜んだ。

 アマネは褒められて少し照れている。


「お前、週に一回バイトしに来る? 前の子が食われたから俺は困ってる!」


「バイト……フレ兄がいいって言ったらやりたい」


「うむ! 龍人の子なら噛まれても死なない! 俺は助かる!」


 私は一応口を挟むことにした。


「ねえ、前のバイトが食われたって聞こえたけど?」


「そうだぞ、丸呑みだった! まあ、ピクシーだったからな」


「ふーん……小さい妖精だったからか。あ、ルークシリーズ揃ってたりする?」


 ステファニーはふんぞり返った。

 その隙に青い図鑑がジリジリと這い始めたが、ステファニーは見逃さずギュッと踏みつけた。


「もちろんある。普通のと普通じゃないの、どっちがいい?」


「どう違うの」


「人間社会版は普通の本。魔界版は場面に合わせた魔法が起きる。雪のシーンなら雪が降る」


「……溶岩とか雷のシーンは?」


「ちょっと降る」


 アマネは考えるまでもなく、魔界版を選んだ。

 読む場所を考えないと、フレスベルグの家がとんでもないことになりそうだけど。

 ちなみにステファニーが求めるバイトの内容は、週に一回仕入れた本の梱包を解いて精査する仕事だ。

 もちろん、内容ではない。

 普通か、そうじゃないかの選別だ。

 私は保護者ではないので決めるのはフレスベルグだけれど、週に一回数時間のバイトなら社会勉強にもなるし、いいんじゃないかな。

 月に四回バイトして、銀貨四枚。

 危険手当込みだそうだが、欲しい本も稀少本でなければ仕入れ値で買える特典付きだ。


 (初めてのバイトにしたら、中々高時給なんじゃないかしらね)


 ものすごく人手が欲しいのか、ステファニーはルークシリーズ魔界版セットを仕入れ値で譲ってくれた。

 どうやら彼の心のなかでは、すでに採用済みのようだ。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
丸呑みにされた妖精さんが気になって話が途中から入ってこないw 救いがあると信じています
2026/07/18 11:04 通りすがりのファン
丸飲みにされた妖精の行方が気になりますね
丸飲みされた妖精を助けてボーイミーツガール始まるんか??
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ