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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王、その他大勢

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ファンサ


 勇者パーティは順調に回復し、跳ね橋に挑みそうな気配を見せている。

 泉の瓦礫下に消えた鍵は複製してハナちゃんが使っているクッションの下に私が責任を持って置いてきた。


「タイミングどうするの」


「十九刻スタートがいいから、跳ね橋稼働の小屋は見張りを大量にして十五刻以降に隙を作る」


「ふむ、三、四時間城の探索見込んでるんだよな」


「そう。またキーアイテム集めだから」


 謁見の間に入るのにキーアイテムってのはかなり不自然な気はする。

 それだと普段どうしてるかって話になっちゃう。

 なので、扉を開くのは所定の魔法陣が刻まれたカードになっている。

 勇者たちはあちこち探して、たまたま誰かが置き忘れたカードを探すという仕組みだ。

 ちなみにカードのある場所は食堂。

 最後までずっと見張りが動かない場所だ。

 ちょうどいい時間になれば見張りは交代のため食堂前から離れる。


 (死霊にも休憩は必要だもんね?)


「お、ハナちゃんのとこから鍵出てきたぞ。不思議だろうなぁ……」


「ほら、犬だし」


「持ってきてたってことで押し通す」


「打ち合わせが始まったわね」


 勇者パーティはヒントの紙切れを並べ、精査している。

 鍵は三つ揃ったので、王子がまとめて預かるようだ。


「勇者は異界人だから、アイテム収納はポーチなんだよな」


「魔法で収納できない以上、王子が預かるのは妥当だな」


 今日は飲酒禁止を言い渡されたレスターが退屈そうに、どんぐりをフレスベルグに投げつけた。


「なんだよー」


「暇だ」


 確かに私たちは決戦までやることがない。


「招待客がずっと缶詰だから、気分転換が必要ね」


「確かに」


 カルミラはじっと私を見つめ、ニヤリと笑って言い放った。


「ジューン、暴虐の女王スタイルで招待客にファンサービスしてきて」


「えー」


「行ったら水着は勘弁してあげる」


「レスター、ニヤニヤしていないで準備して。あなたも行くのよ」


「はあ?なんで俺が」


「暴虐の女王と災厄の鬼神が一緒にいけば盛り上がるでしょ」


「なんで俺が……」


 私たちは腑に落ちぬまま、別室で着替えさせられた。

 無表情な侍女が、鏡の前に座った私にメイクを施し始めた。


「暴虐の女王第二形態。髪色は薄い金髪、目は緑寄り……ちょっと目尻を跳ねさせて吊り上がり気味で──唇は酷薄さを押し出すように薄めに仕上げましょう」


 この前着たドレスを引っ張り出し、今度はコルセットをしっかり装備して着ることになる。


「ジューン様、もっと息を吐いて」


「ぐぇ」


「まだいけます、吐いて吐いてー」


 容赦のない侍女がどんどん締め上げてくる。


「……まあ、いいでしょう。元々腰は細いですからこの程度で」


「ぐふ」


「あ、ジューン様最終局面で使った杖ってまだ持ってらっしゃいますか? 巨大なエメラルドが嵌ってるあの黒杖、会場に持っていくようにカルミラ様から指示が出てます」


「あるわ」


「レスター様は第一形態だそうですよ。エスコートにぴったり」


 そりゃそうだと思うわ。

 最初は燕尾服、第二、第三は甲冑。

 あちこち矢が刺さって血まみれだったり、腕がもげてるものね。

 サプライズのファンサービスには刺激が強すぎる。

 私の場合は第二形態では顔立ちがキツくなり、ドレスが派手になるくらいだから。


 髪はハーフアップ。

 黒百合、黒みを帯びた紅薔薇が飾られ派手に仕上がっている。

 ただ大きいだけで特に何の効果もないギラギラしたアクセサリーを付ければ暴虐の女王の出来上がり。


「過去の私はなんでピンヒールで戦おうと思ったのかしら……」


「ドレスには似合っておいでです」


「そうね……もうちょっとコルセットを」


「ダメです」


 着替えを終え部屋から出ると、コルセットとは縁のない燕尾服のレスターが待っていた。

 頭にある二本の捻れた長い角は元々なので、レスターはただ燕尾服に着替えただけだ。


「おお、雰囲気が変わっていいじゃないか」


「どうも。早く終わらせたい」


 レスターは笑いながら私を巻き込んで招待客ゾーンへと転移した。

 ざわざわしていた招待客は一瞬静まり返った。

 全員慌てふためいてゴソゴソし始める。

 そして立ち上がり、歓声を上げた招待客は全員黄色のスカーフやリボンを身に着けており会場は黄色ばかりになった。

 もちろんレスターの応援グッズ的な紫のペンライトも会場を照らしている。

 私の応援グッズは緑のはずだが、黄色ばかりだ。


 (納得いかないわ……)


 どよめく会場を私とレスターはゆっくり歩き回り、笑顔で握手などをした。


「……黄色を身につけているとエルフから襲われないというのが浸透しているなぁ……」


「正確には黄色を身につけているとあなたに敵対意識はありませんってアピールになるだけで、襲われないわけじゃないのよ」


「エルフの謎文化すぎる」


「そうしないと出会い頭に殺し合いになるからなのよ」


 

 




 

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