ソフィーちゃん
屍龍四体はフォーメーションを組んで勇者パーティに向かっていく。
「え、戦術的配置?」
「屍龍って共闘するもんなのか」
「勇者大丈夫か」
アラインが嫌そうに周囲を見渡し、モニター越しに目が合った気がする。
「おい、撮影班見つかってんぞ」
「エルフからは逃れられないんだから、そこは良いんだけど……勇者大丈夫かしら」
ロウが前に出て、攻撃を弾いていくが相手は四体。
王子と勇者も前に出て、防御三枚で応戦している。
アラインが時折障壁を前衛に張り、そのタイミングで屍龍に攻撃を積み重ねていく。
屍龍たちは自分たちの立場を理解していて、無茶な攻撃はしていない。
むしろ順番を守って攻撃しているようだ。
「うーむ、八百長とはいえ押されてるな……」
「一頭でも嫌な相手なのに、複数とか鬼畜」
「あ、一頭後ろに転がった……消えたな」
「ああ、龍は転移できるから離脱ね」
敵として現れる龍が嫌がられるのは、半数以上の龍が転移できるからだ。
強い上に転移までしてくるとなると、戦っても仕留めきれない。
今回の屍龍たちは全員転移持ちだから、素体が最初から強いタイプ。
(と言っても、龍が転移を使うのは珍しい。いいもの見た気分)
転移する必要がない強者なので、滅多に見られるものではない。
「龍の転移はレアよ、見れて良かったわね」
「そうなのか? 言われてみたら確かに見たことないかも」
勇者の攻撃力はさすがで、屍龍の前足を軽々と切り飛ばした。
屍龍は大声で吠えたあと転がって転移していく。
「おおー死闘だけど良い感じで屍龍が消えていく」
「正直、屍龍がここまで演技派だとは思わなかったわ」
ご褒美のポテトフライが効いているのだろうか。
「あ、四頭目退場……あとは尻が埋まってる骨の子だけだ……おい、ソフィーが巨大化し始めたぞ」
「ええっ!?」
ビビちゃんの横に飛び降りたらしいソフィーちゃんが、どんどん大きくなっていく。
ビビちゃんたちが動かないので勇者パーティは迂闊に近寄らず、遠くから様子を窺っている。
「蛇の体、小さい翼、前足……やっぱケツァルコアトルじゃん?」
「この世界にそんな名前の魔物はいないわよ」
「いや、真っ黒だけどケツァルコアトルじゃん?」
「似てるのは認めるけど──」
ソフィーちゃんはビビちゃんより数メートル大きいサイズで落ち着いたようだ。
「八メートルくらいあるか? いや……全長十メートルくらい?」
ソフィーちゃんの周囲は黒いスパークが不気味に弾けている。
ビビちゃんは気にしてないようだ。
「泉にハマっている屍龍さぁ……あれ、ハマりすぎて出られなくなってないか?」
(私の気配をさせているビビちゃんを、ソフィーちゃんが仲間と認識して守ってる可能性はある……)
ビビちゃんが身動きできないなら、尚更だ。
どうしたものか。
「ちょっと現場まで行ってくる」
「見つからないでよ」
「善処するわ」
隠蔽魔法は掛けていくが、このままの姿は不味い。
暴虐の女王の公式映像は金髪に真紅のドレスだから、金髪になっていくべきね。
万が一姿を見られてもミスリードできるように、その姿で行こう。
私はカルミラに手伝ってもらい真紅のドレスを着て、金髪に変化したあとでもう一度隠蔽魔法を重ねがけした。
(よし、行くか)
勇者パーティと屍龍を挟んだ逆側に転移し、木陰から様子を窺う。
バチバチと何かが爆ぜるような轟音、皮膚を焼かれるような強い魔力。
ソフィーちゃんは興奮しているのか、私の気配に気が付かない。
煌々とした黒い瞳はまっすぐに勇者たちを見据えている。
(これは……勇者たちは近寄れない)
迂闊に近づいただけで、消し飛ばされそうな濃密な魔力圧だ。
ビビちゃんは困惑した気配を漂わせ、もぞもぞしている。
フレスベルグの見立て通り、ハマりすぎて出られない模様。
どうしようかと足を踏み出した瞬間、ソフィーちゃんが身の毛もよだつ咆哮をあげ、勇者パーティに突っ込んでいく。
「あ、やば」
バァン!と大きな音がして、勇者たちがふっ飛ばされ、そのまま倒れ込む。
大きな音はアラインがとっさに張った障壁がはじけ飛んだ音だ。
私はソフィーちゃんの翼を掴み、手から伝わる激痛と共にひよこ島へ転移した。




