勇者パーティ一時撤退、野営
ラウバッハは死んでるし、私たちは星核転生者なので、とても頑丈。
数週間睡眠を取らなくても問題ない。
スタッフは交代制である。
夜の控室は静かに時を待っている。
モニターは焚き火を囲む勇者パーティを三方向から映し出していて、もう食後のようだった。
音声までは拾えていないのが残念だが、それは後日の放送で明らかになりそう。
「どうやら二交替だな」
レスターがモニターを見たまま呟く。
見ると最初はラウゲン、ロウ、勇者、カレーニアが番をするようだ。
ハナちゃんは勇者の背後で陣取っている。
「交代のタイミングで死霊騎士投入ね」
「優しいわねえ、交代のタイミングだなんて」
「あんまり消耗させすぎてもね」
カルミラは手元の資料から目を上げずに、そう返事をした。
「二時間くらい帰ってもいい? 留守番の犬に夕飯あげないと」
「あ、そうね。ミシュティは招待客相手してるし、ワンちゃんはお留守番ですものね」
「俺、シャワー浴びたい」
「ずっと疑問だったんだけど何で前日から鎧装備したの」
「…………」
フレスベルグは一旦鎧を脱ぎ捨て、ひよこ島についてきた。
「自分の家に行きなさいよ」
「やだよ、ジューンちの温泉のほうがいい」
フレスベルグは屋敷の裏手に作った男性用の小さな温泉がお気に入りなのだ。
小さいといっても、室内の浴室とは比べ物にならないからね。
手足の長いフレスベルグが身体を伸ばせるとあって、最近は頻繁に風呂だけ入りに来ている。
屋敷と繋がった建物ではないので問題があるわけではないし、私の邪魔にならない限りは良しとしている。
不平不満たっぷりのディーとクリムゾンヘルファイアをなだめ、お肉を与える。
犬たちは満腹になったあと、元気に外へ繰り出していった。
フレスベルグは勝手に屋敷には入ってこないので、私はちょっとだけソファーに腰掛けて温かいお茶を取り出した。
「ふぅ……」
フレスベルグは入浴を終え、もう死の島へ戻ったようだ。
前日から鎧を着込むとか張り切り過ぎである。
脱ぐのはいいが、着る時はまたドワーフ三人がかりだ。
ドワーフ達にしてみたら二度手間もいいところじゃないかしらね。
修理が必要になった時のために待機はしてくれてるみたいだけれど。
ポチとマカロンちゃんの様子を見て、変わりないことを確認してミシュティの飼っているコカトリスに飼料をあげた。
もう何回も餌をあげているというのに、このコカトリスどもは茂みに顔を突っ込んで居ないふりをしている。
最後に波を追って遊ぶ魔咆犬に声を掛けた。
「うん、忘れ物は無いし……あなたたち、いい子で待ってるのよ。ケンカはしないようにね」
犬たちに噛みやすそうな骨を渡し、私は死の島の控室へと戻った。
「酒が飲みたい」
「ダメよ」
「決戦は明日だろ、良いじゃんか」
「な。いいだろ」
カルミラとレスター、フレスベルグが飲酒について攻防戦を繰り広げている。
「ジューンも飲みたいよな?」
「私を巻き込まないでよね。どうせちょっと飲むだけじゃ済まないんだから、出番が終わるまで我慢しなさいな」
席を外した数時間の間に勇者たちは死霊騎士戦を終え、後攻の組み分けチームが夜番を交代していた。
アラインは火から少し離れ、身動ぎすらしない。
王子とジーンは火を囲んで時折会話をしている様子。
「エルフのあの協調性のなさって、なんでなのかしら……」
「ブハッ、それジューンが言う?」
「うーむ、エルフにしては会話が成り立つ方だとは思うが……協調性はなぁ」
「はぁ? 協調性あるでしょうが」
「うん……無くはないな」
レスターがどうでも良さそうに言い、仕方ないとでも言いたげに珈琲を取りに行った。
隅の小さなテーブルには、珈琲と紅茶、摘んで食べられる軽食が用意されている。
「フレスベルグ、なんで生ハムばっかり食べるの。キュウリの方も一緒に食べなさいよ」
キュウリと生ハムのサンドイッチが交互に重なっているが、フレスベルグは生ハムのサンドイッチしか食べない。
よって、大量のキュウリのサンドイッチだけが残っている。
「フレスベルグの方が協調性無いんじゃないの」
「確かに」
「確かに」
「なんだよー」
「あ、ロウが起きてきたわね」
熊獣人のロウがテントから出てきた。
王子とジーンは火から少し離れて座り直した。
ロウはおそらくパーティの食事を担っているらしく、鍋に水を入れ火にかけている。
「朝か。死の島は朝も薄暗くてなんだか時間がわからなくなるなぁ」
「島の上の雷雲のせいもあるかもね。そろそろ消すと思うけど」
最終決戦の地が薄暗くて陰惨なのはイメージ通りではないだろうか?
少なくとも爽やかな雰囲気よりは、合ってると思うわ。




