勇者パーティ、探索開始
勇者たちは拠点を整え、プティバイソンで昼食をとったようだ。
火のそばにアラインを残し、周囲を探索しに行く様子。
「人選も妥当だし、なんかこう安定感あるよな」
「生き残る確率が高い動きだ」
「……ねえ」
「なんだよ」
カルミラが屍龍のモニターを指さした。
「ねえ、なんであの屍龍だけお座りしてるの」
「お座り?屍龍が?……ホントだな、お座りだ」
「待って、骨の色が……ちょっとあの屍龍おかしくない?」
カルミラは撮影班に該当屍龍をズームするよう指示した。
「骨が水色……?」
「いや、薄緑じゃね?」
「モニターだとわかりにくいわね」
「…………この色ってさぁ」
全員が私を見たが、黙秘させていただきたい。
私は知らん顔で紅茶に口をつけた。
「撮影スタッフに尻尾振ってるんだけど」
「…………」
「あ、斥候のラウゲンが跳ね橋を偵察してる」
「ギミックがあるからな。まず跳ね橋は確認しないと話が進まん」
「順調ってことね」
一応、跳ね橋とその横の小部屋前には死霊騎士が歩哨として立っている。
隙を作るため、勇者パーティが近くに来たら三十分刻みで交代することになっている。
小部屋の前は定期的に二十秒、無人になるよう動線が組まれているのだ。
一時間ほど様子を窺っていたラウゲンは、中は無人と判断したのかスルッと小屋に滑り込んだ。
「あ、小屋に入ったわね」
小屋の中はもちろん無人。
跳ね橋を動かすレバーは魔法陣と連携させてあって、橋を下ろしたかったら魔法陣を起動させなくてはならない。
魔法陣の外周には三つの水瓶が置かれていて、それぞれ違う量の水を注がないと三つの鍵穴がある石板が出現しない。
要は正しい分量の水の重さと、鍵を三つ見つけないとダメ。
更に魔法陣を起動させる魔力は女性のものに指定されている。
どれも島中にヒントの紙切れが隠されているので、勇者たちはラウゲンが持ち帰った情報をもとに探すべきものを推測して探索していく流れだ。
勇者たちにとって運がいいのか悪いのか、屍龍たちは森の中の鍵が沈んでいる泉のそばで遊んでいる。
(私が沈めたときはそこまで拓けてなかったんだけど……木を倒して入ってきちゃったのね)
現在は木が一部なぎ倒され、屍龍五頭がウロウロ出来る広さになっている。
死霊の森は広いし、死霊兵士がいっぱいいるので戦闘しながら進まなければいけない。
奥の泉につくのはまだ先だろう。
「そういえば、宝箱って今回何入れてあるの」
「宝箱とか意味深な古い袋には魔核やレア素材がメイン、あとはアクセサリー類をいくらか入れてあるの。武器とか装備って幾つも要らないでしょうし」
「確かにオーブ集めの時に装備は良いの出してあるもんなー」
フレスベルグが立ち上がり、座り直しながら納得いかない顔で口を開いた。
「ゲームとかだとさぁ……進行と共に強い装備に変えていくじゃん」
「それは現実的じゃないな。そもそもよほど性能に差がない限り、使い慣れたものの方が生存率高いぞ」
「良い装備だって装備者がポンコツだったら死んじゃうでしょ。逆もまた然りよ」
フレスベルグは少し考え、頷いた。
「それもそうだな。しかし、時間かかるなぁ……俺さぁ、魔王戦の映像は編集済みの過去編しか見たことなかったからさ。こんなにずーっと探索とか相談してるとは思わんかったわ」
勇者たちはラウゲンと合流し、廃村へと戻って打ち合わせを始めている。
「そりゃあ……編集した映像はテンポよく、ドラマティックにしてあるもの」
「こういう地味なところはカットされてるからね」
「派手な戦闘シーンやドラマティックな事案は全体の二割未満だぞ、フレスベルグ。あとはひたすら調査、補給、打ち合わせ、探索だ」
「緊迫感ある浪漫って作られてるんだなぁ……」
勇者たちは誰が拠点に残るか、誰が探索に行くか相談している様子だ。
「アラインは探索側に入れたほうがいいよな、森に入ったら死霊騎士とか屍龍がいるし……」
「さあね、どういう組み分けにするのかしら」
熊獣人のロウが火を消し、枯れ枝で覆い始めた。
「お? 全員探索か」
「妥当だな。明らかに何かいそうな森に戦力分散させて行くメリットがない」
「うーん……やっぱ地味な作業が続くんだなぁ」
現実はそんなものだ。
考えなしにウロウロするパーティに比べたら、やはり勇者パーティはかなり手強いと思うわ。




