最終会議終了(多分)
「この城の福利厚生で使用人の子どもの学校があるのよ」
「うん」
「アマネちゃんにちょうどいいのはクラスⅢね。五段階あるんだけど」
「へえ」
「Ⅲは今まさにドライアイス踏み固めてる七人ね、アマネちゃんを入れて八人」
「仲良さそう、楽しそうだわ」
「でしょう! そろそろ個人家庭教師と並行して、団体行動も学ばせるべきよ」
カルミラは目を細めて隣の部屋を再び覗き込んだ。
確かに団体行動は学ぶべきだが、保護者はフレスベルグだ。
「まずはフレスベルグに許可を得るべきじゃないの」
「そうね。じゃ、フレちゃん、そういうことだから」
「へあ? ああ、いいんじゃないか。なんか最近よく遊んでるみたいだし」
「クラスⅢは吸血鬼の子が三人、スケルトンの子が一人と……」
背後に控えている侍女がカルミラに何か囁いた。
「えっと……後はサラマンダーの子、ケット・シーの子、夢魔の子ね」
「サラマンダーにドライアイスはしんどいのではない?」
セレナの発言で一同揃って隣室を覗く。
「見ろ、溶かしてる」
「ほんとだァ〜」
「……でも楽しそう」
「うーむ、あの子だけ出すわけにはいかんな」
すぐにサラマンダーの子は防炎防熱のコートと靴を与えられ、いい感じに参加できるようになった。
「そうそう、空気中から炭酸ガスを集めて圧縮するのよ。ホントは窪地とか井戸の底とかがいいんだけど、まあここでも大丈夫──」
「おい、ジューン。アマネに変なこと教えるなって」
「出来たっ!」
「え、マジかよ」
アマネは上手に炭酸ガスを探知し、手元に収束させた。
「そう、上手ねえ。ここからは重力魔法で圧縮するのよ。液化したガスはこの容器に……」
「おい」
「そう! 風魔法でその液化したガスをあの布袋めがけて噴射よ」
「おおー、出来たぁ~!」
「おい……って……」
「んまあ、アマネちゃんったら才能豊かねぇ」
祖母気分のカルミラは大喜びである。
ちなみにスケルトンの子も液化ガス作成に成功した。
「あの子の親はスケルトンと氷翼人だから、氷の適性が高いのよね」
「なるほど。まあ二人が吹き付けやれるなら、もう私がやる必要ないわね」
「ジューンさぁ……」
ドライアイス作りはあと半分というところ。
クラスⅢの担任の見守りの元で八人の子どもたちはお小遣い稼ぎに勤しむことになった。
「ドライアイスは問題ないとして、あと懸念事項ってあるかしら?」
「うーん、食料は持ってきてるはずだし水も用意できるだろうし……」
「特にないなぁ」
「じゃあ、これで最終会議終了ね。死の島到達は四日後だから三日後に現地集合ね」
「謁見の間でいいの?」
「とりあえず謁見の間でいいわよ」
「あっ、ドライアイス係どうする」
「……風魔法も必要よね。手の空いたスタッフでローテーション組むから大丈夫」
「おっけー」
長居すると仕事が増えるので、ミシュティと私はどさくさに紛れひよこ島に戻った。
島は暖かく、居心地がいい。
初夏の爽やかな風が足元を吹き抜けていく。
「ミシュティはこのあとどういう予定?」
「最終決戦の観客誘導は勇者が死の島に到着後、逆サイドに敷かれた転移陣で、そこから更に転移での輸送なので」
「ああ、輸送はミシュティが?」
「そうなりますが、転移陣で到着した方たちの招待状チェックもあるので……数名回してもらいました」
毎回不正入場を試みる者が出るのよね。
転移陣に乗る前、到着後にしっかりチェックしないと席が足りなくなっちゃう。
「発行された招待状は四百と……四十枚なので、そこまで大変ではないのですが。陣じゃなくて単独転移で来られるとちょっと困るんですよね」
「あー、やる人居そうよね。じゃあ勇者が上陸したら、転移探知網を構築しましょう。異常通知は待機してるゼグに行くようにして……これは魔王組合に連絡しておく」
「ありがとうございます。私はこれから軽食と飲み物を作り始める予定です。現地で淹れる余裕が無いので」
「確かにね」
「メニューも絞ってコーヒー、紅茶、ココアとハムとキュウリのサンドイッチのみです」
飲食物や魔道具の持ち込みは不可。
付与効果のあるアクセサリーも防御系のみ可とされている。
ミシュティはお辞儀をし、そそくさと厨房へ向かった。
(私の夕飯はどうなるのだろうか……?)




