あ、ごめん
「ふぁー……」
デジュカに来て四日目。
そろそろひよこ島に戻るか。
呪いの魔核には心当たりがあるが、今は勇者関連のほうが後回しにできない案件だ。
ニュースは見てないが、後数日で死の島に着くはずだ。
呪いの魔核は後回し。
放って置いて腐るものでもないしね。
ちなみに昨日の新聞では博物館の事務員が行方不明と報じられていたが、今朝の新聞では発見され入院しているとあった。
呪いの魔核のせいだとは言い切れないけれど、限りなく怪しい。
(ただ、魔核は自律思考がない。魔核にあるのは……)
「強い残留思念」
残った物があまりにも強い思念だと、極稀にそういう事案はある。
大抵は生命を失った時に一緒に無くなるものだけれど。
結局ずっと飲んで寝ていたのでエルシーダの遺品整理は出来なかったが、遺品も腐らないし後回し。
私は外に出て、商店街でお土産を買ってひよこ島に転移した。
帰りは転移OKで本当に良かった。
転移での上陸は禁止されているけれど、転移監視網がエルフの受け持ちなのでやらない方が無難。
やってやれないことはない。
エルフ同士なら殺されるようなことは無いけれど、すごい金額の罰金を取られそうだもの。
「さらば休日ね」
ひよこ島に戻ると、いつも通りディーもお出迎え。
気配を探ると、ミシュティは毒草畑にいるようだ。
アマネは帰宅したのだろう、気配はミシュティだけだ。
私室に行くと報告書が幾つか置かれている。
「アーモンドゲイズが到着したのね……可愛いしか書いてないじゃないの」
後は一体何だろう。
報告書なんてそうそう出ないと思うんだけど……。
「新たな龍舎は勇者帰還後に発表したいと。所属ジョッキーの希望者が多く面談が必要。雇用予定人数は予算の関係で三名」
最後の報告書はなんだろう。
「龍舎名はティランニカに満場一致で決まったが裁可をお願いします……?」
とりあえずサインだけしておこう。
とりあえず勇者チャンネルでも見て情報収集しておこう。
私はリビングに戻り、お気に入りのソファーに座ってテレビをつけた。
ディーとソフィーちゃんが膝の上を取り合って揉めたが、ソフィーちゃんが譲って肩の上に登ってきた。
(ソフィーちゃんの方がお姉さんだものね、なんて偉いのかしら)
ソフィーちゃんに大好物の金蛇の実を与え、ディーにもビスケットを。
背を背もたれに預け、映り始めた画面に目を向けた。
「!?」
真っ赤な文字で緊急放送中のようだ。
一体何があったというのか。
《……現場からは以上です》
(え、見逃した? 気になるんだけど)
画面はいつもの勇者談義のアナウンサー二名が並ぶスタジオに切り替わった。
《魔王組合では取り急ぎ原因究明に取り掛かっているそうです》
《なんでまたこんなタイミングで屍龍が……》
《火急を要する案件ですよね、勇者到達まで後四日ですから》
《しかも五体も》
《死の島ですから、引っ越してきたのですかね……》
《このタイミングで?》
《龍の考えることは我々にはわかりませんから》
《映像ではおとなしく島内を散策している様子でしたが》
「…………」
私はカルミラに『ごめん、言うの忘れてたけど屍龍は私が手配したものだから気にしないで』と書いて手紙を転送した。
すぐに来るように返事が来た。
(これは怒られるやつだ……)
私はペンを取り、ラウバッハへと手紙を書いた。
『死の島返還後に貴殿が死の城へ戻った際、件の屍龍が欲しかったら残留を交渉できます』
要約するとそんなようなことを書いて転送する。
数百年くらい前に龍が欲しいと言っていた。
欲しがったらそれを恩に着せてカルミラと会う時に同席してもらおう。
こちらもすぐ返事が来る。
「すごく欲しがってる……ラッキーね」
『好きなタイプの子を教えてくれたら、その子に交渉するから、今からカルミラの部屋に行って話しましょう』
よし、これで面倒事は避けられる。
恋する乙女のカルミラは、ラウバッハの前ではギャンギャン怒らないはずだ。
それに、屍龍といったっておとなしくしているし問題はないと思うのよね。
死の島は絶対居心地がいいだろうし。
もしかしたら全員残ってくれるかもしれない。
物語では悪く描かれがちだけれど、彼らに人間を襲う理由はないのだ。
そもそも死んでいるから生きるための餌は必要ない。
遥かに脆弱な人間を襲ったところで、彼らにメリットなどないのだ。
(ただし、巣の近くに行ったり、宝物を狙った場合は普通の龍と同じように好戦的になっちゃうけどね)




