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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王、その他大勢

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凍酒ふたたび


 魔突猪……子豚の丸焼きといえばいいのだろうか。

 大きさから見て幼体なのは見て取れる。

 銀の大皿に乗って出てきた丸焼きは、こんがり焼けていい香りを放っていてとても美味しそうだ。


 ミシュティが手際よく切り分け、詰まっていた豆や野菜も彩りよく添えて皿に盛っていく。


「これは美味い」


「外側はカリッとして美味しいわね」


「肉は柔らかい」


「語彙が足りなくて美味いとしか言えん」


 ミシュティも着席して一緒に食事をとるよう言ったあとは、しばらく全員で堪能することになった。

 カリッと焼けたすぐ下はむっちりとした脂の層で、良質な脂特有の甘みを感じる。

 肉はかなり弾力があるけれど柔らかくしっとりしていて、全てが混ざり合うと最高に美味しくて無言になってしまう。

 肉自体は軽い塩味と香辛料。

 中の野菜たちはニンニクがきいたしっかり味付けで、絶妙な味加減だ。


「処理や詰め物が完璧だったので、私は焼いただけなのですが」


「ああ、それはロロがやった」


 聞けばレスターが狩った魔突猪らしい。

 それを使用人のロロが処理したのだという。


「まあ! でしたら柔らかいところをお弁当にしますので、ロロさんにも是非」


「悪いな、頼むわ」


 数人で食べるには大きかった丸焼きは、ミシュティがロロ用によけたもの以外きれいさっぱり無くなった。

 魔咆犬たちが豚の尻尾を巡って喧嘩を始めたのでミシュティが取り上げ、代わりに耳を与えた。


「尻尾は刻んで半分こですよ」


 犬たちは尻尾を振りながら、ミシュティの後を追って厨房へ。


「みんなお酒飲むんでしょ、僕はデザート貰ってくる」


 アマネも出てもいないお腹をさすりながら、犬の後を追っていった。


「なんかある? 凍酒はもう無くなった」


「凍酒がいいならこの前買ったのがまだあるけど……」


 私はそう言って、二人の前に酒瓶を置いた。

 テーブルはミシュティが綺麗に片付けてピカピカになっている。


「つまみは……ツヨン草?」


「やめてよ」


「あ、カルミラがツヨン草育てたいから種くれって言ってたぞ」


「まさかサラダ用に?」


「それしかないだろ……」


 私はツヨン草の種を半分ほど小袋に移し、忘れる前にカルミラへと送付した。

 自分だけで楽しんでほしい。


「んで、アラインとは打ち合わせしたのか」


「ざっくりとはね。細部が決まったらタイミングを見てもう一度と思ってる」


「第八カメラ付近で合図するってのはうまくいきそうなの?」


「うん、しっかり見えたから大丈夫だと思う」


「なら、後はスムーズに演者が交代できるかどうかよね」


「とりあえず不気味なモヤと閃光を取り混ぜて、どさくさに紛れるしかないよな」


「そうねぇ……交代する直前に、大技放って勇者パーティを崩したほうがいいと思う」


「大技……」


「足場を不安定にするか、絶対怪我しなさそうなアラインを吹っ飛ばして目線を後方に一瞬向けさせるとかね」


「足場なぁ。謁見の間の床壊したらカルミラが怒るんじゃないか?」


 ラウバッハから借りた城は、原状復帰で返却する契約である。

 壊したら壊した分だけ修繕費がかかるのだ。


「うーん、直すのは業者に頼まないで自分たちでやるとか?」


「魔王の影武者もやって修繕まで? 嫌よ」


「イヤだイヤだって……最近多いな? イヤイヤ期か」


 私はフレスベルグの足を蹴って、座りなおして凍酒の炭酸割を飲んだ。

 全く、酔わなきゃやってられない。

 私は酔いたくないときは、内臓に魔力を巡らせて分解を加速させるけれどレスターは素の状態で魔力で内臓が活性化されているらしい。

 なので──彼が酔いたい時や酔ってもいい時は、あえて肝臓などの内臓強化を遮断している。

 フレスベルグはそこまで器用じゃないので、酔ってはいけなさそうな時は飲まない方向である。

 今は全員酔っ払い。


「アマネさんはお部屋で寝かせました」


 しばらくして、すっかり仕事を終えてメイド服から白いワンピースに着替えたミシュティが報告に来た。

 今日はアマネがいるので、屋敷のメイド部屋に泊まっていくようだ。


「まあ、飲め」


「では少しだけ……」


 ミシュティはお酒は好きなようだが、あまり強くないので飲んでも二杯くらいだ。

 凍酒を果実水で割ったものが気に入ったようだ。


「凍酒美味いだろ」


「いい香りです。果実水で割るのが惜しいくらい……父がお店に置きたいと言うかもしれません」


「あー、お父さんってレストランの」


「はい、クーンで小さなレストランを営んでます」


「へえ、隠れ家的な?」


「そうですね」


 (いやいや、予約すら数ヶ月待ちの一流レストランだけどね……)


 


 


 

 


 


 

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