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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王、その他大勢

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始まらない会議


「これね。薬師のジョンの依頼分、ツヨン草の成熟葉二十枚」


「お、分けてくれたのか。助かる」


「密造酒の……あなたの個人的な依頼分は葉であれば良いという話だったから、根を切った草束で」


「充分充分、仕事が早くて何より」


 レスターは荷物を受け取り、ニヤリと口角を上げた。

 会議が始まるより少し早く待ち合わせをして、ツヨン草の取引をしたのだが……今日はもう全員揃っている。


「久しぶりにフルメンバーね」


 カルミラが満足そうに呟く。

 テーブルには個包装の菓子が賑やかに盛られており、いつもとなんだか違う雰囲気だ。


「ゼグの旅のお土産、ミシュティのお父さんの焼菓子、ベイリウスのお祝い返しのゼリーだねェ〜」


「三人とも気を遣わなくても良かったのに……あ、でも美味しそうね。まずは酒ではなく紅茶を淹れましょう」


「あ、そうだベイリウスとミシュティにツヨン草あげるわね」


 二人に根付きのツヨン草を渡すと、揃って濡れた紙で根を包み、大事そうにしまい込んだ。


「ツヨン草? しばらく見かけない草ね」


 カルミラが笑顔になった。


「なに? カルミラも欲しいの?」


「久しぶりに食べたいわね。サラダにするとほろ苦くて美味しいのよ」


「食うのかよ」


 レスターが珍しく驚いた顔をした。

 もちろん、私もだ。


「昔はよく食べてたけど、最近出てこなかったのは絶滅しかかってたからなのね……」


 カルミラが神妙な顔で呟いた。


 (ほろ苦い……?)


 吸血鬼を含む不死族、死霊たちの味覚はどこかおかしい。

 マダムヒドラの料理が根強い人気なのは、この層に大ファンが多いからだ。


「ほろ苦いというか苦すぎない?」


「そうかしら。ピリッと刺激があって好きだったんだけど」


 カルミラがスキンヘッドのままの頭で首を傾げた。


「……侍女に渡しておくから増やすといいわ」


「嬉しい! ありがとうジューン」


 (猛毒、猛毒よ。サラダねぇ……)


 横を見るとレスターが手を出している。


「なによ」


「な、ちょっと食ってみようぜ──あ、お嬢さん……塩とか持ってない?」


 レスターは通りすがりの侍女に塩を頼んでいる。

 私はせめて柔らかそうな、細いツヨン草を取り出した。

 フレスベルグがドレッシングの瓶、チーズの入った容器と皿を数枚持ってきて、レスターの横に立った。


「酸味を抑えたコクのあるドレッシングが合うって。あと粉チーズかけるんだって」


「ほう」


「私はこの小さな葉でいいわ……」


 レスターとフレスベルグは小心者な私を嘲笑い、パクリとツヨン草サラダを頬張った。


「……!」


 二人は少し身体が揺れ、声もなくうずくまった。

 私は口に運びかけた葉をそっと皿に戻し、周囲のメイドの助けを借りて二人をソファーに座らせた。

 レスターとフレスベルグ……純粋な身体の頑丈さはフレスベルグに軍配が上がる。

 戦闘になれば技巧のあるレスターだけど、いつかひっくり返る時が来てもおかしくはない。

 それくらい、フレスベルグの身体能力は高いのだ。


 そういう理由で、私はまずレスターの様子をみることにした。


 (んー、脈は弱くない、早くも遅くもなく……顔色も良い、瞳孔も正常)


「大丈夫?」


「問題ない。一瞬、眩暈が来て焦ったがすぐに戻った」


 (意識もしっかりしている……)

 

 嘘を言っている様子はない。

 フレスベルグも不味すぎると騒いでいたが、聞くとやはり眩暈はあったようだ。


 (この人たちを一瞬でも止めるって中々よね)


「いや、次は大丈夫だ」


「ちょっと、もうやめなさいよ……」


 レスターがまた葉を食べている。


「うーむ、苦いだけで旨みはないな。ジューンも後学のために食っとけよ」


「…………」


 みんなが見守る中、私は渋々とツヨン草を口に運んだ。


 (来る、とわかってれば身構えるから……影響を受けるほどじゃないわね)


 味は苦味と酸味が合わさって、ものすごくダメな味。

 アルカリ性のぬるっとした嫌な感じが、何とも言えない口内の不快感さを増長させている。


「え、なんでもないのか。エルフってでたらめ過ぎじゃね?」


「エルフだから……」


 カルミラが首を傾げて白い指で葉をつまみ、美味しそうに咀嚼した。


「美味しかったでしょう?」


「不死族も味覚がでたらめ過ぎて、無理」


 会議、会議を始めよう。

 ツヨン草はもういい。

 私はツヨン草をしまい込み、席に着くことにした。

 


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― 新着の感想 ―
カルミラの味覚ヤバすぎるww 普段の食事とか毒草まみれ?w ジューンサイドは普段グルメだから珍味に興味が湧いた?w
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