タマゴ三昧
《……というわけで、直接の見学は自己責任となります、ご留意ください》
《黄色い服は目立つので、致し方ありませんね。お聞きの通り、黄色い服で海上で発見された際はセレナ様の部隊に強制排除されます》
《命の保証はしていないらしいので、お気を付けを……》
「プハッ、飲み過ぎたか」
水分でお腹がパンパンだわ。
ちなみに私の身体は排泄行動がないので、吐くか時が過ぎるのを待つしかない。
レスターやカルミラ、フレスベルグもアマネも一緒。
星核から生まれた者は排泄しない。
一応屋敷には、お手洗いがあるけども。
(多分全部魔力に変換されてる気がするけども)
さすがに星核仲間を掴まえて解剖するわけにもいかないし。
「あー、苦しい」
床に転がってみると、ちょっとマシな気がする。
ミシュティが磨き上げてるから綺麗なものよ。
ディーとソフィーが不思議そうに寄ってきた。
「ああ、なんでもないのよ。お腹がいっぱいなだけ」
せっかくなのでオヤツをあげましょう。
犬と蛇はオヤツを受け取り、好みの場所へ戻っていった。
(二、三百年くらいこのまま転がってたい……)
だが、そういうわけにはいかない。
引きこもっていたら、せっかく最近知り合った人間たちがみんな居なくなってしまう。
油断したら短命種はすぐに会いたくても会えなくなる。
「うーん、どこかで線引きは必要だけど……あ、とりあえず特級ポーション作っちゃうか」
酔って気分はいいのだ、お腹がいっぱい過ぎるだけで。
厨房の主であるミシュティはいないし、キッチンで作っちゃおうかな。
脱ぎ捨てた上着に足を取られ、転倒しかけたが私は無事に厨房へ到着した。
「んん?」
キッチンの小さなテーブルの上に布を被せられた何かがある。
めくってみると、美味しそうなパウンドケーキ。
「…………」
私は皿を持ってリビングに引き返した。
「酒が効いてるわね」
コレは絶対私用のパウンドケーキだ。
「うまっ」
甘い物は別腹って本当よね。
芳醇な蒸留酒の香り、クルミの香ばしさが後引く美味しさだ。
もちろん切るなんて面倒なことはしない。
パウンドケーキのまるかじり、時々ミシュティがいない時にやるけれど満足度高いのよね。
メイサみたいにバラバラとこぼすようなマネはしない。
私はパウンドケーキまるかじりのプロだから。
「やば、お腹が」
私はお腹いっぱい過ぎて動けなくなったので、ソファーでそのまま寝ることにした。
目覚めたのは昼過ぎ。
「うー、とりあえず風呂」
ソファーの上に置きっぱなしだった皿は一応洗浄魔法をかけ、厨房に戻しておく。
洗浄魔法かける前からピカピカだったから、ディーが舐め回したに違いない。
(普通の犬だったら大事故よね、何を食べてもいい魔物で良かったものの……)
次回は気をつけよう、うん。
ちらりとディーを見ると、元気そうだったので一安心。
「ふぅー」
温泉はいつ入っても気持ちがいい。
心まで洗われるようだ。
(なにか忘れてる気がする……手紙は全部出してあるはずだし、ディーのごはんのお肉も追加でカットしたし)
「あ、そうだ。タマゴサンド」
朝ごはんはコケット村のタマゴサンドを食べようと思ってたんだった。
ミシュティが作っておいてくれたタマゴサラダと、レスターから奪った燻製卵を食べよう。
(……燻製卵となると、米酒)
でも湯上がりはキンキンに冷えたラガーよね。
この世界にビールという単語は無い。
それっぽいのはラガーと呼ばれている。
冷やしたほうが絶対美味しい。
私は急いで風呂から出て、ソファーで瓶に入った冷えたラガーを取り出した。
瓶のままだと飲みにくいので、一応グラスで。
「プッハー、うまーい」
タマゴサンドもタマゴサラダも燻製卵も美味しい。
タマゴサラダに玉ねぎときゅうりが入ってるから、野菜もちゃんと摂取している。
気が付いたらまた寝落ちしていたようで、部屋は夕日の橙色に染まっていた。
「うーん、あ、馬の様子をみないとだわ」
新緑の季節なので、餌の心配はない。
島中の草がユーニウスとペルルのご飯だ。
水入れも魔法陣で管理しているので、水入れが枯れることはない。
馬房に魔馬たちの姿はなく、藁もきれいなものだった。
(一応新品の藁にしとこ)
馬は案外潔癖なので、汚い場所は嫌がる。
私は馬房の藁を入れ替え、吊るしてある岩塩の塊もチェックした。
「まだまだもちそうね」
気配を探ると馬たちは西の方で遊んでいるようだ。
彼らは魔物に近い魔馬なので、夜もウロウロしている。
ついでにマカロンちゃんの巣穴も覗いてみる。
四つめの首が起きていて、うれしそうに伸びてきた。
しばらく撫でてから、好物の果物をあげると他の首も起きてきたので結局八つ配ってから自室に戻った。
(うーん……手紙は全部出してるはずよね……?)
「あっ」
ミシュティのコカトリスに餌をやらないとだ。
良かった、思い出せて。




