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《100万PV感謝》前世の記憶は役立たず!~エルフに転生したけれど、異世界が世知辛すぎる~  作者: 藤 野乃
勇者と魔王、その他大勢

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段取り


《お知らせです。勇者の船旅を見学したい気持ちは分かりますが、興行に支障が出ます……皆様におかれましては、くれぐれも船の近くに寄らないよう──》


 勇者チャンネルは特番を組んでいる様子。

 ミシュティが居ないので、私は一人でタマゴサンドを食べつつダラダラとテレビを見ている。


 《遠くからなら良いという話でしたが》


 《それがですね、皆様エルフ対策で黄色い服を着てて……》


 《あ、エルフ以外からも目視出来ちゃいますね。海に黄色は目立ちますから》


 《そうなんですよ、船員が訝しむ危うい場面もありまして》


 そりゃ目立つわね。

 テレビ中継見たほうがいいと思う。

 どうせ遠目からはよく見えないでしょうに。


 《黄色い服、見たところ同じように見えますね》


 《見学ツアーが組まれてて、その衣装のようです》


 《人間社会側に興行だとバレた場合の損失は計り知れませんので、見学はやめましょう》


《ですねえ、あくまでも『絶対悪』である魔王を勇者が死力を尽くして倒すというのがコンセプトですから》


 《そもそも魔界にも国や村があることを知らないですからね、人間社会は》


 《明後日には襲撃予定ポイントに差し掛かります》


「ほー、もうそこまで」


 私の独り言が部屋を漂い、隅でひっくり返っていたディーが片目を開けた。


 (確かその襲撃で、双子の奴隷の少女が巻き込まれて退場になるんだったっけ)


 奴隷美少女はどんぐり歌劇団の女の子たちだったか。

 勇者に奴隷美少女は絶対必要らしいけど、彼女らが戦闘で役に立つことはない。

 ギリギリの戦況では足手まといにしかならないと思うのだが、様式美というものだろうか。


「多少つくりが違うとは言っても……」


 勇者とハナちゃんは異世界の生命体。

 それでもこの世界の生き物と共通する部分が多いので、治癒魔法で回復させるのは避けなくてはいけない。

 寿命を縮めるのは間違いないし、予期せぬ副作用が起きる可能性だってある。

 今季の勇者くんは自己回復を持っていない。

 その分攻撃に振られている。


 (攻撃は当たっても当たらなくても魔王組合の面子が大ダメージを受けることはないけれど)


 問題は魔王側がうっかり勇者パーティに大ダメージを与えてしまう事だ。

 ハナちゃんの聖女スキルがタイミングよく出せればいいが、犬にそこまで期待はできない。

 どう転んでもポーションで回復出来る程度のダメージしか与えてはいけない。


「致命傷以外ならある程度回復する特級ポーションをアラインに持たせて、回復力を活性化する薬を事前に飲ませて──」


 後、何が必要?


 (あんまり無難に立ち回るとカルミラが文句言いそうだし)


 最終形態付近で、アライン殺すか。

 死体として後ろに転がっておいてもらって、こっそり至近距離から勇者とハナちゃんを守らせるか。

 いや、私がアラインが死体になった後、入れ替わったほうが事故率少ないんじゃないか。


「そうすると私の負担が増えるから無しね!」


 でもポーションや薬はアラインに持たせておきたい。

 次の寄港は奴隷美少女死亡事件後になるから、陸への滞在は長めに取られるはず。

 アラインへの接触はその時にするか。

 手紙を出しておこう。


 襲撃担当のセレナからは奴隷美少女の死体にするホムンクルスの準備が終わってると聞いてるから、そこは問題なさそう。


 (奴隷美少女は海に沈んでいく演出らしいから、安価な人形で済んだらしいわねぇ)

 

 いや、予算の都合で海の藻屑設定なんでしょうね。 

 彼女たちはアイドルグループの人気投票で抜擢された奴隷役であるので傷をつけるわけにはいかない。

 勇者が追って飛び込もうとした場合、アラインが止める算段だ。


 私はアラインに次の寄港先で一人時間を作って、王都の私の家に来るように手紙を書いた。

 さすがに船上でアラインが消えるのは不自然すぎるもの。


「ん?」


 返事が早いと思ったら、カルミラからの手紙だ。


「なになに……ふうん、襲撃場面以降は勇者一行の様子のみの中継になると。ああ、ネタバレ映像は決戦後有料で配信か」


 書面によると、襲撃で奴隷美少女が非業の死を遂げるシーン以降は表舞台のみの配信になるようだ。

 勇者一行の様子と決戦の中継のみと書いてある。

 裏舞台は決戦後のコンテンツとして有償。

 なるほど、黒字を目指すならいい方法だ。


「んじゃ特級ポーションの用意を……あれ、無い」


 いつ使ったかも思い出せない。

 誰かにあげた覚えもないし、どこに行っちゃったんだろう。

 そう考えてるうちに、使った気もしてきた。

 自分の記憶が信用できないのは知っている。

 過去のメモを漁る時間もないし、新たに作るしか無さそう。


 (多めに作ってミシュティとアマネに持たせておくか……フレスベルグにも)

 


 

 

 

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