7. 後始末
「皆、卒業という大事な日に我が愚息が迷惑をかけた。この後の時間はそれを忘れて楽しんでくれ。」
そう言うと楽団に向けて合図を送った。
楽団は緩やかな音楽を奏で始めた。
それに合わせ陛下は優雅に第二側妃をエスコートして、一階のホールに降りてきた。
楽団は自然に奏でていた曲をフェードアウトさせ、優雅なワルツを奏で始めた。
陛下と第二側妃はそれはそれは優雅な美しいダンスを披露した。誰もがうっとりとみつめ、ダンスが終了すると同時に大きな拍手が送られた。
「さぁ、卒業パーティを楽しんでくれ。」
ホールには陛下と入れ替わりに多くの者がダンスの為に中央にやってきた。
「ちょっとカイル。第三王子について説明して。」
カイルは首を傾げる。
「ナディア様ならよくご存じでしょう。先程からどうされました?」
「いいから説明して。私のことについては、明日改めて話すからいつでもいいから屋敷に来て。」
「は、はい。第三王子シャルル殿下は第一王子殿下と同じく正妃様のお子です。現在14歳で学園の一年生です。常に首席で、明るく穏やかなお人柄で人当たりも良く性別問わず人気のある方です。婚約者はまだおりません。」
「ふーん、人当たりの良い王子様ねぇ。」
あるある的に言えば人当たりの良い王子はたいてい腹黒。
「うん、腹黒ぼんぼん、かな。」
「そんなことはありませんよ。いい方ですよ。」
あらっ、声に出していたわ。うん、気を付けましょう。
そうこうしているうちに第三王子がやってきた。
サラサラの金髪に水色の瞳。背は同じくらい。遠目に見ても美形だったが近くでもかわいい系の美男子だった。
それにしてもここは何の話の中なんだろう。会う男たちはそれぞれ美形だし、女性も美人かかわいいかだ。うん、こんだけ美形が揃っていれば、なんかの物語の中だろう。ああ、もしや乙女ゲームの中かもしれない。あまりやったことはないけど、攻略対象は美形だったかと。うん。分からない。
「ナディア嬢、こんばんわ。僕はあなたがとても気に入りました。ぜひ僕と婚約してくれませんか。」
にこにこと話すシャルルは一見無邪気だ。断られるとは想定していないのだろう。王子なら普通はそう思うのだろう。でもね王子は14歳よ。西城リカは20歳だった。六つ下は無い無い。ショタでは断じてない。私は恋愛なら断然年上派だ。そう言えばナディアっていくつなんだろう?
「ねぇ、カイル。ナディアっていくつなのかしら?」
「えっ、今更ですか?ナディア様は18歳ですよね。卒業生は皆18ですよ。」
「今、知ったわ。シャルル殿下。初めまして。とてもありがたい申し出なのですが、お断りいたします。理由は、私はショタ趣味ではないからです。では、ごきげんよう。」
私はあっけにとられているシャルルに一礼すると、赤髪さんとその婚約者さんのところへ行った。
二人は多少の気まずさは残っているようだが、寄り添うように立っていた。
私は深々と頭を下げて言った。
「先程は申し訳ありませんでした。あのような場で話すべきことではないことは重々承知しておりましたが、桃色頭の罪を握りつぶされたくなくて・・・私も必死でしたの。お許しください。」
婚約者さんが首を横に振って言った。
「頭を上げて下さい。それに謝る必要はありません。この人のことを知れたので良かったのです。」
「そうです。俺が悪いのです。」
私は頭を上げ、強く言った。
「いいえ、悪いのはあの桃色頭です。あなたは被害者です。不幸なことにあの桃色頭に目を付けられ、薬を盛られた。強姦された被害者です。婚約者さんも、それを理解したからお許しになったのでしょう。まぁ、それだけではない絆がお二人にはあるように思いますわ。違いますでしょうか。」
「はい。俺は彼女を愛しています。」
「・・・はい。私も彼を愛しています。」
二人とも真っ赤で初々しい。
「素敵です。ご結婚は決まっていますの?」
「はい。半年後に。」
「おめでとうございます。今日のお詫びと言っては何ですが、お祝いの品を贈らせてくださいね。」
「そんな、お気遣いいただかなくても・・・。公爵令嬢のナディア様からのお祝いなんて恐れ多いです。」
うーん、この子たちは子爵とか伯爵家とかかな。でもねぇ、それじゃあ、気が済まないのさぁ。
「いいえ。私を助けると思って受け取ってください。素敵な初夜になるようなかわいいナイトウエアを贈りますわ。良かったら使ってくださいね。」
「よろしいのでしょうか。頂いても。」
「ええ、もちろんよ。もらってくれたら嬉しいわ。お幸せにね。」
にっこり笑って二人の元を離れた。
次は茶髪君と平手打ちさん。おー、居た居た。うん、一緒に居るよ。良かった。あれ?良かったのか?
私は先程のように声を掛けた。
「先程はごめんなさいね。でも、私、婚約者さんのきれいな平手打ちを避けもせずに受けたあなたの姿に感動しましたの。」
「叩かれて当然のことをしましたので。」
あら、潔い方ね。
「私が思いますに、あなたは被害者です。たまたま桃色頭の好みの体だったばかりに、薬を盛られ、あなたの望まない関係を強要された。実際その行為自体を楽しんだという記憶はないのではないですか?」
茶髪君は頷いて、意を決したように話し始めた。
「・・・気が付いたら裸でベットの上に居て、明らかにそう言った行為の後だった。信じられなかったが、隣に裸の女がいたんだ。そして彼女からごちそうさま、と言われ、、何をしたのかはっきりと理解したんだ。」
「やっぱり・・・。婚約者様のお怒りは分かりますが、彼も被害者であることを考慮して、今一度お話しいただければと思いますの・・・とお伝えしようとお二人の元に来たのですが、余計なお世話だったようですね。」
「はい。先程思いっきり叩いて罰しましたので今回はもう許します。」
爽やかな笑顔で平手打ちをするように腕を振る婚約者さん。おお、強い方ね。
「二度目はありません。」
「勿論だ。僕は君がいればそれでいい。」
茶髪君は婚約者さんの手を両手で包み込むように握った。
「ふふ、本当に素敵な恋人同士なのですね。でも、私、びっくりしたのですよ。大人しそうなあなたが平手打ちをするなんて。」
「お見苦しい所を。」
「俺も驚いた。でもそれだけ怒らせてしまったんだと思ったんだ。」
「だって、私にはキスしかしてくれないのに、あの女には・・・って思ったら、押さえきれなくなっちゃって・・・。」
「あたりまえだろう。大事なんだ。初夜まで我慢するって決めていたんだ。」
「言ってよ。」
「うん。結婚してくれる?」
「・・・うん。大事にしてね。」
「ああ、俺の中ではもうずっと一番大事だよ。」
あらあら、二人の世界ね。
うん。でもこれだけは言っておこう。
「本当に素敵なお二人です。結婚のご予定はあるのですか?」
「半年後を予定しています。」
「楽しみですね。私からもぜひお祝いを贈らせて下さいね。初夜に役立つかわいいナイトウエアを贈りますね。」
「・・・ありがとうございます。」
うわぁ、お顔真っ赤。かわいい!!こんな二人を貶めるような行為をするなんて、桃色頭許せん!
そういえばこの世界にベビードールなんてあるのかなぁ。なければ作ればいいか。公爵家だし、財力ありそうだし、いざとなったら金髪バカからもぎ取る予定の慰謝料で作ろう。
さてさて、次は白いスーツ君としくしくさんね。おっ、いた。うん、白いスーツ君がしくしくさんの腰を抱いているところを見ると大丈夫かな。私は同じように声を掛け、話した。無事しくしくさんに許してもらえたそうだ。良かった、良かった。




