4. カイル、ゲットだぜ
「お前はどこまで俺のチェルシーを貶めれば気が済むんだ!姑息な嫌がらせでチェルシーをいじめただけではなく、こんな場で媚薬などと言って貶めようとするとは。なんて悪い女なんだ!」
おおっ、すごい。その解釈!この場でそれかぁ。驚くほどのバカっぷり。裏切らないわね。
桃色頭は分が悪いと思ったのか、金髪バカに泣きついたようだ。金髪バカもバカだ。浮気されているって分かっているのかなぁ。彼女の前でいいところを見せようと頑張っちゃうんだぁ。何だか不憫になってきた。
「何だ。言い返すこともできないのか。バカな女め。」
ほう、同情して損した。まあ、これも良くある感じの断罪よね。じゃあ、あるある的に聞いてみようかな。
「カイル様、第二王子殿下の学年順位を教えて下さるかしら?」
「・・・おそれながら100位前後かと」
「はい、大きな声で。殿下は何位ですって?」
「はい!100位前後です。」
「何人在籍しているのかしら?」
「105人です。」
「ふーん。チェルシー様は?」
「同じくらいかと。」
「私は?」
「首席です。」
「そこの金髪バ・・・第二王子から見たら首席である私は『バカ女』らしいわよ。で、あなたは?」
「私ですか?5位から8位を行ったり来たりです。」
「あら、賢いのね。それなら分かるでしょう。金髪バカ・・・あら、失礼。そこの第二王子殿下という泥船に乗ってもこの先、沼の底に沈むだけよ。さっさと切り捨てて私に協力しなさい。」
「・・・。」
「今が決断の時よ。王子は私との婚約を破棄すると言っていたでしょう。私もこんなバカを支える気はもうない。婚約破棄は受け入れるわ。でもただで受け入れたりしない。もちろん婚約期間に浮気をされたこと、婚約者でありながらその義務を果たしていないこと、こんな公の場で罵倒されたこと、もろもろの慰謝料を請求する。それに王子妃教育という名の拘束を受けた分のもね。これは彼が原因であるから彼の個人資産から出させるようにしたいところね。あるのかしら。貯蓄なんてしてなさそうだけど。まぁ、いいわ。それでもあなたは桃色頭を嫁にする金髪バカに仕えるの?桃色頭の虚言を真に受けて、私を糾弾するようなバカよ。私が公爵令嬢で宰相の娘ということが何を意味しているのか分からないバカに付き従ったって、あなたの人生棒に振るだけよ。決断なさい!」
当てずっぽうな所もあるけど、多分遠からずってとこだろう。
カイルはキュッと唇を結ぶと、金髪バカに体を向け、胸に手を当て礼をした。
「私はこれ以上あなたにお仕えすることはできません。今この時点で、あなた様の側近としての職を辞させていただきます。今までお世話になりました。」
金髪バカが目を吊り上げ声を荒げて言った。
「カイル、あの女のたわごとに耳を貸すのか!」
カイルは真っ直ぐ金髪バカを見て言った。
「私は何度も進言したはずです。婚約者であるナディア様をもっと大事にするように、と。チェルシー嬢とは距離を置くようにと。トールクロス殿下のお立場が危うくなるからと。何度も何度もあなた様の為に進言させていただきました。聞いてはもらえませんでしたが。その結果が、今日のこのような事態です。もともとナディア様が仰らなくとも、殿下が婚約破棄といった段階でこの後、辞めるつもりでした。少し早まりましたが、殿下、今、辞めさせていただきます。」
カイルは金髪バカに一礼をしたあと、ナディアの元にやってきた。
「ありがとうございます。吹っ切れました。」
「良かったわ。あなた押しに弱いけど悪い人じゃなさそうだし、あのバカ達と潰れるには惜しいかなって思ったのよ。」
「ははは、随分はっきりと言いますね。まるで俺の知るナディア様じゃないようだ。別人のようです。」
「ふふ、そうね。あなたは正しいわ。頭を打ったのが原因のようよ。」
「先ほどお怪我をされたのですか?大丈夫ですか?」
「うーん。分からないわ。血は止まったみたい。ところで私は何で床と友達していたのかしら。」
「覚えていないのですか・チェルシー嬢が、いやぁと叫びあなたを突き飛ばしたのですよ。何でもチェルシー嬢が言うには学園で嫌がらせを受けていて、ナディア様を怖いと思っていたところ、今日は突然手を掴まれそうになって振り払ったら、ナディア様が大げさに転んだとか。そんな事より血って何ですか!」
「ふーん。頭を触ったら手に血がついたの。ところで私はどんな嫌がらせをしたのかしら?」
「彼女が言うには教科書を破かれたり、水をかけられたり、食事に虫を入れられたり、階段から落とされそうになったりとかですね。医務室に行かなくて大丈夫ですか?」
「そう。生きてるから大丈夫じゃない。ところで私と彼女は同じクラスだったのかしら?」
「いいえ。成績別のクラス編成でしたので、ナディア様はSクラス、チェルシー嬢はÐクラスでした。生きてるって基準がおかしくないですか?」
「そう。あら、一番大事よ。あなたもSクラスかしら?」
「ええ、そうです。それはそうですが・・・。」
「それは置いておきましょう。で、だったら教えてくれるかしら。Sクラスってそこの桃色頭をストーキングできるほど暇なのかしら?」
「ええっと、それはどういう意味でしょうか?」
「だってそうでしょう。目の前で教科書破るような馬鹿はいないでしょう。嫌がらせにならないじゃない。常に嫌がらせの機会をうかがっていないと嫌がらせなんてできないでしょう。階段なんていつ来るのか分からないじゃないの。ストーキングしてないとできないでしょう。」
「成程。SクラスとÐクラストではかなり教室が離れていますし、そもそもタイムスケジュールが異なりますので付け回すのは無理ですね。」
「そうなのね。それなのに桃色頭の言い分だけを聞いて確かめもせずに信じるバカが国のトップにいるなんて・・・この国の未来が心配になるわ。この国、大丈夫かしら。」
「そうですね。あ、いや、失礼しました。」
カイルは私につられて出た本音に少々焦っているようだ。
さて、そろそろ疲れてきたから終わりにしたいなぁ。
うん、多分これだけあるあるがあったんだから、期待してもいいよね。
「カイル、ねぇ、この会場に金髪バカ以外に王族が来ているかと思うの。ちょっと探して、どこにいるか教えてくれない?」
「卒業パーティなのでトールクロス殿下だけかと。」
「いえ、絶対居るはずよ。いま一度よく見て。探しだして頂戴。」
「分かりました。」
カイルは周囲を見渡し始めた。




