3. あれ?媚薬はあるのね
「皆様、チェルシー様と深い関係、いわゆる大人の関係を持ちましたわよね。」
男たちは全員目を見開いた後、顔を背けた。隣にいる婚約者たちは驚きの顔で自分のパートナーを見た。因みに金髪バカも桃色頭を驚愕の表情で見ている。
バカだね。ばれないとでも思っていたのかなぁ。
「な、何を根拠にそんなことを言うのよ!」
桃色頭はやっぱり食いついてきた。
「根も葉もありますわよ。あなた何人と体を重ねてきたんですの?まぁ、そういうことを楽しむ方も世の中には少なからずいらっしゃいますよね。それほどお金のかからない手軽な娯楽だと聞きます。私自身は、乙女なのでその境地は分かりかねますが、結構な快楽を簡単に得られると聞きます。どこで密会していたのです?学園の空き教室ですか?夜会の休憩室ですか?それとも暗い庭園とか・・・あら、嫌だ。適当に言っただけですのに全て心当たりがありますのね、チェルシー様。」
やだやだ、この人たち顔に出過ぎ。
「赤髪の方と茶髪の方は夜会の休憩室、鍵がかかりますものね。白スーツの方は学園の空き教室、放課後は人が少ないですものね。オールバックの方は全部に心当たりがおありなのですね。まぁ、深い仲ですのね。皆様、心当たりがあって、婚約者に少しでも申し訳ないという気持ちがあるのなら早々に謝罪なりなんなりした方がいいですわよ。」
不安そうに見つめる婚約者の視線にいたたまれなくなった赤髪さんが婚約者さんに頭を下げて言った。
「すまない。誘われて、欲に負けたようなんだ。本当にすまない。」
「嘘よね?私を裏切ったの?」
「俺は女性に触れてみたかったようなんだ。でも、君には結婚するまで手を出さないと心に決めていて、大切にしたくて、愛しているから。だが、欲求に負けたようなんだ。気が付いたら、その、関係していた。すまない。」
「あの人が好きなの?」
「いや、俺が好きなのは君だけだ。彼女とは一度だけだ。直後になんてことをしてしまったんだ、と後悔した。君に言わなくてはと思いつつ、都合がいい話だが嫌われたくなくて言えなかった。すまない。」
「馬鹿な人・・・。私にしておけばよかったのに。」
「すまない。本当にすまない。こんなこと言って信じてもらえないだろうが、二度としない。」
「次はないからね。」
「許してくれるのか?」
「馬鹿な人。今回だけよ。」
「ああ、俺は馬鹿で幸せ者だ。二度としない。君に誓うよ。・・・ありがとう。」
がばっと婚約者を抱き締める赤髪さん。
うーん、よっぽど婚約者さんは赤髪さんが好きなんだ。赤髪さんもね。
あれっ、何かおかしいわね。こんなに相思相愛カップルなのに。
そう言えば赤髪さんの話し方も・・・。
「ねぇ、赤髪のあなた。こんなに傍から見ても明らかなくらい婚約者さんに想いを寄せていらっしゃるのに、どういう経緯でチェルシー様と関係を持つことになったのですか?」
「・・・。」
「私も聞きたいわ。話して。」
ナイスアシスト婚約者さん。
赤髪さんはふぅっと小さく息を吐き出すと話し始めた。
「あまり彼女とは話したことはなかった。剣の鍛錬をしている仲間の一人が殿下の側近候補で、殿下と彼女が鍛錬を見学しに来たとき一言二言話した程度だ。男友達と参加した夜会で彼女に声を掛けられ挨拶をした。その時、彼女から渡されたグラスを飲み干した。それを飲んだ直後、妙に熱っぽくなって動悸が激しくなって息が上がって、とおかしな体調になったんだ。すると彼女が休んだ方がいいと言って俺の手を引いた。ふわふわとまるで夢の中を歩いているようになって・・・気が付いたら裸で休憩室のベットの上に居た。横に彼女も裸でいて・・・。俺が何が起きたのか分からず混乱していると、彼女は服を着て言ったんだ。楽しかったわ。いい体ね、と。そこで俺は初めて取り返しのつかないことをしたんだと気が付いたんだ。本当にすまない。」
さすがに話を聞きながら婚約者さんはぽろぽろと涙を流した。赤髪さんはそんな彼女を優しく抱き締めている。
うん。この子達はいい子だ。
きっとこれは異世界あるあるだ。
となれば二択ね。
「ねぇ、カイル様。この世界に魔法ってあるのかしら?」
「ま、魔法ですか?急にどうしました?魔法なんてあるわけないじゃないですか。」
カイルは急に振られて困惑しつつも、しっかり答えてきた。
「そう、ありがとう。」
ということは、あれ、よね。
四人の男たちはみんな体格がいい。金髪バカはひょろっとしている。そういうこと、ね。
「チェルシー様。あなたの好みの体って、筋肉質の体格の良い方なのですね。そこの金髪バ・・・あら、いけない。第二王子殿下じゃ物足りなかった?それにしてもあなた、自分の欲望を満たすために使ったわよね?び、や、く。それもかなり強いのを。」
イエーイ。当てずっぽうだったけど桃色頭ちょろすぎぃ。魔法がないなら薬で誘導したのよね。あるある的考察大当たり。
桃色頭は目をかっと見開いた後、目が泳いでいる。そしてそわそわと落ち着かないようだ。
「そこの茶髪の方、白スーツの方。赤髪さんの話聞こえていましたよね?お二人にも同じようなことがあったのではないですか?」
すでに婚約者さんから平手打ちをくらっていた茶髪さんは頷いた。
「彼女に夜会で飲み物をもらったんだ。それを飲んだら動悸が激しくなってふわふわして、彼女に休んだ方がいいと休憩室に連れていかれた。気が付いたら関係を持った後だった。」
白スーツ君も頷いた。
「俺は学園で鍛錬の後に彼女から飲み物をもらってそれを飲んだ。そのあと・・・。」
隣で婚約者さんがしくしくと静かに泣き始めて、話を続けられなくなった。謝ったら許してくれるかもね。だって離れず隣にいるんだもの。手は彼の上着の裾を掴んでるし、ね。白スーツ君も懸命に謝っている。うーん、波風立てて、ごめん。
茶髪くんも平手打ちちゃんが隣にいる。こっちも何とかなるかも。
「お、俺も・・・。」
オールバックが話に乗ろうとしたが、バッサリ切ってやった。
「あなたは違うわよね。お楽しみ友達でしょう。チェルシー様との関係は一回や二回じゃないでしょう。」
「な、なんでそれを。」
バカの友達はやっぱりバカだった。
「分かるわよ。そんなの。他にも女性に手を出しているわよね。」
ギクッと肩を揺らし、顔も青ざめたオールバック。
当てずっぽうでありそうなこと言っただけなのに。その顔じゃあ肯定しているようなものね。
はい、婚約者さんぶっ叩いてもいいわよ。結婚前にこの男の本性が分かって良かったわね。
「ねぇ、カイル様。この国って媚薬の使用は認められているのかしら?」
「・・・軽いものなら夫婦間で使えるように販売されています。ですが、話を聞く限り、精神に作用するほどの強い薬のようです。禁止薬物かと思われます。」
「まぁ、大変。王子殿下の恋人が禁止薬物を使って、婚約者のいる男性をつまみ食い、あらはしたないですね、関係を強制していただなんて・・・。まぁ、まぁ、どうしたらよいのでしょうね。」
うん。私に演技は無理だ。大根ね。




