35. こう着るのよ
三日後に本当に注文していた下着たちが届いた。
デザイナーの熱意、半端ない。
というわけで、再びソフィアが私の元を訪ねて来てくれた。
「これが、例の下着ね。」
ソフィアは箱からレースたっぷりの紐パンツを持ち上げ、顔を赤らめた。紐パンツは私サイズの物で、思い切って黒のレーシーなものにした。ブラジャーも、ベビードールも黒だ。
部屋には私とソフィア、ハンナとリノがいた。ハンナとリノもソフィアが手にしたものを凝視していた。
「ええ、そうよ。」
この世界はレースの種類が多いので、かなり前世に近い出来になったと思う。紐パンツだけではなくて他の形も絹と綿素材で作ってもらった。中々かわいい。紐パンツは初夜を迎える例のカップルに贈るためのものだ。
「何というか、これがナディアの言っていた下着なのね。これはどう使うの?」
ソフィアはブラジャーを持ち上げた。
ああ、そうか。初めて見るんだから分からないよね。うーん、どうしよう。ここには女の子しかいないし、実際見せた方が分かり易いよね。私は女子高、女子大、加えて女兄弟ということもあって、女子ばかりの中で着替えることに抵抗がない。まぁ、生着替えはちょっと恥ずかしいけどいいか。
「そうよね。分からないわよね。今、実演するわ。」
そう言って立ち上がると、身に着けていたワンピースからズロースからコルセットから、ああ、靴もいらないわっと、全てを脱ぎ捨てた。いわゆる素っ裸になった。
「な、ナディアぁぁ。」
ソフィアの狼狽えた声がした。
「お、お嬢様・・・。」
ハンナの手が空を彷徨った。
「わぁ、なっちゃん、きれい・・・。」
両手を胸の前で握り合わせ、リノは目をキラキラさせた。
うん、確かにナディアはナイスバディだ。
「ふふ、きれいな身体でしょう。さぁ、まずはこれ。ショーツとかパンツって呼ばれているものよ。ここに足を入れたら、お尻を隠すようなとこまで引き上げて・・・ほらこれは紐パンツだからサイズはこのリボンで調整してね。次にこれはブラジャーといって胸を隠し、形よく保つためのものよ。この部分を胸の下に合わせてホックを止める。そしてこれは肩ひもで手を通して肩まで持ってきてね。そうしたら、この胸当てと胸の間に手を入れて脇やアンダーバストからお肉をぐっと中央に集めるの。ほら、ちょっと胸の形や谷間がきれいになるでしょう。この二点が日常身に着けるものね。そして、これがベビードールって言ってね、まぁ、この世界のナイトウエアに当たるのかな。今回は初夜を迎えるカップルに贈ることを考えていたから、前にリボンが付いていて、解くと脱ぎ着ができるのよ。」
私はベビードールを着せて見せた。太腿が隠れるくらいの丈のベビードールは、胸の部分と裾、つまりパンツ辺りはレースが重ねられ、見えそうで見えない。しかし他はスケスケのレースなのでウエストなどのボディラインはしっかり見える。うわぁ、セクシーでありながらかわいい。私は嬉しくなって、その場でクルリと回ってみた。ベビードールの前がふんわり広がりパンツがちらりと見えた。ああ、回るのは駄目だった。
「なっちゃん、きれい・・・。」
リノはキラキラお目目で私を見ていた。
ソフィアとハンナは何とも言えない顔で私のレクチャーを聞いて、見ていた。
「・・・すごいわ。ナディア。ものすごくセクシーよ。」
ソフィアがそう言うとハンナはこくこくと頷いた。
「うん、そうかも。これって黒だからよねぇ。ほらこのベビードールは初夜を迎える子の為に考えたものだから、このリボンを解くとすぐに前がはだけるし、紐パンツも紐を解けばすぐ脱がせることが可能よ。それにブラジャーもフロントホックにしたからここを外せばすぐに、ね。黒って肌をきれいに見せるし、なんか妖艶というか色香がマシマシじゃない?」
「そうね。言ってたわね。あの色ボケ女の被害者男性の婚約者に贈るって。」
「ええ、あと数ヶ月で結婚するって言っていたわ。あの日、迷惑をかけちゃったからプレゼントしたいの。これならどうかな?初夜が盛り上がらないかな?黒じゃなくて、白とかピンクの方がいいかな?その方が初心っぽくていいかな・・・。」
「・・・私、婚約者も彼氏もいたことないから分からないけど、黒は刺激が強いんじゃないかしら。今、私、ナディアにドキドキしてるもの。」
「うん、そうだよね。私も男性経験ないから、どういったモノがいいのか、はっきりとは分からないのよ。ましてこの世界だしね。前世で友人が彼氏との初えっちの為にこういう下着を買っていたのよねぇ。あの時は色は黒ではなくてベビーピンクだったっけ。前世ではそう言う特別な時に使う下着を勝負下着とか言っていたのよ。自分をよく見せて、尚且つお相手の興奮を高める為の小道具って言ったところね。」
「ふーん、面白いこと考えるのね。でもこれって、結構攻めてるわよね。」
ソフィアはまじまじと私を見て言った。ああ、この世界だとそうかもしれない。足を見せる文化じゃないものね。膝上なんて、はしたなく見えてるのかなぁ。
「前いた世界ではそんな攻めてはいないんだけど、まぁ、黒はあんまり普段使いじゃないかもだけど、白やピンク、ブルーやグレー、あとベージュかなそんな色だったら、ブラジャーやパンツはよくある形なのよ。だめかなぁ・・・。」
うう、ちょっと自信なくなってきた。ピタッとした下着は落ち着くんだけどなぁ。
「だめではないけど、今使っているのと違っていて、着るのに勇気がいるわ。ナディアは・・・平気そうね。」
「ええ。前はこういう感じだったから、抵抗はないわ。それに素材も変えたから、手触りがいいでしょう。」
「ああ、それは分かるわ。サラっとして肌にピタッとくっついても肌触りがいいわよね。それにブラジャー?って、胸がきれいに見えるわ。コルセット無しでもいいわよね。」
「そうよね。あのコルセットの締め方を続けていたら、体を壊すわよ。」
「そうかも。」
ソフィアがこくりと頷いた。
そんな話をしているとこんこんと扉がノックされ、ガチャリと扉が開いた。
あっ、しまった。扉に鍵をかけてなかった。
くっと振り向くと、アルフレッドとシャルルが部屋に入って来てるとこだった。
「姉さん、入るよ。シャルル殿下と一緒に帰ってきたから、お連れした、よ、えっ、えぇぇぇ~、姉さんっ!なんて、格好してるの!!!」
アルフレッドは部屋に二三歩入ったところで、顔を上げ私を見たらしい。そこで止まって、悲鳴に近い声をあげた。シャルルはその隣で無表情に私を見ている。
あらあら、これってやらかしたってやつかな。




