20. 部活の成果?
「部活って何?」
シャルルは首を傾げた。
「ああ、そう言った活動はないのかしら?学生が同じ興味を持った者同士集まって、授業の後、放課後とか休日に活動するの。例えば絵を描くのが好きなら美術部と言って、みんなで集まって絵を描くの。その際先生とかが指導もしてくれるのよ。スポーツが好きならそのスポーツ好きが集まるの。テニス部とかサッカー部とか・・・テニスやサッカーってあるのかしら?ほとんどの学生がなんかしらの部活に所属していたわね。」
最近は帰宅部も多いっていうけど、まあ、説明はいいよね。
シャルルは興味深げに私の話を聞いていた。
「ナディアもなんか部活に入っていたの?」
「ええ、文芸部に入っていたわ。」
「それは何する部活なの?」
「ああ、文芸部って言っても分からないわね。自分で物語を創作して書いたり、それを読み合って感想を言い合ったり、市販されている本を読んで感想を離したりするのよ。私は読み専だったから、本を読んで同じ本を読んだ子とかと感想を話したりしていたの。物語は書いていなかったけど、友人が書いていたわ。」
よくラブストーリーを書いては読ませてくれていた蘭ちゃん、元気かなぁ。あの子の書くストーリーはとにかく彼氏になった男の子が主人公に甘い言葉を吐きまくるんだよね。そう考えると、うん、この世界の男性は蘭ちゃん好みかも。何かにつけて女性を褒めるもんね。
「ナディアって本読むのが好きなんだ。どんなもの読んでたの。前に言っていた、異世界モノ、異世界転生モノ?」
「いいえ、それは友達が好きでとにかく読んでってたくさん貸してくれたのよ。だから読んだだけ。私はミステリーが好きだったの。特に名探偵が出てくるのね。昔は名探偵に憧れてよく人物観察をしていたのよ。ほら、名探偵ってちょっとした仕草や表情から、その人の趣味や仕事を推測したりするでしょう。あれ、やってみたくて、友達と同じ学校の適当な人を観察して、その人の好きな人を推測したりしたの。ふふ、今思うと悪趣味なことをやっていたわね。私、性格悪いわ。」
「ああ、だからパーティの時にあの被害にあった男たちを当てれたんだ。」
シャルルはポンと手を叩いて、スッキリした、といった顔をした。
「ふふ、今もその時の癖が残っていて、つい観察しちゃうの。そうよ。あの桃色頭に体の関係について問い詰めた時、あの三人は目を背けて後ろめたそうな顔をしたのよ。他の人たちはただただ驚いた顔か眉を顰めていたんだけどね。素直よね、ここの人たちって。まだ学生だからかしら?分かり易くって。」
他にも何人か後ろめたそうな顔をした男たちがいたんだけど、まぁ、それはいいか。
「はははっ、僕も分かり易い?」
「今はね。でも、王子の仮面を被っていると分かりにくいわよ。王子様っていうのも大変ね。」
「そうかも。いや、そうだね。大変な僕を傍で支えてみない?」
シャルルはにっこりと笑って言った。あら、黒いオーラが漏れてきているわ。策士の顔してる。
「そうね。あなたには傍で支えて、安らぎを与えてくれる子がいるといいわよね。シャル君が素のシャル君でいられるような、そんな環境を提供してくれる子。でも、それは私ではないと思うのよ。話していてわかると思うけど、私って結構面倒くさい、かわいげのない女よ。理屈っぽいし、何より異世界から来た別人って言っている変な女でしょう。シャル君、いい子だからもっとこの世界のいい子を掴まえて、幸せになって欲しいわ。」
「僕はナディアに癒されたいんだ。だめ?」
首を傾げ、ちょっと捨てられた子犬的表情が母性をくすぐるシャルルは、あざとい。
かわいい。かーわーいーいー!その、甘える様なくるるんとした瞳、こいつ、自分の顔の使いどころをよく知っている。でもさ、かわいい、は、彼氏になるかもしれない男に向ける言葉じゃないよね。
「私はあなたのその仕草を見てかわいいと思っているのよ。これって気になる男に向ける言葉ではないでしょう。そう思わない?」
シャルルは、ははっと乾いた笑いを見せた。その瞳に少し諦め、ううん、何だろう寂しさかな、が見えた。
「そうだね。完全に子供扱いだよね。それにしても、ナディアは誠実な人だよね。」
「そう?」
「そうだよ。そんなに僕が嫌?」
「いいえ。むしろ会う度に話をする度に好感度は高くなっているわよ。だからこそ、シャル君には幸せになって欲しいと思うの。」
「僕はナディアがいいって言っているんだ。隣りに居て、一緒に笑って、時に喧嘩してってナディアとこれからの人生を歩きたいって、切に願っているんだよ。そんな僕の想いは無視されることなの?」
「うーん、そこなんだけど、私ってこの世界で育っていないから取る行動が異質じゃない?それがシャル君にとって目新しいだけじゃないかな。それに、今まで表面的にしかこの世界の女の子と接してこなかったんでしょう?もっとちゃんと付き合ってみたら違うんじゃないかな。」
「確かにナディアの抱えるバックグラウンドは興味深いよ。最初の印象は『面白いオモチャ』だったからね。でも今はナディアの中身、リカの気質に惹かれているんだ。分かる?僕は、元のナディアの性格や気質はほとんど知らないよ。例え、兄の婚約者とはいえ、あの兄とは付き合いがほとんどなかったからね。だから、僕にとってのナディアはリカなナディアなんだよ。リカって呼べば分かってもらえるかな。リカがいいんだって。」
「いえ、ナディアって呼んで頂戴。もうナディアとして生きる覚悟をしたから。リカって呼ばれると、心が揺らぐわ。えーと・・・ありがとう。」
何だろう、シャルルのことがまっすぐ見れない。最近で一番嬉しい言葉をもらった気がする。すごい、ストレートな口説きだよね。えっ、口説かれてる?うわぁ、前世から通じて、初めてかも。かもじゃない、初めてだ。どうしよう・・・どうしようってなんだ?ぐるぐるしてきた。
「どうしたの?ナディア、顔が赤いよ。」
シャルルが私の顔を覗き込んだ。近い、近い、近い・・・えっ、近いからドキドキしてる?どうした、私!
「えっと、ぐるぐるしてるの。こんなに男の子に口説かれたことないし、シャル君の顔が近くてドキドキだし・・・考えがまとまらなくて、ぐるぐるなのよ。」
シャルルは目を見開いた後、口元を押さえた。そしてふぅっと小さく息を吐くとにっこり微笑んだ。
「ぐるぐるとか、あるあるとか、ナディアは重ね言葉が多いね。」
「だって、ここは前に話した通り、誰かの作った物語の世界じゃない。『あるある』的なことが起きるのよ。金髪バカが桃色頭抱えて、婚約破棄だー、って言うとか、あれって正に『あるある』よね。」
「そう言っていたね。この街歩きでの『あるある』もあるの?」
「ええ、あるわよ。さっきの串焼きもそうだし、ほら物語って何らかの事件があった方が盛り上がるでしょう。だから街歩きの『あるある』は誘拐されるとか、馬車が突っ込んでくるとか、ならず者に絡まれるとか・・・そうね、今回はスリに遭うかな。」




