14. 第一関門
はい、あっという間に週末。
カイル、アルフレッドと私は屋敷の前でシャルル第三王子を迎えた。
「本日は私の我が儘を聞いて頂きありがとうございます。」
私も令嬢の端くれ。儀礼的な挨拶をした。
シャルルはキラキラの王子スマイル全開で応えた。
「いいのです。こんなことであなたと婚約できるなら、何の苦でもありません。」
うん、王族は顔がいい。何だろう。世界の黄金ルールなのかな。
取り敢えず庭園の東屋に案内した。私の前にシャルル、右にカイル、左にアルフレッドがテーブルを囲んで座った。ハンナがお茶を入れてくれた。
うん、今日も美味しい。
「さて、始めましょうか。」
「ええ。」
王子はそう言って手を出すと、すぐ後ろに控えていた王子の従者が鞄から二枚の紙を出し、シャルルの手の上に置いた。おお、王子って感じ。
「こちらです。見てもらえますか?」
「ええ。」
私は二枚の紙を受け取った。一枚は『浮気について』、もう一枚は『婚約したい理由』について書いてもらった。几帳面な細い字でみっちり書かれていた。
『浮気について』は浮気を肯定する立場と否定する立場の両方の観点の意見を述べた上で、自分は倫理的な問題から否定したいと書かれていた。
『婚約したい理由』については、私のパーティでの言動が気に入ったこと、容姿が好ましいことが細かく書かれていた。
うーん、どちらも勉強のできる子の見本みたいなそつのない文章ね。ちっとも面白くない。まぁ、14歳でこれだけ書けるのだから、さすが王子様ってとこかな。しっかり教育を受けてきたことが分かるわね。でも、これでは、ねぇ。
「読みました。不合格で。お引き取り下さい。」
私はカイルとアルフレッドに二枚とも読むように言って、渡した。
シャルルはキョトンとした顔で私を見た。
「なぜです?きちんと書いたと思うのですが・・・。」
「うん、書けてるわ。でも、つまらないから不合格。」
「つまらない、とは?」
「つまらない、は、つまらない、よ。この文章は確かに良く書けてるわ。でも一般的で、あなたがいないでしょう。いい子ちゃんの良く書けた文章に心打たれるわけないでしょう。だから不合格。分かった?他の女の子を探して頂戴な。」
シャルルは俯くと肩をフルフルと震わせた。
あれ、私、小さい子泣かした?
ええー、言い過ぎた?
オタオタしているとシャルルは大声で腹を抱えて笑い出した。
今度は私がポカンと彼を眺めた。
「あははは、ははは、ああ、失礼。あなたは本当に面白い方です。期待を裏切らない。はは、ああ、失礼。あれを。」
王子が手の平を上に向けると、従者がまた二枚の紙を鞄から取り出し乗せた。
「すみません。こちらが本命です。いま一度読んで頂けますか?」
私はまた二枚の紙を受け取った。
まずは『浮気について』は、浮気をするのは悪いことだとは思うが、自分に関わらない限り好きにすればいいんじゃないかと思うとあった。女はあしらってもあしらってもしつこく言い寄ってきて面倒で、香水臭いし、しゃべり方もまどろっこしかったり甘ったるかったりと何の魅力を感じない。そんな存在を何人も相手にしたい奴の気が知れない、とあった。でも、世継ぎのことを考えれば複数の女性と関係を結ばなければならない場合も王に限りあるので、正妃と側妃は複数の女の相手でも浮気ではないとあった。
次に『婚約したい理由』については今まで遊んだことのないオモチャだから興味を持ったとあった。
二度目に出された物は短く大きな文字で書かれていた。
うん、かなり正直。
この二枚もカイルとアルフレッドに渡した。
「どうです?本心です。」
シャルルはきれいな笑顔で言った。
「そうね。先程のよりずっといいわ。ねぇ、カイルもアル君もそう思わない?」
私がカイル達に話を振ると、カイルもアルフレッドも信じられないと言った顔でシャルルを見ていた。
「ねぇ、言った通りでしょう。」
私がニヤッと口角を上げて言うと、驚き顔のカイルが言った。
「・・・ええ。信じられませんが、そのようです。」
アルフレッドもこくこくと頷いた。
困惑した二人をやれやれとみる私。
シャルルは楽しそうに聞いてきた。
「どうしたのです?言った通りとは?」
「第三王子は評判の良い王子で、誰にでも優しく、穏やかで、人望のある方です、らしいですわよ。」
「あなたが言ったのですか?」
「カイルとアル君が言ったのよ。」
「あなたは?」
「腹黒ボンボン。」
再びシャルルは腹を抱えて笑い出した。
「あははは、あなたは思った通りの人です。どうです。合格、頂けますか?」
「そうね。カイル、アル君、いけるかしら。」
「私的には大丈夫かと。」
カイルは真面目な顔で言った。うん、彼はいつも真面目君ね。
「俺もそう思うよ。姉さんはどうなの?」
アルフレッドも真面目な顔で言った。うん、アル君もいい子。
「私も大丈夫だと思うの。って、言うことで一つ目は合格ってことで。」
「ありがとうございます。では次は。」
シャルルはキラキラ笑顔で私を見た。
「ええ、これから私に関わることをお話しします。かなり秘匿性の高い話なので、従者の方はもう一つの東屋でお茶をしていてもらえますか。」
ふふ、人払いってやつね。
シャルルは初めキョトンとしていたがすっと王子スマイルを浮かべ、従者に下がるように言った。
「これでよろしいでしょうか?」
「ええ。それでは第二の課題はこれから話すことを聞いて、あなたの考えを一枚の紙にまとめて来てください。また同じように次の週末に見せに来てください。」
「分かりました。」
「では・・・。」
私は包み隠さず、カイルやアル君に話したことを全部シャルルに話した。




