3 ロビンソンサイド
「まあ!ロビンソン様。その指輪を私に?」
輝くばかりのハニーブロンドを靡かせて、女性は嬉しそうに笑みを象った。真っ赤な唇がぷるんっと揺れた。
女性の身にまとった赤いタイトなドレスが彼女のスタイルの良さを強調している。
ロビンソンは嬉しそうに笑いながら、先ほど彼の婚約者であるフィラーレから返してもらった婚約指輪を目の前にいる女性――ヴィオレッタに差し出した。
「ああ。もちろんだよ。ヴィオレッタ。私と結婚をしてほしい。」
ヴィオレッタの白く細い指を大切な宝物のように包み込むと、ロビンソンはゆっくりとその指に婚約指輪を嵌めた。
ヴィオレッタの目が指輪にはめられた小ぶりなダイヤモンドに向けられる。太陽の光を反射するかのように輝いては見えるが、その大きさのダイヤモンドならば貴族でなくとも庶民でも購入することができるだろう。
ヴィオレッタは内心で舌打ちをした。
「ロビンソン様ったら。婚約者様はどうするのですか?私……愛人になるのは嫌よ?」
ヴィオレッタは甘い声でロビンソンにしな垂れかかる。
ロビンソンの腕に、ヴィオレッタの柔らかく豊満な胸があたり、ロビンソンの脳に血が駆け上がる。
あっという間に耳まで真っ赤になったロビンソンは、ヴィオレッタの肩に恐る恐る手を伸ばして抱きしめる。ヴィオレッタを抱きしめた手が小刻みにぶるぶると震えていた。
「ああ……愛しいヴィオレッタ安心しておくれ。フィラーレとの婚約は破棄してきたから。」
「まあ。嬉しいわ。」
ヴィオレッタはとある男爵の落とし種だ。貴族とは言い難い、貴族の血を半分だけ引いた平民だ。
ヴィオレッタはロビンソンと結婚することで伯爵家の一員になることができる。本当の貴族になれるのだ。
婚約指輪がショボくても受け入れることにした。
「この婚約指輪素敵だろう?一目ぼれして買ったんだよ。大きなダイヤモンドよりも、細やかなダイヤモンドの方がいじらしくて素敵だと思わないかい?」
「え、ええ。そうね。」
ロビンソンの熱のこもった演説にヴィオレッタは口元をひくつかせながら相槌を打つ。
「気に入ってくれて嬉しいよ。フィラーレから返してもらった甲斐があったよ。」
何気なく零れ落ちたロビンソンの言葉に、ヴィオレッタは目を大きく見開いた。
ぶるぶるとヴィオレッタの身体が小刻みに揺れる。
けれど、その衝動をヴィオレッタは必死に抑え込んだ。
ここでロビンソンを殴りでもしたら、伯爵夫人になるという夢が潰えてしまうからだ。
ヴィオレッタは自分自身に言い聞かせる。
「まあ、そうなの。大変だったわね。」
精一杯のプライドでヴィオレッタは笑みを浮かべようとして失敗した。けれども、ロビンソンは自分の成し遂げた偉業に打ち震えていたためヴィオレッタのその様子には気づくことはなかった。




