9・繰り上がり
レニ剣士の3尺刀の刀身を提携工房から既製品を取り寄せ組み上げる。
「よし、取り急ぎこれをレニ剣士に届けて・・・」
「和光くん!」
「うぉ!びっくりした!」
チーフが工作室に来た。
「和光くんちょっとこっち!」
「はい?」
チーフについて社長のデスクに行くと厚子さんとレニ剣士が居た。
「先日は大会に足をお運びいただき、ありがとうございました」
「いえ、お気にせずに。レニ剣士、これ使ってて下さい」
修繕した3尺刀を渡す。
「で?何でここに?」
チーフに聞く。
「この前の優勝者と3位が失格なのよ」
「えっ?」
レニ剣士の方に向くと目が合った。
「私からが説明します。優勝の東間剣士がイレイザー使用で、3位のイーセフ剣士が試合前に樹脂刀身とすり替えて失格となりました。それで5位の私が繰り上がり、急遽地区戦に進出する事になりました!」
「おおっ!それはおめでとう!」
「繰り上がりなのでちょっと情け無いですけど・・・」
「そんなの関係無いよ!5位だって今までの最高順位だったでしよ?どんどん上がってるんだから一緒に頑張ろうね!」
「はい!ありがとうございますそうですよね!やる気出て来ました!」
「そうそう!その調子!」
イレイザーとは付けた部位の減点をカウントさせなくする物だ。
樹脂刀身は30%も軽くなり有利だ。
そもそも剣の重量検査もするのに、どうやってそこを潜り抜けたのかも謎だ。
(まぁ、たぶん審査員がグルだろうな)
有名になって人気が出れば大手のスポンサーが付き、大会出なくてもテレビ出演・演武ショー・ファッションモデル・グッズの販売・写真集などで稼げる道が開けるので、こういった不正をする者があとをたたないので協会は日々、厳しく取り締まっている。
大会関係者を巻き込むと不正がやり易くなるので、残念な事に金で抱き込まれる検査員・審判員もいる。
「あれ?地区戦っていつ?」
「それなんだけど、6ヶ月後だ」
「いやぁーそれはキツイですね」
「そうですね・・・私も正直このまま3尺で良いのか元に戻すのが良いのか決めかねてます」
「前の長さの刀での演武だと、小さく見えちゃうのよねぇ」
「せっかく出れた地区戦なのに勝てないですよねぇ」
「はい!今まで通りだと絶対に勝てないです!」
「それをわかってて使うのは嫌だよねぇ」
「ですね」
「和光くんいい案無いかな?長くて短い刀?」
「え?ギミックですか?」
「それこそ高難度になりそうですね」
「そうよねぇー、ギミック剣は世界戦では使ってる人いるけどねぇ」
「あっ!じゃあ刀身の長さは今まで通り2尺5寸にして、柄を5寸伸ばしてはどうですか?」
『!?』
「それよ!」
「長柄ですか!」
「なるほど!さすが和光くんだね!」
「ただ剣の重量とバランスは拵が結構左右しますね。昔の田宮兵平兵衛って人は長柄を使ってたらしいけど、そのあと長柄のは居ないからどうなんだろうとは思いますよ?」
「その人はどのくらいの長さの柄だったんですか?」
「45センチって言ってたかな?」
『本当に!?、すごく長い!』
「和光さん、2尺五寸刀身の45センチの長柄にして下さい!お願いします!」
「はい?良いんですか?」
「和光くん、すぐやってみて!」
「ではお預かりしますので3日後来て下さい」
「和光さんよろしくお願いします!」
レニ剣士の長柄プロジェクトが始まった。




