62・幻の小手
大将のオルレアンが闘技場に上がる。
この試合で勝負が決まるので表情も厳しい。
我々のチームで対人最強はオルレアンだ。
普段は「ガチャやるでーす!」っとガチャを愛してやまない彼女だが、剣を持つとその緩さは無い。
どこか神がかった強さがある。
左手にバックラーを持っているのはいつも通りだが、今日のその左手はガントレットが嵌められている。
この バッグラーとガントレットだが、昔の金属製とは違い、超高分子量ポリエチレン・カーボンファイバーをエポキシで固めた、硬質樹脂・ハードコートされたポリカーボネートなどで出来ている。
鋼鉄製と比べ軽量で動きやすく、強度もかなりのものだ。
金属製では無いのでガチャガチャした音は無い。
左のバックラーを軽く突き出し、右手の剣を軽く引く。
やや左足を出し低い体制で構える。重心は開いた足の中央に置いている。
とても静かな佇まいだ。
戦っている時、彼女は神に祈らを捧げていると言う事なのだが、あながち嘘では無いような神々しい雰囲気をまとっていく。
相手は真っ黒のアルルカンのマスクを付けている。
寿命直前なのか、身体つきは成人に近い。
新造人間は寿命時に能力のピークを迎え突然死を迎える。
どうしても生物的に無理があるのだろう。
右手に持つ長い白い袋竹刀を杖にして、気怠そうに開始戦まで進み中段に構えた。
「ゴー!」
バックラーで抑えながら回り込もうとしたオルレアンだが、黒マスクに素早く退がられてしまう。
(クッ、速いです!)
十分間合いをとった黒マスクは上段に構える。
天を突くような上段だ!
「ほう!迫力がある上段ですが、それは本物か試してあげるでーす!」
その上段届かないギリギリの間合いに入ったオルレアンは、黒マスクの手前の何も無い空間に向けて剣を打つ!
すると上段に構えていた黒マスクの腕が少し下がり、面に隙が見えた!
(ふん!見かけ倒しでーす!)
「セイッ!」
オルレアンが身体を開いて伸ばした一撃が舞う!
“カッ!カラン!”
オルレアンの面打ちを黒マスクが右手の小刀で受けている。
左の大刀はオルレアンのバックラーを吹き飛ばし、我々の前に飛んできた。
大刀はガントレットによって留められている。
お互い目が合うと、後ろに飛び逸った。
(ほう!長剣でなくて2刀のギミックですか!)
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「旦那様オルレアンは何をやったの?」
小桃とレニとイオリが俺に詰め寄る。
「ミラージュね」
ラクシュミーの答えに俺も頷く。
オルレアン達と稽古をしている時に俺もこの技には泣かされたのだ。
「ミラージュはオルレアンの崩し技だよ。上段という攻撃に特化した構えの場合、今はそこに無いはずの小手辺りを打たれると、反射的に防御の姿勢をとろうとして、構えが下がり頭上に隙が生まれるんだよ。俺もかなりやられたよ」
「なるほど!さっきは幻の小手を打った訳ね!」
「あれに勝つには何事にも動じない。火のようなメンタルの強さが必要になるよ。正に火の位にならないとダメだね」
「それにして逆二刀流とは思わなかった・・・」
イオリが呟く。
黒マスクの長い竹刀が途中から抜け、右手の小太刀でオルレアンの一撃を受けると同時に左の大刀を打ち込んだのだ。
バックラーで防いだが、無理な姿勢だったのでバックラーを離してしまったのだ。
イオリとは逆の右手に小刀、左手に大刀のいわゆる逆二刀流だ。
「これは・・・大丈夫か?」
「心配無いですね!我々家族はオルレアンに任せておけばいいね!」
ラクシュミーの言葉に頷き、みんなでオルレアンの試合を見守る。
(あれ?、またなんか“我々家族”って言った?何でみんな頷いてるの?)




