56・ウザ絡み
(こいつらウザイ・・・)
やっと千織を生み出した。
そこから各剣士の10本の刀身を完成させた。
強靭になったので今までの剣よりさらに薄い。
そしてナカゴを少し短くした。この事によりすこぶるバランスが良い。
ナカゴが長いと当然柄も長くなり、はっきり言って邪魔で無駄で重い!
俺が実戦で使うのならお断りだ。
昔の剣豪で長柄を遣った人がいたらしが、この目で確認していないので信じない。
ひと段落しホッとしていたとこで、実家から相続放棄の手続きの件で呼び出された。
で、今銀座の本社ビルの第一会議室にいるのだが・・・
そこで昔の工房の部下達が入れ替わり立ち替わり、ネチネチしつこく絡んでくる。
(全く、事業を継がなくなった途端に手のひらを返すな。それにしてこいつらヒマか?」
「おい!コオジさんよう!おまえがトンカチで叩いて作った刀見せてみろや!」
「トンカチで潰れてねぇ?www」
「よし!お前らこの男に現在の我が社の工房の技術の粋を見せてやれ!」
「はい!リーダー」
「分かりました!」
「みろよ!この2カラット連のダイヤの鞘を!」
「こっちは砕いたパールで塗装してるんだぞ!金具はオールゴールドだ!」
「みよ!この刀身!新開発のガンダニウムアルミだ!」
「こっちは超合金Zアルミだ!」
2人が一度部屋を出て行くと、台車付きのマネキンを押してくる。
マネキンは甲冑を着ている。
「ふふっ、見ろ!コレが俺さまが作った最高傑作の演舞用甲冑[舞柔]だ!この大きい鍬形も柔らかく舞の邪魔にならないのだ!」
「さすが!リーダー!こんな凄い甲冑見せられたら、こいつ自信無くしちゃいますよ!」
「驚いて何も言えないようだな!」
「おい!お前のその刀見せてみろ!」
リーダーの男が俺の持っている刀を指差すが無視する。
「生意気な!」
「おい!ボンボンが!」
「何を騒いでる!」
社長の親父と弟のサブ常務が部屋に入って来た。
「いえ、ご子息に我々の作品のご評価を頂いてました」
“お前・ボンボン”から“ご子息”になった!さすが社畜切り替えが早い!
「そうなのか?で、何だって?」
「いえ、まだご評価頂いておりません」
「コオジどうなんだ?」
「ゴミだなぁ・・・」
「何だと!」
「何ぬかしてる!」
「社長の前だからってカッコつけるな!」
「ゴミはゴミだ、我々、無ニ殿とダルタニャーン殿の目指す道にはお前らの剣は無い!」
「証明出来ないくせに!」
「相変わらず口だけ番長だな!」
「コオジ証明出来るのか?」
俺はウザい奴らのご自慢の刀3本を借り、会議室の給湯室からラップを持ってきてでまとめ、それを腰の高さのテーブルに渡す。
刀を抜き大きく振りかぶって体重を乗せ振った!
“ガッ!”
返す刀で演舞用甲冑を着たマネキンに斬りつける。
“ガッ”
ラップを解き6本になった刀を床に転がし、真っ二つになったマネキンを蹴飛ばした。
そして俺は、自分の刀を横の壁に突き刺した。
「俺の刀身をみろ!」
刃こぼれも無い刀身が本物の光を放っている。
全員の顔が青い。
「それが千織か?」
後から声がする。
「!?」
工房の輩が振り返り驚愕の表情をしている。
「オジキ?」
エムオスのジン社長と厚子夫人だ。
その前には老人がいる。
親父がその老人に挨拶をする。
「こちらは、ウチとエムオスの相談役の成桃さんだ」
「いやっはっは、そんなビビらんでいいぞ、神田の古本屋のジジイだからなぁ」
「小桃ちゃんのおじいちゃんよ!」
「あぁ、初めてまして・・・」
(そう言えばどことなく小桃に似ているな)
「いえ、これはその前に作った“綾波です」
「そうか・・・それでこれか・・・素晴らしいな」
作り方を簡単に説明する。
「いわゆる丸鍛えかな?」
「そうです」
「優秀だな」
「兄さん、このままマイスター技術顧問として社に残ってくれ」
サブが土下座して頼み込む。
「サブそんな事はやめろ、俺はもう家業から手を引くから、あの葉山のラボをタダで作ってもらったんだから」
突然常務が土下座をして工房の奴らはびびっている。
「君たちは職場に帰りなさい」
3人は6つになった刀とマネキンを持って、逃げて帰るように部屋を出て行った。
これまでの俺の一連の行動でかなり社の評判を落としているのは事実だ。それは正直悪かった。悪ノリし過ぎてしまった感はあり反省している。
(タブーに触れたからな。本来そもそもタブーとは触れてもいけないだと言う事だからな)
「引き受けなさい!」
成桃さんが口を開いた。
「しかし、かなり悪名流してしまいましたから」
「君が表に出ないから問題無い。そんな声は放っておけばよろしい」
「いや、しかしですね・・・」
「君のその今回のマテリアルは個人レベルでは無理だったろ?HIPを個人で設置出来る訳が無いだろう?」
「まぁ・・・」
「維持は?」
「・・・難しいです」
「そうだろう?じゃあそっちとエムオスの共同してマテリアルの工場を作るから、そこの主席研究員として就任しなさい。自由に出来るように役員待遇にはしとくぞ、ただ役員待遇だけど給料は課長クラスね。でもマテリアル代は無料にしとくよ」
「いや、それではあまりにも高待遇では・・・」
「黙らっしゃい!そう思うならマテリアル研究に生涯を捧げ精進しなさい!覚悟なさい!」
「はっ!」
有無も言わさないもの凄い圧だった。
俺のまだ決めきれない心を見透かされた気がする。
だが、お陰様で吹っ切れた気がする・・・
(小桃の祖父殿に感謝だな)
成桃相談役に深々とお辞儀をし部屋を退出した。




