53・葉山ラボ・2
網状にした鋼を使う。
多方向への繊維組織・鍛流線を形成させ、これを潰すとマクロ繊維が立体的に絡み合うのだ。
そうする事でどの方向からも強い、従来の刀を凌駕する粘り強いマテリアルが生まれる。
これには刀匠が使う20トンクラスの自動ハンマーでは圧力が圧倒的に足りない。
そこらの工場のプレス機でも圧縮力が足りない。
ただ、昔と違い現代はHIP・熱間等方圧加圧装置があるのだ。
網状にした現代鋼をカプセルに入れ、1000度以上の高温と2000気圧のアルゴンガス圧を均一にかける。
これにより網の隙間が残らず完全に原子レベルで結合する。
(そのマテリアルで出来た刀は“圧切り”とでも名付けるか?w)
冗談はさておき、真空排気だ。
圧力容器にマテリアルをセットする。
空気を除去しアルゴンガスを注入する。
さて、ここからが加熱と加圧だ。
刀身にヒビが発生しないように1200度まで上げながら、ガスを圧縮し2000気圧まで高める。
「マリアナ海峡越えだな・・・」
ユキナから電話で食事の時間を聞かれたので後1時間後と返事を返す。
ここまででもう、5時間かかっている。
「さて、ホールドだ」
最高温度と最高圧力を3時間維持する。
これで超高圧に押された鋼の網が原子レベルで高密度な塊へと融合されるのだ。
ホールドし母屋に戻る。
部屋に入ると香ばしい磯香りがする。
鯖の干物とサザエの壺焼きだ。
さっそく席に着くと、ユキナがアサリの味噌汁をよそってくれる。
両手を合わせる。
「頂きます」
うぉ!美味い!
素晴らしく脂が乗ってる。
「どうなの新しいマテリアルは?」
ユキナが鯖の骨を綺麗に外している。
「理論的には出来るはずだな」
「どのくらい掛かるの?」
「1本15時間ぐらいかなぁ?」
「そんなに!それ10本も作るの?150時間じゃん!」
「まぁ1日1本として10日だな、ユキナもその間こっちだぞ?」
「そぉなの!?、聞いてなかったわ・・・」
「すまん言い忘れた。明日着替えは足りなければ買って来いよ」
「うん、まぁ2階のクローゼットにも入ってるから要らないと思うけどね。それより10日間タップリ可愛がってもらおうかしら!」
「日中は3時間ぐらい無二剣聖が出稽古に来るぞ?」
「え!どこでやるの?」
「中庭」
「はぁー・・・まぁいいわ、夜可愛がってもらうから」
「・・・・」
返事をしなかったら、ユキナにめちゃ睨まれた・・・
食後のお茶をしラボにもどる。
(よし!上手くいった)
これからゆっくり冷却と減圧をして室温・大気圧に戻してやる。
コンピューター制御なので手間は要らない。
4時間のプログラム入力をして母屋に戻る。
(さて、嫁殿を可愛がるとするか・・・)




