5・県大会
表彰式が終わり会場は片付けに入った。
2位だった赤側のレニと言う名の剣士が、着替えもせず関係者席に来て我々に土下座をする。
目の前に置かれた綺麗にカラーリングされたは割れ、アッコ工房と言う文字が無惨にも分かれていた。
「社長、申し訳ございません。工房の方にあれだけ再三にわたり、御忠告を頂いたのにも関わらず不甲斐ない結果となってしまいました・・・」
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この大会の1ヶ月前にレニ剣士からもっと演武が大きく見えて見栄えが良いように、刀を2尺5寸から一気に3尺にしたいと申し出があったのだ。
厚子さんは数多くの剣士の外装を加工している俺の意見を求めた。
「おすすめ出来ません」
「和光くん、それダメって事かな?」
「レニ剣士は身長も175センチあるのでダメでは無いのですが、道具の5寸の大きな変化を1ヶ月で調整は無理だと思います。普通であれば1年は欲しいところです」
「そんなに時間が掛かるかい?」
「5寸の差は大き過ぎます。15センチですよ?」
レニ剣士の予備刀・2尺五寸の刀を厚子さんに渡す。
「ちょっと何回か振ってみて下さい」
ブンブンブンブンブン
メンテナンスボックスからウエイトを出し切先にマスキングテープで巻く。
「振ってみて下さい」
ブン、ガッ
剣は止まらず床を切り付ける。
「おっ、重い!!」
「長さもそうですが、重さもこんなに変わるんです」
「いやぁー!ほんとねぇーびっくりしたわよ!」
「今までの感覚が少しでも体に残っていると、飛んだり跳ねたりはまだ難しいのでは?と思います」
「なるほどねぇー、凄く納得だわ!」
こっちの意向を伝えたが結局、レニ剣士の強い希望で3尺刀が発注された。
刀身はアッコ工房と提携して居る刀身工房から、急遽吊るしの刀を購入し製作した。
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「まぁ、レニの言ったことも良くわかったわよ。あのままだと確かに決勝までは来れなかったからね。安心しなさい、このままスポンサーは続けわよ」
レニ剣士の顔に笑顔が戻る。
「ありがとうございます!」
「新しい3尺刀作るからそれまで、これ使っててよ」
「和光くん刀ちょっとチェックしてくれる?」
社長から刀を渡される。
刀を抜く。
「ダメですね刀身が歪んでます」
昔と違い現在の刀は半分ぐらいの薄さだ。さらに樋と呼ばれる溝を掘って軽量化するのだが、これが完全な肉抜きになっている。
世界戦の場合は刀身の全身が、色々な芸術的模様の肉抜きがされる。
最近は更にその透かし剣に宝石を埋めデコるのがブームでデコブレードと呼ばれている。
毎年トップランカーのデコブレードの写真集が出て年々売り上げを更新して居る。
西洋剣の方が映えるので、ここ数年で日本でも西洋剣に切り替える人が多くなってきたようだ。
日本人としては寂しいかぎりだ。
服はダボっとして演武で引っ掛け無いように手首、足首が締まっている服がブームだ。
ダボっとしていると技を決めた時に“バッ!”っと音が鳴りかっこいいのだ。
服メーカーはその良い音を出すのに苦労をしている。
老舗服メーカーはやはりその辺の研究は進んでおり、重厚でキレのある音を出す。
音だけ無く、ラメとスパンコールを使わず宝石や金糸銀糸・金箔を上手く使っているので、光の輝きがスパンコールなどより圧倒的に強くて美しいのだ。
このように現代の剣士の演武は、企業の総がかりの体制となっている。
まぁ、昔とはずいぶん違うらしいが・・・
そんなの知らないし。
レニ剣士の刀身は廃棄にする。
また刀身工房から取り急ぎ3尺刀を持って来て、外装を簡単に修理をして新しいのが出来るまで待ってもらう事にする。
とにかく長さとバランスにに慣れてもらう事が必要だ。
レニ剣士を労い厚子さんと会場を後にした。




