36・新競技
「ビックニュースよ!」
厚子さんと旦那さんが稽古場に入って来た。
「ちょっとこっち来てWECの記者会見観て!」
PCの画像を事務所の大型モニターに飛ばす。
WECとは世界戦を仕切っている国際的委員会で、
World Esthetics of Combatの略である。日本語に直すと世界戦闘美学委員会だ。
偉そうなカイゼルヒゲのオッサンが喋っている。
剣聖ダルタニャーンだ。
隣りには無二剣聖が座っている。
世界でこの2人だけが剣聖と呼ばれる。
いや、日本では剣聖だが、世界的にはヘッドマスターと呼ばれている。
ヘッドマスター オブ ソーズマンシップの通称だ。
海外では無二ヘッドマスターだ。
「2年後の世界戦を盛り上げる為に新競技のペア戦取り入れる。各国1組出場可能だ。急な話だが出れる国は出てくれ」
世界戦は5年に一度行われ、それに合わせて各国の国内戦の予定は組まれているのだ。
「ペアは2人同時のフリー技だ。2人で合わせてもいいし同時に違う技でも良いし、交互に演舞していってもいいが、1人が演舞した後もう1人が演舞のパターンは認められない。なお今年から世界戦は刃引き不可とする。真剣使用のみ使用可とする」
『えっ!』
レニとイオリが声を上げる。
そもそも危険という事で、全日本は刃引きしか使用してはいけない決まりとなっていたのだ。
「国内の規定も見直しですかね」
「そうせざる得ないでしょうね」
「怖いから辞退者が出るかも知れないですね」
「真剣は切れるから・・・当たり前だけど・・・」
近年は樹脂に鉄粉を固めた刀身が世界的に主流になりつつあった。その流れが大きく変わりそうだ。
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まいった・・・
日本代表ペア選抜大会に、エムオスMスタイルチームから俺と小桃がエントリーになった・・・
あの世界会見後大わらわだ。
個人戦とペア戦が同時開催となった。
ペアエントリーが増えるかと思ったが、予想外に少なく無二剣聖の「和光くんと小桃ちゃんなら余裕で勝てるぞ」っという余計な?一言で、厚子さんがノリノリになり本人の了承を得ずにエントリーしてくれた。
「夫婦で全日本制覇よ!」っとちょっと引ける程の熱量だ。
フリーの曲が決まった。青森西半部の長唄だ。
「曲に合わせる必要は無い!」
『えぇーー!』
「そもそも曲に演舞が合うとかが採点の実績では無い」
『ほんとに!?』
無二剣聖の爆弾発言だ!
「そもそも理にかなって動けばマイナスにならない」
無二剣聖によるとそもそも、この採点システムは“まとめ”と剣聖ダルタニャーンの家に伝わっている“ワンフォーオール”の動きを入力しAIに判定させている。一度失われてしまった実戦を忘れないように作られた判定システムだ。だが、いつからかダンスのような派手な動きが流行り、アイドル剣士が発生しそこに利益が生まれ現在の形になったと言う事だった。
さすがにこれを憂いだ2人の剣聖は、徐々に今の“舞”から元の“武”に時間が掛かっても戻して行くそうだ。
その手始めという事らしい。




