27・リペア
「イオリ剣を貸して」
車に持ち込み速攻でバラしアルミトレイに油ぎっているパーツをベンジンに漬ける。
「あれ、イオリこれもう一本は?フリーは二刀流でしょ?」
「うん・・・」
「イオリンどうしたの?」
鞄からもう一本を出した。
「うん、レニたん。もう一本はね、油では無いけど・・・」
「あれ?それもしかして畳めないの?」
“コク、コク”
(コレは登録時に触らしてもらったやつか。メチャクリアランスを追い込んでるやつだ)
でもクリアランスを追い込んであっても叩けば戻るはずだが?
拡大鏡をセットし収縮部にLEDライトを当てる。
「あっ!」
拡大鏡で覗くまだも無い、内側が透明な樹脂でがっちりコーティングされている。
「こりゃ取れないな・・・」
内側に樹脂が塗ってあり、ギミックで伸びた所でライトが内側から光るのだが、その光で樹脂が硬化するカラクリになっていたようだ。
試しにチューブから補修樹脂を出し、その刀のライトを当てたら速攻で固まった。
(やられたな・・・ちょっと悪質な嫌がらせだな)
「イオリ、二刀流の場合1本は伸ばしたままになる。UKの一刀の場合はギミックを使うか固定を使うか決めて」
「固定とギミックの二刀流は絶対無理だし、ギミックはまた仕込まれそうだし、だったらフリーはその固まった一刀でやる!」
「そこで問題があるんだ。固定用の鞘を作らなきゃダメんだよ。刀身は登録があるけど、鞘は無いからね全く新しいのが作れるよ」
「間に合うの?」
「午前のUKはその洗ってるギミック剣でお願いしていいか?」
「うん、わかった」
「じゃあ午後のフリーには間に合うよ。フリーの演技は一刀だと何か気になる点あるか?」
「鞘の鐺が下がるのが気になるかな?」
「帯の滑りはどうだ?」
「滑らない方が良い」
「わかった!あと小桃はイオリのフリー競技刀剣変更依頼を、大会本部に直ぐ出して。フリーはギミック無し一刀に変更ね。さらに後で修正検査受ける旨を書いてすぐ申請書持ってって!」
「任せて!」
「イオリ、フリーの一刀での演舞構成は大丈夫か?」
「元々一刀の演舞だったけど、ギミック付けて二刀流にしてとか、何かちょっと無理してたから基本に帰る感じかなぁ」
「あたしも3尺刀とか長柄とかやったもんね・・・」
「皆んなそうなんだねぇー」
「レニ!どうだ?」
溶剤に部品を入れブラシで擦っている。
「油はだいたい落ちたよ!大丈夫だと思う!」
乾いたギミックの部品を合わせ、均等に当たって居るか確認する。
歪んでいると点の接触となり、力が一極集中して固定が不安定になるのだ。
そして合わせ目をバフで軽く鏡面仕上げにする。
これにより畳やすくなる。
「よしOK!レニ頼む」
レニが蝋を薄く塗る。
「蝋を塗り過ぎるなよ!動かなくなるぞ」
「うん、薄ーくだね!」
その間に剣を採寸しベース鞘から使えそうな物をチョイスし中を大き目にざっくり削る。刀をラップにくるみ合わせ隙間はパテ埋めた。
とりあえずこの鞘はフリー1回もてばいい。
乾かしてる間にレニが蝋を薄く塗った部品を組み上げる。
「よし完成!」
剣を渡す。
「イオリどうだ?」
「うん」
不安そうな顔で受け取る。
“シャ“
“カン”
「あっ!これ凄い!前より良いよ!外観同じなのに!」
「イオリン良かったね!」
「みんな!ありがとう!」
じゃ行ってくる!
「レニ、付いて行ってやれ!」
『うん!』
さてと・・・
合わせをパテで固まった鞘の外観を削る。
滑りにくいように千段刻みのベース鞘をチョイスしてある。
「書類出して来たよー!フリーの一刀変更受領されたよ。刀はリペア終わったら本部に持って来て下さいだって!」
「ありがとう小桃!」
「レニちゃんのとこに行ってるね!」
「おう!」
(よし!俺も急ぐぞ!)
鐺を軽くする為に中央部から千段刻みを削り落とす。
鯉口に鉛を仕込み時間が無いのでカラーテープで固定する。
ギミックの短い鞘からスポンサーの名のプレートを取り瞬間接着剤で留める。
このプレートは規定でサイズが決められている。
スポンサー有り登録をした場合には、フリーの演舞でポージングしスポンサー名をアピールしないと大減点となる。
地区戦からは演舞剣士としてプロ意識を求められるのだ。
裏に大会サポート工房の焼印を押した。
(よし完成!)
大会本部に持ち込む。
「えーっと剣の変更は・・・はい、無しですね。これは大丈夫です」
スキャニングし登録済み刀剣と確認された。
鞘を確認される。
「はい、鞘も大丈夫ですな。レギュレーション違反はありません。では新しい鞘のスポンサープレート登録します」
スキャニング登録し、OKのQRコードを鞘に貼られる。
これでレギュレーション違反になる事は絶対に無い。
ここまでやる必要は無いのだが、どうイチャモンをつけられるか分からないのだ。
バカ真面目に登録しておくに越した事は無い。




