2・古書店・成桃堂
バンデンプラ・プリンセスに乗り、桃じいちゃんを迎えに行く。
この車はオークションで小桃が一目惚れして買った物だ。
まぁ、サスは壊れるしボディは錆が多く、とにかくぶっ壊れる怪しいルーカスの電装系としょっちゅう起きるオーバーヒート・・・
これは設計の古さやサスの独自な機構なのでしょうがないのだ。
桃が困ってたので桃じいちゃんが「よし!じいちゃんに任せとけ!」ってイギリスに持って行き、1年かけてボディシャシのメンテと電気自動車化をした。
ワインレッドの外装に白い本革シート。
カリンの瘤をふんだんに使ったインパネやらシフトノブ・ハンドルと、普通に乗り心地が良い足回りとハンドリング・・・
ボディもワンオフで作って無いですか?だって金属じゃ無いし・・・ドライカーボン?
そもそも元のパーツってどこか使ってますか?
もしかして車そのものを0から作りました?
ってぐらいもう別物すぎて、いくらかかったか聞くのが怖いぐらいです。
小桃は大喜びしてるのでまぁ良いんですけど。
10分も走ると店に到着した。
ちょうど桃じいちゃんは店のシャッターを閉めている所だった。
「おう、ちょっと待ってくれ」
シャッターのロックを掛けると助手席に乗り込んだ。
「桃じいちゃん、ちょっと仕事で使いたいんだけど昔の柄を網羅している本ある?
「ん?どういったのを求めてるのかだな。家紋だったり着物の柄や工芸品の模様だったりと、色々あると思うぞ?」
「んじゃあ明日、小桃と探していい?」
「ああ構わんぞ。明日は休みだから、午前中は少し店内を片付けるから午後からおいで」
「うん、わかった」
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〜翌日〜
小桃と散歩しながら成桃堂に向かう。
30分ほど歩きシャッターの閉まった正面横の路地を入ると、店に合わない近代的なデザインの店の出入り口がある。
ドアの四角い所に手をかざす。1人分のスペースが開き中に進む。
実はこれ回転扉になっているのだ。
暫く待つと小桃も出てきた。
大理石柄の通路を歩き、店のカウンターに続く部屋に入る。
「おう!待ってたぞ」
「お店久しぶり!」
小桃は嬉しそうだ。
「好きな本を見て来い」
『はーい!』
小桃と一緒に探す。
このビルは3階建てになっているのだが、2・3階は専門書が多いのであるなら1階と言う事だ。
1階だけとは言えかなり多い。
2人で横移動しなから題名を見て行く。
上の棚は俺が担当で下は小桃に担当してもらう。
これは!っと言う題名があれば手に取って内容を確認していく・・・
「はぁ〜」
なかなか目がツラい。
コレを小桃と2人で何だかんだ2時間ぐらいやっている。
ちょうどおやつの時間だ。
「休憩しよっか?」
「うん、意外と無いねぇ」
カウンター奥の休憩室に戻る。
小桃はハードカバー本を1冊だけ手に持っている。
俺は0冊だ。
それにしても1冊も持っていないのも気が引ける・・・
ふと、目についた白い背表紙の“まとめ壱”と言う本を、棚から引き出して手に持ち小桃の後を追った。
桃じいちゃんが神田のどら焼きを買って来たのでおやつに頂く。
「何かあった?」
「私は家紋と家名辞典!ほら色々な家名と家紋があるんだよー」
日本ではほぼ苗字が無い。
ただ世界大会を3回優勝すると家紋を作れて苗字を名乗れるのだ。
なので家名があると言う事は、剣聖を排出した一族ということになる。
自分と子供と孫の代まで本家のみ家名を名乗る事が出来る。
家紋は本家のみに限るが、登録すればそのまま半永久的に継承可能になる。
「旦那様それはなぁに?」
小桃が“まとめ壱”と書いてある本を手に取り開く。
ざっと活字を目で追う。
「うん?・・・これはどう言う事かしら?」
「どうかした?」
小桃から本を受け取り、本の内容を確認する。
「えーっと・・・」
(全くわからないんだけど、何だこりゃ?)
「桃じいちゃんこの本は何かな?」
桃じいちゃんはチラッと本を一瞥する。
「おおっ!その本はそんな所にあったか!それはウチに伝わる健康の為のハウツー本じゃな」
「へぇー」
「いやぁー見当たらなくてちょっと焦ってたんだ」
「お店に並んでたんじゃねぇ」
「わしもボケたかのぅ?」
ぺしっと桃じいちゃんが自分のおでこを叩いた。
「おう、ちょっと待ってな、えーっと・・・ここら辺にだな・・・・」
レジの下をゴソゴソ漁ると、玉に棒が付いた木を出した。
「ほれ、コレとセットじゃ。この手慣らしを使って、その本の通りに身体を動かすんだよ」
差し出された手慣らしを受け取る。
「うわぁ!重い!コレ木なの?」
「リグナムバイタって木材だな」
(ソフトボールの球に25センチの長さの缶コーヒーが付いている感じだな!)
「へぇー!あたし最近身体が鈍っているからやってみようかなぁ」
「小桃もやるのか?じゃあちょっと待ってろよ」
またまたレジの下をゴソゴソやっている。
「おっ!あったぞー、ほれ」
さっきのより2回り小さいボールで、グリップも気持ち細く長さは2センチほど短い感じだ。
「ひゃー意外と重っ!」
「どうだやってみるか?実は俺も死んだ婆さんも、お前達の両親もやってたんだぞ」
「えっ!そぉなの!やるやるぅー!よし!旦那様あすの朝からトレーニングスタートよ!」
「えぇー!やるのぉ?」
「当たり前でしょ!」
明日から1時間の早起きが決定した。
こうして家伝の?健康運動?体操?を嫁の小桃と毎朝やることになった




