告白
本日3話更新です。よろしくお願いします。
中庭での昼食を終えたピコとサーシャは、王女宮へと二人で歩いた。
もうすぐ縫製室というところで、彼のことを訊ねてみる。
いつ聞こうかと、実はうずうずしていたことはおくびにも出さないようにした。
「カイさんは、最近元気?」
王女宮のお仕着せ及び貸与衣装の管理。それがカイの仕事だ。
縫製室が婚礼衣装の製作で忙殺されるなか、彼はどうしているのだろう。
「カイさんですか? 王宮の服飾室とうちとを行ったり来たりで忙しそうにしてます」
ピコはそこで一度言葉を止め、声をひそめてから続けた。
「カイさん、サーシャさんがいなくなってから寂しそうでしたけど、忙しくなったら調子が戻ってきました」
「おい、こんなとこでのんびりして針子長にどやされないのか?」
突然割って入った声は、カイのものだった。
サーシャは思わず足を止め、隣ではピコが飛び上がって驚いている。
「ほら、だいぶ忙しそうだぞ」
ちょうど前方からフレネの大きな声が聞こえ、ピコがあっという顔をして駆け出した。
「すぐ行きますー!」
ピコが去って、二人の間にぎこちない空気が流れる。備品庫以来の二人の時間だった。
サーシャがちらりとカイを見ると、彼もこちらを見ていた。
カイは言葉を探すように頭をかき、たどたどしく言った。
「あー、前は妙なこと言って悪かったな。その、なんだ。あんたが今のところでちゃんとやれてるなら、それでいいんだ」
視線を一瞬合わせてまたすぐに逸らす。
「お輿入れが終わったら、あんた商会に帰るんだろ?……その前に、時間を作ってくれないか?」
鼓動が大きく跳ねた。
「カイさん、それって……」
「……今はあんたも忙しい。仕事のことだけ考えててくれ」
カイはそれだけ言うと去っていった。
残されたのはサーシャひとり。
胸の奥には、小さな余熱のようなものが残った。
「サーシャ」
業務へと戻る道すがら、後ろから呼ばれた声に再び振り返る。
今別れたばかりのカイのものではない声。
彼が名を呼んだのはあの一度きりだ。
そこに立っていたのはニックだった。
「今からライナス卿のところに戻るのかい? 僕も同じ階に行くから一緒に向かおう」
ニックは小走りで駆け寄ってサーシャと並ぶ。
「仕事はどう? 僕は結構期待されているんだ。隣国駐在の打診もあったけど、別の人に振ってもらったよ。この国でやりたいことがあるからね」
サーシャを見るニックの顔には、あの頃とは違う貴族らしい笑みがあった。
サーシャが初めて恋をしたあの頃。すぐに散った思いだったが、もう胸は痛まない。
気づけば言葉がこぼれ出ていた。
「メリンダとは、あれからも親しく?」
ニックが立ち止まる。
「ああ……やはり君は誤解をしていたんだね。あれは大した意味はなかったんだ」
またゆっくりと足を進め、サーシャに近づく。
そして背を屈め、覗き込まれる。
「そんなことよりも、君は知らなかったのかい? 僕が誰を想っているか」
ふわりとリシャの香りがした。
「君だよ」




