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『50from17』 〜転生先は超高度文明、黒髪少女と経験値で生き抜く方法〜  作者: 五稜 司


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第39話:鉄と大鍋

すすけた鉄板が並ぶ路地の奥から、地下の湿った空気に混じって、香ばしい匂いが漂ってきた。

「ヒロ、ここだよ。あの大喰らいも、この時間はここに居座ってるはずさ」

 マイアに案内され、佐藤は年季の入った暖簾のれんをくぐった。マイアとクロも、その後に続いて店へと入る。


「おや! サトウじゃないかい! 無事だったんだねぇ!」

 厨房の奥から、巨大な木製のお玉を振り回しながら、一人の女性が飛び出してきた。コーテだ。彼女は佐藤の顔を見るなり、その豊かな胸に佐藤の頭を抱え込むようにして豪快に笑った。

「心配したんだよ! クロちゃんとマイアもいらっしゃい。ほら、座りな。今、一番いいところをつくろってあげるからね!」

「……ありがとうございます、コーテさん。でも、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ」

 佐藤は苦笑いしながら、彼女の勢いに押されて席に着いた。


 この店に初めて迷い込んだ時、佐藤は空腹と絶望で死に体だった。客たちが「得体の知れない二人連れだ」と遠巻きにする中、コーテだけは代金も取らずに二人分のスープを差し出してくれたのだ。

『あんた、死んだような目をしてるね。でも、自分のことより先に、その隣にいるお嬢ちゃんが食べられるかを心配しただろう? ……いい器を持ってるよ。しっかり食べな』

 その時かけられた言葉と、胃に染み渡った熱が、佐藤がこの世界で「生きよう」と思った最初のきっかけだった。


「ほら、クロちゃん。あんたにはこの特製スープだよ」

 コーテが差し出した皿を、クロは静かに、しかしどこか慈しむように受け取った。

 その時だ。店の隅で、ガシャン、と派手な音が響いた。


「コーテさーん! お代わり! まだまだ全然足りないよ!」

 見れば、一人の少女が山のように積まれた空皿を前に、勢いよく手を挙げていた。二十歳そこそこに見えるその娘は、驚くほど細身で華奢きゃしゃだったが、その足元には自分の背丈ほどもあり、車軸を叩き出したかのような無骨な大剣が立てかけられている。


(……あれが、マイアさんの言っていた人か。あの体で、どうやってあんな重いものを……)

 佐藤は自分のスープを啜りながら、さりげなく彼女を観察した。

 少女は一心不乱に食べているが、新しく客が入ってきた際、その目は一瞬だけ鋭く光り、無意識に大剣のつかとの距離を測っていた。

(ただの大食いじゃないな。あの身のこなし、相当な場数を踏んでいる……)


 お代わりを持ってきたコーテが、困ったように笑いながら少女の頭を小突く。

「ラブル、あんたねぇ。そんなに食べたら、うちの在庫が底を突いちゃうよ」

「いいじゃん、コーテさん! 私、これがないと動けないんだから!」

 ラブル。それが彼女の名前らしい。


 佐藤は静かに箸を置き、彼女の横顔を見つめた。今の彼女に必要なのは、ただの食事なのか。それとも、その有り余る力を振るうべき場所なのか。

(もう少し、様子を見てからにしよう……)

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