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うちの猫は液体です  作者: 秋葉夕雲
第三章
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第42話 戻る日常

 音楽が鳴りやむと、レストランの一角に突然真子とククニが現れた。

「うわあ!?」

「おや」

 真子はしりもちをついたが、ククニはしゅるりと着地した。

「あ、せ、先輩たち? え、と、か、勝った?」

 まだ混乱しているのか普段以上にたどたどしい言葉だった。

「なんとかね。あんたと戦ってたやつは逃げちゃったみたいだけど」

「あ、あの中二の人……つ、疲れました」

「……気持ちはわかります」

 話の通じない相手と会話していた二人は同じ疲労感を味わったようだった。

 次に、ぽんと音がしてケージの中に入っているラットが現れた。

「忠一ちゃん! よかった。無事ね」

 ケージの外からラットの様子を確認するが、多少落ち着いていないようだが、異常はなさそうだった。

「念のために病院に連れて行った方がいいでしょうね。それと、ポルチーニさんも」

「あ、そうだった! あぶな……忘れてた……」

「さすがにそれは恩知らずすぎると思いますよ……」

「しょうがないじゃない! いろいろあったんだし……」

「あ、ぽ、ポルチーニさんほんとに来てくれたんだ……後でお礼言わなきゃ……」

「ところでこの山羊はどうしますワン?」

「特害対に連絡すればよいのでは? 運ぶわけにもいきますまい」

 不穏当な言葉が多いものの、それでも緩やかな空気が流れる。

 つかの間かもしれない。

 しかしそれでも、日常が戻ってきたと誰もが感じていた。




 このビルの一室。

 ぴんと糊のきいたスーツを身にまとう老紳士が杖を持ちながら椅子に腰かけていた。

 ここがドラマの一幕だと信じてしまいそうなほど、老紳士は絵になっていた。

 そこに騒がしい少年の声が響く。

「サラ、来た! サラ頑張った!」

「ええ。シュレーガー。我が奮闘を称えなさい!」

 サラとそのギフテッド、蝙蝠のシュレーガーが部屋に入ってきた。そんな一人と一匹におもわずため息をつく

「君たちはもうすこし落ち着けないのかな?」

「否! 余の魂は激情と狂気こそ真実であると叫んでいる!」

 ポーズをとり、それをシュレーガーがほめそやす。

 これがこのコンビの日常だった。

「はあ。もういいよ。それで? 例のものは?」

「これでしょう?」

 サラが老紳士に手渡したのは一本の髪の毛。五月の髪の毛だった。

「ありがとう。助かったよ。これでようやく整う。最強のオーナー、河登昌行を殺す算段が」

 老紳士はその風貌に似合わぬ凶悪な笑みで髪の毛を見つめていた。


第三章はこの話で終了です。


次章の投稿は再来週以降になります。

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