* 世界は *
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シリーズ: Part1
場所: アトレシア大王国、第二王子殿下の館にて
時: ギルバートからコトレアの話を聞いた後に
見下ろしている視界の前には、絵柄が混ざり、細かな説明がビッシリと書き詰められた紙がある。
“コトレア領観光マップ”
こんなものを見るのは、今まで生きてきた中でも初めての経験だ。
スーっと、長い指先が“観光マップ” の上をなぞっていき、目線と共に説明の箇所を読み終えた顔にはあまりに珍しい薄い微笑が浮かんでいる。
うっすらとした微笑だったが、今までのように冷笑でもなく、軽蔑や侮蔑を含んだ嘲りでもなかった。
スーっと、長い指先がマップの中の通りを辿っていき、「大通り」 と記された路を真っすぐに通り過ぎていた。
そして、紙の端に届くと、すぐ隣に並べてあるまた別の書類。
“コトレア領観光コース概要”
“短期集中型観光コース プラン表”
その書類を見下ろしながら、また、その口端が薄くだけ上がる。
随分と、手の込んだ説明書に、プラン表。全てのコースが簡単に見比べられる概要パンフレット。
そのどれを取っても、親切で、丁寧で、詳細で、一切の混乱が上がらない。
「面白い」
これだけ入念に時間をかけた書類を見るのは、本当に初めてだ。
それも、ただの小さな領地にすぎない、町に過ぎない土地での観光の為にだ!
「観光」 という概念だって、早々、浮かんでくるものではない。「観光」 を目的として、領地の収入を上げるなど、普通では考えつくようなアイディアでもない。
裕福な貴族であれば、余暇の為に違う場所に旅行に行き、そこでその土地の「観光」 というものをすることもある。
だが、その土地での有名な場所やものを見に行く為ではない。
ただ、湖があれば、湖の側の邸宅で休暇を済まし、散歩をするくらいだろう。
山があれば、邸宅から覗ける外の景色を満喫するくらいだろう。
王都から離れ、わずらわしい時間に追われず、静かな余暇を過ごすだけだ。それが、「観光」 に近い。
領地全体で町起こしを目的に、「観光」 を推奨するなど、前代未聞の考えに近い。
「面白いではないか」
その口端は、先程から微かに、そして、薄く上がったままだった。
それでも、普段のように軽蔑した冷笑が浮かぶのではなく、むしろ、自分の満足感が表れ出ているような、それを隠しもしていないような様相が伺える。
レイフ・アトレシア。
アトレシア大王国第二王子殿下で、現宰相閣下でもある。
すぐ下の弟であるあのギルバートが、世にも珍しく、真っ逆さまに恋に落ちてしまい、“運命の女性” に出会ってしまってから、ギルバートから(尋問並みに問いつめて) 聞いた話である。
レイフが聞いたこともないような政策ばかりだった。知りもしない統治方法だった。
プラン表の説明を読んでも、全く理解が及ばない施設ばかりだった。謎の単語ばかりだった。
今まで、ものすごい量の書籍を読破したと思っていたレイフだったのに、これ以上、この世界で知ることはないと考えていたのに、そのレイフの考えを一掃してくれた領地である。
人物である。
「信じられませんでした……。圧倒されました」
あの“鉄仮面” とさえ異名(悪名) を取る弟のギルバートが、あれほど素直に認めるほどに、異例な領地だった。
あまりに違い過ぎる人物だった。圧巻されたまま心を奪われてしまった人物だった。
信じられない光景に、現象に、日常に、頭がパンクしそうでついていけなかった、とギルバートが何度も口にしていた。
――そんな地があるか。そんな人間がいるか。
興味深そうに、観光プラン表を眺めてはいても、やはり、頭の半分ではそう否定してしまう自分がいる。
それでも、自分の考えでギルバートの話を否定しようが、目の前には、まさに事実が残されている。
信じられなくて、驚きが満載で、異国の土地に来てしまったような錯覚まで呼び起こさせる土地だ。領地だ。
その領地を治める、ヘルバート伯爵家令嬢セシル・ヘルバート。
「面白いではないか」
この年にもなって、レイフの知らない事実があったなど、驚きである。
レイフは幼い時から頭脳明晰の子供として知られていた。自分でも、その形容は合っていると考えているし、間違いではないと知っている。
自他共に認める能力だ。
そのせいでか、レイフは幼い時から、本を読めばすぐにその内容を理解するほどの知能が優れていた。二度読みもしない。
それでも、書類や書籍に書かれた内容は全て把握することができた。
それで、他人の倍以上の書類や書籍を読破してしまい、すでに、王宮内にある図書室の本は全て読み切ってしまったほどだった。
その中から得た知識は多種多様だ。国内だけの知識や報告書だけではなく、国外に関連する書物もある。
多種多様だ。
そんな多大な知識を幼い時から得てしまったレイフには、毎日の生活があまりに退屈だった。
頭の回転も早かった為、議論で相手をやりこめることも、苦も無くできることだった。そう、頭に浮かんできたからだ。
そのせいで、レイフは幼い時から、毎日が退屈だけで過ごしていた。
新しい書籍を取り寄せても、すぐに読み終えてしまい、知識も得てしまえば、後は役にも立たなくなってしまった書籍の山が積もっているだけだ。
第二王子殿下という地位と立場に目をつけて、いつもどこでも、うるさい貴族連中が幼いレイフに近寄って来た。
媚び諂って、ヘコヘコと頭を下げているだけならまだいいが、調子に乗って、あれやこれやと贈り物を押し付けて来て、そのお礼と言ってはなんだが助けて欲しい。
娘達を押し付けて来ては、お茶会に参加させて欲しい。未来の王子妃にピッタリだ、と強欲傲慢さが顕著な貴族ばかりが周囲にいた。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
Gue harap lu seneng sama episode ini.





