すげーな - 08
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「ガキで、貴族のオジョーサマで、全然、貴族っぽくなくて、全然、ガキらしくないガキだった。おまけに、貴族のオジョーサマのくせに、一丁前に剣を振り回して、戦場にまで顔を出してよ。あまりに笑えない冗談なんで、一回、あの頭の中をカチ割ってやろうかと思ったぜ」
「戦場、ってなんだよ。ブレッカのことじゃないだろ?」
「違う。ずっと以前に、な。リアーガが、隣国からの盗賊集団だかなんだかの小競り合いで戦に行く、って知らせてきてな。それで、依頼された情報を持っていったら、その場にあの「お嬢」 までいたんだ。あの時は、さすがの俺でもたまげたぜ」
「戦場は、オジョーサマの遊び場じゃないぜ。ふざけてる」
「そうか? あの「お嬢」 は肝っ玉が据わってるから、いつでもどこでも冷静だが、ブレッカで戦慣れしてる貴族のオジョーサマが出て来て、なぜ、お前は驚かない?」
それを問われて、リエフは仏頂面をして返答しない。
「リアーガの話だと、命を狙われるのは、なにも今に始まったことじゃない。あの「お嬢」 は、少々、危険な任務でも、自分自身で出向く悪癖があってな」
「仕事や任務はお遊びじゃないだぜっ」
「お前、いつまで、そうやって、「貴族のオジョーサマだから――」 って、否定し続ける気だ? 差別ばっかりしてたら、偏見で自分の目が狭まって、しっかり状況判断ができなくなる。せっかくよ、結構、優秀な傭兵に育ててやったのに、俺に恥をかかせるなよ」
口調はのんびりとして、気楽な風にしか聞こえないが、ジャールに叱り飛ばされて、リエフがふいっとそっぽを向く。
「否定したくなる気は判るがよ、状況判断もきちんとできないようじゃ、傭兵失格だ」
「うるせーな」
「だから、俺は、あの「お嬢」 と専属契約を結ぶ。すげーな、って思える雇用者に会う機会は、一生かかっても絶対ない。その“絶対” を覆す奴が出てきたら、素直に降参するしかない。あの「お嬢」 は、俺の何倍も年下だ。お前よりも、リアーガよりも年下で、それなのに、俺達が足元にも及ばないほどの力量を兼ね備えている稀な人物だというのも、理解した。理解したから、俺は、それに乗ってみようと思う。もう、二度とお目にかかれないような人物だろうからな」
ドンッ――と、無造作に、二人の前にジョッキが置かれた。その反動で、上の口からせっかくのお酒が飛び跳ねてしまっている。
「おいおい。丁寧に扱えよ。俺の酒が台無しだろ」
「タダでもらって来てやったんだから、感謝しろ」
「お前、タダで――って言うのを強調するな。酒がマズくなる」
戻ってきたリアーガがベンチに座り直すと、リアーガの前には山のように盛られた次の食事の皿も置かれていた。
「お前、相変わらず、よく食うヤツだな……」
「まあ、未だに成長盛りなんで」
「一体、どこがだよ……」
リアーガはそのリエフに構わず、次の食事に手を伸ばす。
「ああ、そうだ。俺な、「お嬢」 と専属契約を結ぶことにしたから」
そして、さっきの会話の延長上であるかのように、全く呑気な会話を続けるジャールだ。
へえと、リアーガは特別驚いた様子もなく、自分のご飯を平らげている。
「おっさんもいい年なんだから、あんまり、命を急かすようなことするなよな」
「お前な……。俺は未だに働きざかりだ」
「お嬢の任務なんて、ピンからキリまであるんだぜ。それも、無理難題の」
「知ってるぜ。俺は、いつも十分な報酬をもらってるんで」
だから、ジャールは無能じゃない、と言いたいらしい。
「まあ、お嬢と交渉するなら、命を捨てる、なんて台詞は言うべきじゃないぜ。なんたって、お嬢の信条は、「生き抜いて、最後まで生き延びる」 だ。命を懸けても、命は決して捨てられない」
「なるほどな。その助言は耳に入れとくぜ。いい雇用者だ」
その時ばかりは、リアーガがふいっと顔をあげ、不敵な笑みを投げてよこす。
「最高、だ」
「へえへえ」
リアーガがリエフに視線を向け、
「お前はどうするんだよ」
「誰がするかよ」
「へえ」
ジャールがそのリエフに、にやにやとわざとらしい笑みを向けてくる。
「賭けようか」
「俺は、これから1年以内」
速攻でリアーガが乗っていた。
「おい、それは俺が先に出そうとしたヤツだぜ」
「じゃあ、おっさんは、いつくらいだと思う?」
「1年――と言うつもりだったが、まさか、来年も、ブレッカみたいな戦が出てきたりしないだろうしな。憎き元侯爵家も叩き潰したし、当座は領地で大人しくしてるだろ。それなら、2年……いや、3年か?」
「じゃ、俺は、1年以内のままで。100アルジェンティで」
「なんだと?」
「なんだよ。怖気ずくのか」
むむむ……と、少し唸り声を上げたジャールもここで引き下がるわけにはいかない。
「いいだろう。100アルジェンティだな」
「決まりだ」
「絶対ならねーからな」
リアーガとジャールの二人だけで勝手に話を進めたことが気に食わないリエフは、その言葉を意地のように強調してみせる。
「まあ、お手並み拝見、だな」
「確かに」
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
Sana aburi ye ing episode ayni.





