すげーな - 07
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「口うるせー男の割に、素直じゃん」
珍しく、あのリアーガが文句も言わず他人の為に酒を取りに行っているので、リエフの方も、ほう、と物珍し気にリアーガの背を見送った。
「あいつは、これ以上は飲まないからな」
「なんでだよ」
「2杯だけなんだ」
「決まり事なのか?」
「いんや。“己の覚悟” ってやつだろ?」
「なんだよ、それ」
ジャールは皿に残っているデザートを取り上げ、簡単に口の中に放り投げていく。
「今まで一緒に飲みに行っても、あいつはいつも2杯で終いだ。それ以上は、絶対、口にしない。酔ってる様子もないから、酒には強いんだろうが、それでも、口直し程度に酒を飲むだけだ。いつでも動けるように。いつでも集中できるように。へべれけに酔って自分の警戒を下げない為に、だ」
「なんだよ、それ」
傭兵だからと言って、そこまでして、毎回、毎回、気を張る必要はない。そこまでの命を狙われているわけでもない。
契約の仕事が終わると、大抵の傭兵達は、次の仕事が決まるまで気楽に時間を潰している。酔いつぶれても、特別、問題にはならない。
「おい、知ってるか? この領地は、ガキだらけだろ?」
それを指摘されて、今日の豊穣祭でかなりの数の子供がいたことを、リエフも思い出していた。
「そうだな」
豊穣祭に出ている露店や、遊び場、食事処だって子供の店員が必ずいた。
「あいつらは、全員、孤児だ」
「へえ、そうなのか?」
「リアーガもその一人だ。それもスラム街の孤児だった」
「なんで、そんなこと知ってるんだよ」
「以前に酒盛りしてる時、昔の話が出てきたから、出身はなんだよ、って聞いてみただけだ」
まあ、傭兵などしている男達は、身元が不明な人間もたくさんいるし、孤児から傭兵になった奴らもたくさんいる。だから、リアーガがその一人だったと知っても、リエフは、特別、驚きはしない。
「あのお嬢さんに拾われてな。それで、今のリアーガがある、って訳だ。あいつは、あのお嬢さんに命を懸けると誓っているから、気を抜かない。警戒を解かない。絶対に隙を見せない。あの「お嬢」 の邪魔をしない為に。重荷にならない為に」
「随分、惚れ込んでんな、あいつ」
リエフにとって、リアーガは年下のくせにクソ生意気で、言葉遣いも荒く、口うるさいヤツだ、くらいの認識しかない。
ジャールが、「信用できる奴だ」 とリアーガを連れてきたから、傭兵としての力量や能力は高いようだが、リエフにとってはそれだけだった。
「なんでもな、この領地にいる孤児達全員は、あの「お嬢」 が拾って来た、てな話だな」
「冗談だろ」
「それで、周囲の全員から反対されたが、一人で押し切って、積極的に孤児の受け入れをしているそうな」
「冗談だろ。貴族の娘なんか、そんなことするかよ」
全くジャールの話を本気にしないリエフを簡単に無視して、ジャールが続けていく。
「それで、誰一人、味方がいないのに、たった一人きりで、超ど田舎の村を“町” まで発展させたそうな。俺が、最初にこの土地に招待された時、宿屋の女将が色々と説明してくれてな」
「冗談だろ」
「冗談じゃないから、この祭りだって、あれだけの大賑わいをみせて大盛況だ。全部、「お嬢」 が発展させたからだ」
「信じられないな、そんな話」
「まあな。だから、今回、こうやって領地に招待されたから、俺は「お嬢」 と専属契約を結ぼうと思う」
「マジかっ?!」
貴族との専属契約を交わす傭兵は、ほぼ、その貴族一人だけに仕えることになる。
貴族に仕え、貴族の仕来りやルールに縛られ、肩身の狭い思いをするのが嫌な傭兵達はたくさんいるだけに、ほとんどの傭兵達は専属契約を結ばない。
それよりも、自分で好きな仕事を選び、自分で契約を取る方がよっぽど自由というものだ。
「リアーガから話は聞いてたけどよ、直にこの目で見て、確信した。噂は事実だったんだなあ、とな」
「ただの噂だろ」
「事実、だろ? “事実” が話の種で広まって言って、“噂” になっただけだ。「あんな小娘がなんなんだ?」 と思ったことはある。「おい、貴族の令嬢だろ? マジか?」 とも思ったことは何度もある。初っ端からして、あの「お嬢」 との出会いは、普通じゃなかったからな」
感慨深げに、ジャールが遠い目をして昔を思い出している。
読んでいただきありがとうございました。
Twitter: @pratvurst (aka Anastasia)
Wuye tǝmangǝna kǝla shi episode adǝga sǝrayinno.





