北を統べる魔人の魔王
最初にあげられた話を少し変えました
内容はほぼ同じです
自分達が慢心していたことは認めよう
だが・・こんなことになるなんて微塵も思わなかった
「ちくしょう!!なんなんだよ!!あいつは!?」
「無駄口叩かず走れ!!ライガ!!」
「わかってるよ!!あぁ・・ミーナ、シャリア、ガズ、ヤン・・皆死んじまった!!なんで・・こんなことに・・」
・・俺だってわからない・・
俺らはギルドでも優秀な冒険者でランクづけではAランクのチームで、特に大きな失敗をしたことがなかった
それの理由として俺達6人はそれぞれの職業が戦士、僧侶、魔法使い、盗賊、格闘家、狩人とチームワークもよくバランスもよかったことも起因している
俺らならSランクの魔物にさえ負けない、そんな自信があった
・・だからだった・・
俺らは依頼にあった雪原に現れた『雪狼(スノーウルフ)』を討伐した時に帰ればよかった
なのに・・『吹雪のやまぬ雪原の奥に魔王の住みかがある』そんな町の噂を確かめようとした
魔王・・魔物や魔族を束ねるもの・・魔王は複数いてさらにそれを束ねる大魔王までいると言われている
そして、雪原にいる魔王は『氷結の魔王』・・冷たき死を与える者と言われている
・・俺達なら魔王なんて楽勝だ・・そんなことを言いながら、雪原の中に佇む巨大な城に入っていった
俺達は自分達の甘い考えをすぐに後悔することになった
最初にあった巨大な氷の巨人、そいつはなんとか倒せたが格闘家であったガズがそいつの拳に押し潰されて・・死んでしまった
俺らはここで帰ればよかったんだ・・
その後は盗賊の俺と狩人のライガが全力で敵を探し、会わないように気をつけながら進んだ
奥へ・・奥へと進んでしまった
そして分厚い青い氷のような扉を開き・・俺達は魔王の目の前に出てしまった
水晶でできた禍々しい玉座に座る『氷結の魔王』と呼ばれる魔王は・・人間に似ていた
アッシュブロンドの髪、真っ白で片目しか見えない仮面、黒の中に青い装飾がされた鎧、右の腰には禍々しい紋様が刻まれた鞘に入っている両刃剣、左の腰には黒一色の鞘に入ったカタナと呼ばれる珍しい片刃剣、そして裏地が青のマント
・・それを見た瞬間、俺は確信した・・手をだしてはいけないものに手を出してしまったと
魔王がゆっくりと片手を玉座から顔と平行になるくらいあげた瞬間
僧侶であるシャリアがいきなり倒れた
倒れたシャリアをよく見れば首に親指大の穴が開いていてそこから血が流れて地面に赤い水溜まりを作っていた・・即死だった
わけがわからなかった・・何をされた?魔王は玉座から動かずただ手を軽くあげただけ・・たったそれだけで・・シャリアを殺した
・・シャリアは後衛だが、神の加護などのお陰で防御は耐性はメンバー1だなのに・・
「うっうぁぁ!!」
「シャリアの仇よ!!『炎塊/フレイム・ストライク』!!」
剣士であるヤンが剣を構えて魔王へ駆け出し、それを追い越す勢いの炎の塊を魔法使いであるミーナが魔王に放つ
ミーナの炎を目眩ましにしたヤンの突撃、これなら魔王にも通る、そう思った
魔王が迫る炎に対してしたことはただ右手を払う、それだけだ
それだけで炎は薙ぎ払われた・・いや凍らされて薙ぎ払われた
視力のいい俺だからわかった、触れた一瞬で炎は凍らされていた・・ありえないと思った・・しかし、それが現実だった
そして魔王は突撃してきたヤンの顔を握った
そして、ヤンさえも一瞬で氷像に変えてしまった
そして氷像はまえのめりだったため自然と床に向かい倒れて・・砕けちった
魔王はそれが自然なことであるように悠然と座って俺らを玉座から見下ろしている
「やっヤン!?よくもヤンを!!くらいなさい『火の矢/フレイム・アロー』!!」
ミーナの背後に魔法陣が現れればそこから100を超える炎で作られた矢が作られる
そんなに難しい魔法ではないがこのミーナの高い展開力、なら魔王と言えど少しはきく・・そう思った
「・・『氷の矢/アイス・アロー』」
「えっ?」
あの光景を見なければ・・
魔王とはいえ魔物が魔法を使うことは驚いた
魔王が使ったのはミーナの魔法の氷版・・ただ、問題はその量・・軽く見ただけで1000は超えていた
「嘘・・なに・・その数」
ミーナはそれを見て震えている
あり得ないほどの力の差、血ヘドを吐くくらいの努力をしてたミーナを嘲笑うような力
「うっ・・あぁぁ!!」
「いけ」
ミーナの炎の矢と魔王の氷の矢がほとんど同時に相手に向かって発射されるが・・圧倒的だった
魔王の氷の矢はミーナ火の矢を全部かきけして、ミーナの全身に氷の矢がささりミーナは赤い液体を体からだしながら倒れる・・即死だ
ミーナが倒れたのを見た瞬間、俺とライガはにげたした
・・仲間のために自分も死ぬことを覚悟で魔王に向かった方がよかったかもしれない
だけど・・俺たちには無理だった、なんとしても生き延びる・・それしか頭の中になかった
玉座のある部屋から出て今まできた道を逆走する
俺とライガには後ろを見ずに走る、俺らは魔王を軽視しすぎていた・・だから・・4人を・・
「あっアルタぁ・・」
「無駄口を叩くな!!走れ!!走るんだよ!!」
「むっ無理だ・・あっ足が・・足が動かねぇ・・」
「なに言ってやがる!!ライガ!!・・おっお前・・その足・・」
ライガの声が後ろから聞こえるようになり振り替えれば・・ライガの下半身が凍りついていた
そして・・ライガの遥か後方で魔王がしゃがんで両手を地面につけていた・・まさか・・ライガまでの距離はゆうに500メートルはあるのに・・それをそんな簡単に凍らせるなんて
「あっアルタ!!助けてくれ!!かっ感覚がなくなってきてんだよ!!」
「あっ・・あぁ・・」
「あっ・・アルタ・・」
やがてライガも全身が凍りついて氷像にかわる・・あっ悪夢だ・・俺らがなにもできずに・・
体が自然と震えてくる・・もう俺しかいない・・
「そんなに震えなくて大丈夫ですよ」
「っ!?だっ誰だ!?」
突然後ろから女の声が聞こえた瞬間、後ろから細い女の両手が俺の頬に当てられて俺の首が固定される
・・どんな奴がしてるのか見たいのに首を動かせない・・万力で押さえ込まれてるみたいだ・・
それよりも・・盗賊である俺の背後をとるなんて・・生き物なら例外なく感知できるはずなのに・・俺の後ろにいるやつはいつの間に・・
「貴方も・・すぐにお仲間のところへ送って差し上げます」
この言葉を聞いて固いものが折れたような音が聞こえた瞬間、意識が一気に遠退いていった
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俺はゆっくりと地面から手を離して氷像になった人間の方に近づいていく
「おつかれ様、エリーデ」
「おつかれ様です、魔王ゼスト様」
氷像の向こうから首がへし折られた死体を担いだ青い侍女服の女性が近づいてきて一礼する
白銀のストレートの髪、アメジストのような・・じゃなくてアメジストな瞳、完全な無表情、身長は170くらい・・外見で判断するなら17歳くらいだが・・人間ではないため意味はない
エリーデは機械人形(ギミック・ドール)と呼ばれる大昔の動く人形に自我が生まれた魔機械人形(イビルギミック・ドール)と呼ばれる魔物で・・魔王である俺の側近でもある
「今回の死体も雪小鬼(スノーゴブリン)や氷蜥蜴人(アイスリザードマン)達の餌にしてもよろしいですね?」「あぁ、それから使えそうなものも保管庫に入れといてくれ」
「了解しました」
エリーデが氷像を地面から剥がして片手で外へ持っていく
俺も玉座の間へと歩みを進める
「はぁ・・人間を殺すのはやっぱりなれん・・」
俺はゼスト、極寒な北の大地、フリージスを統べる元人間、現在は魔人の魔王だ
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注)この作品は不定期更新になります