初代国王(Side カイ)
「名乗ったぞ。なんとか言ったらどうだ。」
姿なき声に向かってカイは怒鳴るように言う。カイのこめかみにじっとりとした汗が伝う。思うように進まない会話に、主導権が握れないことを実感し、警戒を強める。剣を納めた手前、こちらが圧倒的に不利な状況だ。
「なぁんか君、偉そうだよねぇ。それに、第一従者?僕と同じ気配があるのに?」
また訳の分からないことを言われたとカイは思った。だが、またもや直感する。この姿なき声は何か自分が知らないことを知っているに違いないと。
姿なき声に弄ばれている感覚があるものの、敵意は感じない。ならば、この機会を無駄にする訳にはいかない。カイは立て続けに質問を重ねた。
姿なき声は意外にも、いくつかのことを答えた。
曰く、第一王子が務める儀式は、ただの祈りではない
曰く、王家の血は一代限り
曰く、魔法は失われていない
魔法陣の発動を二度も体験しているカイにはもはや魔法の存在を疑う由などなかった。王家の血に関しても、最初に書庫で見つけた紙切れに書かれていたことと一致する。では、儀式とは何だ。
「お前の発言を信じろと?」
カイは低い声で問うた。答える声は楽しそうだった。
「僕はね、マリクだよ。」
遂に明かされた名にカイは目を見開く。その名は賢王と名高い、このヴェルダニア王国初代国王の名であった。
この国では、その時の国王に関するものは縁起物とされるが、唯一の例外があった。歴代の国王と同じ名を生まれた子につけることは不敬とされるのだ。
得体の知れない声の言うことを完全には信じきれない。しかし、これまで自分が集めてきた情報と合致する点が多すぎる。現国王と瓜二つな自分。血、魔法、儀式。
何かがかちりと嵌りそうな、そんな予感をカイは無視できなかった。




