↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青鳥島の夏合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/60

43 ミルクティー

 奥のドアが開いて、眠(ねむ)そうな目を擦(こす)りながら津田美子(つだよしこ)が出て来た。右手に煙草(たばこ)の箱、左手に缶コーヒーを持っている。


「おはよう。ここに一人で居(い)たんだ。向かいの席で一服(いっぷく)してもいいかな?」

「構(かま)いませんよ」

さりげなく津田美子の目元(めもと)をみると、ろくに睡眠を取っていないのか、疲労の色が見て取れた。


「金田(かなだ)くんと曽我部(そがべ)くんの様子はどうですか?」

「二人とも安定してきたみたいだな。一時は危(あぶ)なかった金田も、大分(だいぶ)顔色が良くなってきたよ」

津田美子はそう言って、美味(うま)そうに白い煙(けむり)を吐き出した。


「金田くんはどうして女子トイレなんかに居たんでしょうか? 犯人が首を締(し)めた後(あと)に運ぶのは考えにくいし……何か理由をつけて呼び出して――そこで首を絞めた?」

俺の唐突(とうとつ)な質問に、津田美子は目を瞑(つぶ)り、そのまま眠ってしまいそうなくらいに間(ま)を持たせた後(あと)、再び白い煙を吐き出した。


「金田が自主的に個室に籠(こ)もったとは考えにくい。やはり場所が場所だから、女子に呼び出されたと考えるのが順当(じゅんとう)だろう」


「あの時間帯、根本さんは俺と砂浜にいました。彼を呼び出せる女子は、馳久美子(はせくみこ)と布引真子(ぬのびきまこ)。そして、もう一人……」

俺があえて名前を出さずに言うと、津田美子は缶コーヒーを飲み干して、短くなった煙草(たばこ)を空き缶の中へ落とした。

「疑(うたが)いはじめるとキリが無い。人は都合よく物語を作りたがる生き物だからな」


「……曽我部くんが吐き出した物から、何か分かった事はありますか?」


「ふふっ、まるで警察のような質問だな。ここには簡単な検出(けんしゅつ)キットしかないから精密な分析は出来なかったが、吐瀉物(としゃぶつ)から毒茸(どくきのこ)の反応は出なかった。同じ料理を食べた君も問題ないから、直前に食べた肉野菜炒(にくやさいいた)めに毒茸が入っていた可能性は低い。

 やはりそれ以前に体内に吸収されて、徐々に中毒症状を引き起こしたんだろう。幸(さいわ)い程度は軽く、曽我部は快方(かいほう)に向かっている」

津田美子は安堵(あんど)した表情を浮かべて、二本目の煙草を引き出した。


 俺は朝食に出されたミルクティーをポケットから取り出した。蓋(ふた)を開けて口に含(ふく)むと、根本遥が出し抜けにデッキの下から現れた。

「ぶっ!」

吹き出したミルクティーが根本遥の顔面に飛び散(ち)った。


「酷(ひど)い歓迎ね。秋月令子(あきづきれいこ)が怪(あや)しい動きをしていたから、忠告しに来たのに」

根本遥は呆気(あっけ)に取られている俺と津田美子を意に介さず、俺の手からミルクティーと蓋(ふた)を奪(うば)い取った。しっかりと蓋を閉め、数回上下に振った。


「フフフ。どこかに注射針の穴が空(あ)いているかもね」

根本遥は袖(そで)で顔を拭(ぬぐ)った後(あと)、逆さまにしたペットボトルをぎゅっと握った。

 すると――ラベルの境目(さかいめ)から、ピューとミルクティーが曲線を描いて飛び出した。俺と津田美子の目が、思わずペットボトルに釘付(くぎづ)けになる。


「ミルクティーに睡眠薬でも入ってたんじゃない? 一(はじめ)は吐き出したから大丈夫だと思うけど」

根本遥は砂とミルクティーに塗(まみ)れた不織布(ふしょくふ)マスクを外(はず)して言った。


「訊(き)きたい事が山ほどあるんだが。君は今まで……どこで、一体(いったい)何をしていたんだ?」

津田美子は一度咥(くわ)えた煙草(たばこ)を元に戻して、砂塗(すなまみ)れの根本遥をまじまじと見つめた。


「フフフ。教えてあげてもいいけど。もたもたしているうちに次の被害者が出るんじゃない? 田中忠(たなかただし)が、これと同じミルクティーを飲んでいれば――だけどね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。