表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/42

40 瀬野の推理

「私は(いそ)いで医務室へ向かい、津田先生を呼びに行きました。二人にAEDで蘇生(そせい)措置を(おこな)いましたが……効果はありませんでした」

秋月令子(あきづきれいこ)は感情を押し殺すように、静かに息を吐いた。


「……布引真子(ぬのびきまこ)(わず)かな(すき)馳久美子(はせくみこ)絞殺(こうさつ)して(みずか)ら命を()った。それが本当なら――凶器を隠す時間(ヒマ)は無かったはず。何か物証(ぶっしょう)は見つかったんですか?」

銀縁眼鏡(ぎんぶちめがね)をキラリと光らせて、瀬野賢児(せのけんじ)が確認した。


 項垂(うなだ)れて押し(だま)っている秋月令子に()わって、田中忠(たなかただし)が静かに口を開いた。

「床にピンクの(ひも)が落ちていた。布引はグレーにピンクのロゴが入ったジャージの上下を着ていた。確認したところ……布引がはいていたズボンの腰紐(こしひも)が抜けていた。落ちていた紐は、布引のものと考えて間違いないだろう」


 瀬野賢児が眼鏡のズレをクイッと直し、気まずい沈黙を(やぶ)る。


「フッ、これで一連(いちれん)の事件が一本の線で(つな)がった。すべては布引真子(ぬのびきまこ)で始まり、彼女の死でその(まく)()りたんだ」


 職員たちの視線が自然と瀬野賢児へ(そそ)がれる。瀬野賢児は咳払(せきばら)いをした(あと)(あご)に手を当て語り始めた。


「まずは船上での御当地弁当(ごとうちべんとう)喪失(そうしつ)事件。僕の記憶では、食いしん坊の曽我部太(そがべふとし)の後、真っ先にトイレに行ったのが布引真子だった。

 みんなの食べるはずだった弁当を海に捨て、その罪を曽我部になすりつける。実際、金田龍人(かなだりゅうと)は曽我部を(うたが)っているようだった」


 職員の二人は、饒舌(じょうぜつ)に語る彼を息を殺して静観(せいかん)している。


「次に起こったのはカレー鍋画鋲混入(がびょうこんにゅう)事件。どんなトリックを使ったのかは分からないけど――とにかく、またもや食いしん坊の曽我部が被害に()った。この一件で、ますます犯人の標的(ターゲット)が曽我部だと濃厚(のうこう)になる。

 布引真子は医務室に運ばれた彼を執拗(しつよう)に追うため、気分が悪いフリをして、隣りのベッドに寝転んで――次の犯行の機会を(ねら)っていたに違いない」


 黙って聞いていた田中忠が溜息をついて口を(はさ)む。


「自信たっぷりのようだが、何の裏付(うらづ)けもないし、しっかりと調べたが、鍋の底から画鋲は見つからなかった。もし布引が入れたとしても……曽我部を狙い撃ちできる確実性は(ひく)いんじゃないか?」


 田中忠の(するど)い突っ込みに一瞬(ひる)んだようだが、瀬野賢児はすぐに気を取り直して話を続けた。


「その後、面談前の休憩時間に金田龍人が失踪(しっそう)し、女子トイレの個室で発見された。首には紐のようなもので()められた(あと)

 昨夜(ゆうべ)の馳久美子の絞殺と手段は同じ。首の圧迫痕(あっぱくこん)を照らし合わせれば、犯人の名前は言うまでも無いでしょう」


「布引さんはずっと医務室のベッドで休んでいました。津田先生が常駐(じょうちゅう)していましたし。気づかれずに部屋を抜け出すことは不可能ではないですか?」

秋月令子が口元で両手を組み、冷静に意見を述べた。


「フッ、同じようなシチュエーションで、根本遥(ねもとはるか)がトイレの窓から脱走しましたよね? これまでの状況を()まえると――津田先生は監視に向かない注意散漫(ちゅういさんまん)な人じゃないかと、僕は思いますけどね」


 秋月令子と田中忠は思い当たる(ふし)があるのか、黙ったまま否定をしなかった。


「そして曽我部の毒茸中毒(どくきのこちゅうどく)事件。毒茸の毒は、摂取(せっしゅ)してから中毒症状を起こすまでにタイムラグがある。

 布引真子は医務室で、ずっと曽我部の(そば)にいた。そこで(あらかじ)め抽出しておいた毒茸エキスを飲み物か食事にこっそり混ぜる。

 結果、彼女のお望み通りに――しばらく時間が()ってから、曽我部は中毒症状を起こしたというわけさ!」


 瀬野賢児が得意げな顔で推理を述べると、落ち着き払った田中忠が、自嘲的(じちょうてき)()みを浮かべて言葉を返した。


「そして昨夜の事件に(つな)がるわけか。確かに、いくつかの事件に布引が関わっているのは間違いないだろう。だが……物事(ものごと)はそう単純に紐解(ひもと)けるものじゃない。実際、瀬野の推理を聞いていると、申し訳ないが(あな)だらけでフォローのしようがないよ。……きっと真実は別のところにある。今のオレには、さっぱり分からないけどな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ