表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青鳥島の合宿 ~陰キャでぼっちな俺が、引き籠もり女子と孤島に向かった~  作者: シッポキャット


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/42

32 脱走

 冷静さを取り戻すよう自分に言い聞かせ、再び俺は根本遥(ねもとはるか)のメモ帳を開いた。


――――――――――――

 瀬野賢児(せのけんじ)(13)希望学園生徒

 小学四年生頃から学校の集団行動に馴染(なじ)めず不登校に。対人恐怖症で大人しい性格だが、虫や小動物を悪気(わるぎ)無く虐待する冷酷な一面も。

【備考】気分を害すると自分の(から)に閉じこもる傾向がある。(しか)る時は言葉(づか)いに注意すること。

――――――――――――

 金田龍人(かなだりゅうと)(15)希望学園生徒

 小学五年生頃から不登校。学力は小学二、三年生レベル。ソーシャルゲームに没入(ぼつにゅう)し、自堕落(じだらく)な生活を続けている。

 父親にスマホを取り上げられ逆上し、ゴルフクラブで(なぐ)り大怪我をさせたことも。

【備考】スマートフォンの扱いに注意。キレる前兆(ぜんちょう)を見逃さないこと。

――――――――――――

 布引真子(ぬのびきまこ)(17)希望学園生徒

 高校一年生の時、授業中に吃音(きつおん)をからかわれ、不登校になる。不安や孤独感から、自傷行為をした事が何度かある。

【備考】社交不安障害。話しかける時は(おだ)やかに接するなど、配慮が必要。

――――――――――――

 曽我部太(そがべふとし)(14)希望学園生徒

小学四年生頃から学校の集団行動に馴染めず不登校に。クラスメイトからのいじめも確認されている。学力は小学二、三年生レベル。

 大人しく温厚な性格だが、癇癪(かんしゃく)を起こすと物を(こわ)したり暴力を振るう恐れあり。

【備考】叱る時は穏やかに、言葉を選んで対応すること。

――――――――――――


 参加者たちはそれぞれ、(おおやけ)にできないような(あや)うい爆弾を(かか)えている。俺は一人ひとりの様子を目で追いながら【備考】の注意書きを頭の中で確認した。

 メモ帳を閉じて大きく息を吐き出す。何だか自分の悩みが他愛(たわい)もないものに思えてきた。


 体験入学で参加した俺と根本遥以外は、いずれも希望学園(きぼうがくえん)というフリースクールの生徒らしい。だが生徒同士の交流は無く、お互いの領域(テリトリー)に踏み入らないように牽制(けんせい)しあっているようにも見える。


 今更(いまさら)だが……この状況で、俺のコミュニケーション能力の改善を(はか)るのは無理そうだ。さらに……下手(へた)をすると、とばっちりを受けて自分の身を危険に(さら)すことになるかも知れない。


『あたしは巻き添えを食うのは御免だから。他人の事はどうでもいい。自分を守るためなら、何だってするつもりよ』


根本遥の(つぶや)きが、ふと脳裏を(よぎ)った。


 俺は根本遥のメモ帳をジャージのポケットに仕舞い、チャックを閉めた。続いてズボンのポケットから黒表紙の手帳を取り出して、根本遥の一連の行動を()(つま)んで記録する。

 とにかく(むか)えの船が到着するまで、この不気味な……危険な状況を乗り切らねばならない。俺は今夜一睡もしない覚悟を決め、時計に目を走らせる。時刻は午後八時四十分を過ぎたところ。


 瀬野賢児と曽我部太は本棚の(そば)で、漫画を(たたみ)に投げ出して眠っていた。馳久美子(はせくみこ)も窓枠に突っ伏して眠っているように見える。布引真子は部屋の右隅で、大人しく文庫本を読んでいる。秋月令子(あきづきれいこ)は夜の監視に(そな)えて仮眠を取っているのか、座って腕を組んだまま目を(つぶ)っていた。


 監視役の田中忠(たなかただし)が肩の力を(ゆる)欠伸(あくび)をしかけた時、突然向かいの医務室のドアが開いた。秋月令子と田中忠が(そろ)って立ち上がり、入口の前に立つ津田美子(つだよしこ)(けわ)しい顔を向けた。


金田(かなだ)容態(ようだい)に何か?!」

田中忠の問いに津田美子が溜息を吐き出して答えた。


「金田の容態に変化は無いよ。それよりも……目を離した(すき)に、隣りのベッドで休んでいた根本遥が脱走したようだ。トイレの窓の鍵が開いていたから――多分そこから外に出たんだと思う」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ