鬼鬼鬼 鬼鬼鬼 鬼鬼鬼
そもそも考えてみてほしい。猫又と出会ったあの世界。怪異に見捨てられたその世界で、月は食い荒らされて宇宙に沈んでいた。また猫又から、他の怪異は死に北欧神話の神々が残っていた。バランスが崩れていた、と聞いた。
永久の歴史は踏み躙られて更新を拒絶され、物語的生命を打ち砕かれた。要するにあの時の世界はもう死んでいた。動きのない世界、死んだ後の世界。その後待つのは腐るだけ。物語的意味はもうない。
北欧神話はあの世界をただ殺したのではない、物語すらも殺したのだ。
それは何故だったのだろうか。僕は木陰で怪異を待つ際ずっと考えていた。
僕の肩の冷たい牙が乗せられた時、僕は覚悟した。
とりあえず物語を進めようか。
「助けろワシらを。」
低い落ち込んだ声だった。少し息も入っていた。僕は応える、目を閉じて決心してから。
「当たり前だ、僕に助けさせてくれ。」
そう言って僕は振り返る。僕はあの過去を振り返って自分の償いに気づいたのだ。全くもって馬鹿なことを。振り返った先、僕に声をかけてきたのはどうやら鬼のようだった。
「無駄に静かだろ?」
鬼は尋ねる。いや、事実確認か。
「何も無くて情緒がおかしくなるくらいには。」
鬼は目を吊り下げて僕の手を取りながら言う。
「嵐の前の静けさじゃ。」
そのまま鬼は僕を引いて歩き出す。この校舎から。
「やっぱりそうか。」
ここはやはりあの世界と同じでただただ過去だったんだろう。隔離というのが他世界に隔離したというのではなく怪異のでない時に隔離したという意味だったのだろうか。どちらにせよ物語は動き出している。誰も望まない結末へと動き出そうとしてる。
「結末を変えるにはお前が必要かもしれない。」
それは…なぜ?
「知っているんだろう?この一歩先を。」
ああ、知っている。誰よりも。
「夢で仏がお前の存在を話してくださったのじゃ。」
それは、どう反応すれば良いのだろう…
「一刻を争う。とりあえず我が根城に行く。捕まっとれ。」
鬼の背中に乗る。けれどそれは背中というよりも船のようで船底のようだった。あまりにも大きくて頑丈なその赤い船底に僕は寝そべりながら掴まる。
「これで変われば良いが。」
変わらないかもしれない。変えられないだろう。けれど決して変わらないことが定められているわけではない。だって彼らはあの日可能にしていたのだから。
フェンリルは決して変えられない怪異のバランスを砕いたのだから。
だから変えることはできる。それを僕ができるかという話なだけだ。
「伊吹の里へ向かう。決して堕ちるな、この世界へと。」
伊吹山の鬼。それは僕の先祖かもしれなくて、会うべき存在だった。
僕の唇は焦燥に駆られながらも今ようやく上げることができた。それは良いことだろうよ。




