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大草原にて事前準備

後日談…と言うべきか。それともエピローグ、物語の最初、そんな質素な紹介と呼ぶべきだろうか。どちらが正しいかどうかは言わないし言えない。けれどどちらとも呼べる今が正しさの一つだと僕は思う。新緑の大草原。風が心地よく吹いて吹いて吹く秋の草原で、僕とこいつは語った。もう耳にタコがついている。口は乾燥して目はドヨンと沈んでいる。それだけ話して会話して思考した内容だ。


けれどそんな内容。言い換えれば話の議題。そんな長くて気が遠くなるような世界もいつかは回答編に映る。それが今というだけ。内容、議題、話の種、物語。誰かの語り。そう、僕の語り。この物語そのもの。


それは僕が語っていた。最初から最後まで。僕と言われる人称で語られていた、はず。それがこの僕でない、別の僕であっても僕が語っていたことに変わりはないし、そういうふうに語られている。


僕は僕だ。それ以外でもなんでもない。だから僕がなんの怪異かという質問には僕という怪異だという結論に至る。という答えを僕は決して出さないし、出せない。ここまで一貫してきた重要な議題をそんな言葉で終わらせるつもりはないし、物語としてできない。だからその答えがいかに残酷で辛くてどうしようもなくて…ただ答えだというそんな答えであってもそれはこの僕が語るしそう語られるべきでもある。


「それはあの語りの途中の出てきたつまらない語りをする別のお前のことか?」


別の僕。そいつが誰であって何か。ああ、そんなことを解き明かすのが、これから始まるの解決編であるはずがない。だってその問いに関して答えは既にわかっている。ああ、別の僕?そいつは僕だよ、僕。僕に決まっている。だから別の僕と僕が呼んでいる、呼べている。


「呼べている、か。その調子だとお前は本当にこの世界の仕様を理解したようだな。」


男は言う。言うだけ。言っただけ。それだけ。


そう、世界の仕様。それが別に答え農地の全てであるわけではないが。もっと残酷な答えも含んだ答えだ。解決編で語られるのは。僕がこれから語る答え。それはこの僕がいる意味。別の僕が生まれた意味。僕が出会った怪異の意味。僕の行動によって変わるはずの物語。僕の行動が変える物語の真の結末。


「それら全てを知った上でのお前の行動も答えの一つだろう。大事な答えの。」


男は言う。


「確かにそうだ。そしてそれは全て僕につながっているこもとも、な。」


男は目を開く。長いヒゲは風に吹かれて揺れる。髭男というのも髭男だった。髭が揺れることで強調されたその古臭い顔はやはり年を感じさせるはずなのに、今のこいつは驚愕という若者じみた表情を見せていた。それだけ僕の返事が気持ち悪かったのか、本当に気持ちが悪かったのか、居心地が悪かったのか定かではない。けれど物語都合上、後に語り手が気づくであろう箇所だったのは言うまでもない、それに驚いたのだろうと僕は思う。


それからしばらくしてから、具体的には口が若干乾いてきたところで男は応えた。若干一分後。男は言う。


「お前はどこまで知っている?」


その問いには肉食動物特有の縄張り意識、敵味方判断をする際の微妙な緊張があったように感じた。それはつまり僕にとって気持ちが悪い感触であることに変わりはないのだが。


「それは…僕が自分で理解していない僕が知っていることも含めるのか?それを含めた際残念ながら僕は正しく答えることはできない。だからその問いには応えられないな。」


僕は笑みを一つ作って応えた。変な問いを変な言い訳で応えないことを答えてやったのだ。始まりが変であるから終わりが変でも致し方ない。始まりから終わりまで変な会話、語り、おしゃべり。まるでこの物語のようだった。


ああ、そうだ。そうなんだよ、初めからそうだった。そして終わりもそれになりかけていた。だからお前がこうしたんだ。それに僕は応えた。その問いには応えなくても態度として既に僕はお前に応えている。だから今度は僕がもう一度同じように今度はお前じゃなくて、この世界に応えてやるべきなのだ。


ああ指示語が多かったように感じるな。そうだ、まあ有識者でもこの世界の住人でもない一方的に聞かされて読まされる君たちにはこう言うべきだったかもしれない。つまり物語はようやく解答編に行き着いて、僕は世界の真相に辿り着いたというわけだ。そして今からそれを実行することも。


「さあ怪異譚を歌おう。僕が歌いなおそう始めから。」


…そう始めの始めからやり直そう。でも一つだけ。


一つだけやり直さないことがある。


この物語の本来の結末はやり直さないのだ。それだけは心に決めている。この物語の結末だけは僕が邪魔をするし精一杯破壊する。だってそれがで、世界にとって不合理的すぎる行動でも僕にとっては合理的すぎる行動なのだから。そうつまり僕はこの僕は、この僕のために最大級の利己的な行動を軸にしてこの世界の真相を大まか理解した上で物語をやり直そうと思っているのだ。


そうやりなおす。演る直すし、殺り直す。そして本当の意味での真の結末を迎える。しん。心、神。どれでもいい。


そして最後に、この物語は解決編に向かうのであった。




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