スコットランド?そんなの無理だ。
「スコットランド?そんなの無理だ。」
僕は反射的にそう答えた。けれど、無理だろう。交通手段は?言語は?金は?
猫又は尻尾を揺らしながら応える。
「安心するにゃ。おぬしは人間でももと怪異にゃ。それにわしは妖術が使えるにゃ。」
妖術で強盗でもすると…?そんな馬鹿な。
ベニヤ板で窓は塞がれ、扉は机や椅子の寄せ集めで閉め出されているこの教室。暖房も冷房もいらない中途半端な10月10日。無風の教室には猫の匂いと風呂キャン界隈の僕の悪臭が漂っていた。
「空間移動ならできるにゃ。問題は交渉にゃ。妖精たちは今も最大の警戒体制であるはずにゃ。」
僕は傾聴する。猫又は右足をぶらんぶらんさせながらさながら講演会のように講釈を垂れている。
「問題はどう騙すか、にゃ。事実上世界支配に成功した北欧神話勢力をわしら二人で覆すことはできないにゃ。あくまで妖精を蜂起させてわしらは隠密行動にゃ。」
猫又は下級怪異。僕は現在人間。正面では戦わない、闘えないからか。
「伊吹山の方は今わからないけど、とりあえず妖精を蜂起させるのが先決、第一目標にゃ。」
…なら第二は?
「妖精以外、できれば人間か、それか天狗、鬼などの怪異か。今も対抗している勢力に接触して、これもうまく操るにゃ。」
僕は猫又の荒唐無稽な発言に思わず笑ってしまう。厨二病かよ、それ…
「おぬし、今こそその真価を見せる時だぞにゃ。偏差血71じゃろ?」
偏差"血"71か…まあそうでもあるか。そんな設定あったな、俺。
「偏差値が頭脳を表すとは思わにゃいけどおぬししか今ここにはおらんからにゃ。わしは猫又ってすぐ妖気でバレるし、おぬしなら人間と鬼と、あとまあそういうのが曖昧だからバレにゃいにゃ。」
種がばれるのは危険なのだろうか…
「決定だにゃ…おぬしはスコットランドに行って臨戦体制の妖精をそそのかして蜂起させるにゃ。」
猫又…ところでお前は何をするんだ?
「昼寝するにゃ。」
閉ざされた密室はより一層臭気が酷くなっていた。




