番外編 あめの子のゆりかご1
※注意 この番外編には過激な表現が含まれています。番外編は、飛ばしても話が分からなくなるわけではないので、グロシーンなどが苦手な方は飛ばしてください。
エピソードタイトルを修正しました。2026/8/8
学校が退屈だった。どの授業も価値を感じない。せめてスポーツがあれば良かったが、聖ヘレナ女学院のカリキュラムにはスポーツのスの字もなかった。校則も厳しく、外出もままならない。
「はーあ。つまんねえなぁ」
愚痴をこぼすと近くに居たクラスメイトたちがビクついて教室から出ていく。周りの生徒たちは父の存在を恐れているらしい。こちらが歩み寄ろうとしても、離れていった。桶藁の名が斥力を持って人を寄せ付けない。入学早々、私には話し相手がいなかった。
「ごきげんよう、桶藁さん」
「やあ副委員長。なにか問題が?」
「大ありです」
一人を除いて。
「みんなを怖がらせないでください」
「みんなが勝手に恐れてるだけだぜ」
「……」
学級をまとめる副委員長に自ら立候補したこの変わり者は、理事を務める桶藁を恐れずにしかめっ面で物申してくる唯一の存在だった。
「あなたには良くない噂が立っています。裏で密売人をしてるだの、麻薬だの、人を刺しただの。他にも……」
「あー自分の体を売ってるとかな」
副委員長が眉間にしわを寄せる。わざわざ言わないであげたのに、とでも言いたげだ。
「なら、副委員長が私を楽しませてくれんのか?」
立ち上がり、小柄な彼女を見下ろす。垂れた長い髪が、彼女に掛かりそうだ。
「そのような暇はありません。私はただ、学級の風紀を保ちたいだけです」
少し脅かすつもりだったが、むしろ力を込めてにらみ返してきた。
「ひひ。お堅いね。心配しなくても、私は平和主義者だ」
教室を出て、並ぶロッカーの最奥を開いた。
かばんは重く、何度も手を持ち替えながら校門まで歩く。黒のセダンが止まり、運転席からじいやが降りてきた。後部に回り込みドアを開く。促されるまま乗り込んだ。
整備され始めた道路を進み、ガタガタ揺れる車内から開発中の地下東京を眺めた。大量の資材と人員が地上から導入され、道路の整備に始まり、大きな建物が一斉に建築されている。政府が投資する都市計画である。この計画には数多の外資企業が名を連ね、大きな潮流を生んでいる。
そこが、気がかりだった。復興の加速、日本の経済成長は約束されているが。
『問題はその先なのだ』
父の口癖だ。
『大量の資本は、確かに国を豊かにするだろう。しかし、残るのは資本家の意思決定に逆らえず、じわじわと国を虫食む病巣と化した企業群だ。丸山工業は一人新聞に買収された。穴口食品は難色を示しているが、あそこも腐りかけだ。なにを意味しているか、分かるか』
答えは簡単。
支配が始まっているのだ。
お疲れ様です。
急に始まる番外編。前回とは打って変わって、少し暗めな雰囲気で参ります。
前書きにも書きましたが、今回はこれまでと違い、過激な表現が含まれています。苦手な方もたくさんいらっしゃると思いますのでそこは申し訳ないと思いつつ、とはいえ彼女の見ていた世界を濁すのも違う気がしたのでそのまま投稿することを決めました。世界にはいろんな一面があることを書きたかったのです。
葛藤はありつつも、悔いはありません。
いつ、誰の話なのか?想像しながら読み進めていただければ幸いです。
更新は一週間後、8月14日の予定です。
よろしくお願いします。
次回は、歴史の一部に触れます。




