番外編 あめの子のゆりかご2
※注意 この番外編には過激な表現が含まれています。番外編は、飛ばしても話が分からなくなるわけではないので、グロシーンなどが苦手な方は飛ばしてください。
「御嬢様、学校は」
「くそつまんねえよ。誰も危機感ってもんがない。敗戦から十年しか経ってねえのに、もう忘れちまったらしい」
車窓に流れる景色を目で追いながら答える。
「気づけるのは環境に恵まれている証拠です。誰もが御嬢様のように物事を俯瞰できないのです」
「分かってる。イヤってわけじゃねえ」
高層連なる都市を離れ、開発及ばぬ山道に入った。何度も行き交ったであろうわだちが、道を作っている。梅雨明けの木々は新緑がきらきらと輝いて、笑っているようだ。車を降りると、山を彩る草木の匂いが身を包んだ。揺れる髪を夏風が打ち、思わず目を細める。吹き抜けた風の先に、古びた村が佇んでいる。
「これ、やっぱり変だよなあ?」
ちょいちょいと指差し、訊ねる。
「はい。戦後、東京駅の地下に繋がる巨大エレベーターが発見されてから、およそ九年。未だ長楼閣を母体とした東京駅周辺の開発が続いております。ここは東京駅からほど遠い山奥にございますゆえ、竪穴式住居の村が残っているのは、奇々怪々と言わざるを得ませんな」
私のかばんを持ったじいやが傍まで来て答えた。
疑問は他にも山のようにあった。時間に合わせて地下を照らす天井。温度も湿度も一定。誰も窒息しないということは通気性も保たれている。ユートピアを作るために用意されたが如く、広大で快適な地下空間。
イギリスとトルコにも似た場所があると扶経新聞は報じている。世界はこの事実をどう認識しているのだろう。
と、好奇心は尽きないが、今日の用事はそれじゃない。
ひょろひょろ延びる石畳を辿った。じいやも無言で私の後に続く。村の最奥へ。他と比べて倍は大きな竪穴式住居が私たちを待ち受けていた。
「御嬢様、じいやが前に立ちますゆえ」
「おう」
足を踏み入れると、古い藁の匂いとは不釣り合いな鉄扉が床に張り付いていた。
恐れずじいやは取っ手を掴み、引き上げる。
階段が現れた。
お疲れ様です。
少し時系列が見えていますね。そういえば、本編が何年の話かもまだ触れていませんでした。他国名が出ていたり、これまでのお話とは大きく違う番外編になることでしょう。お楽しみに。
次回更新は一週間後、8月21日の予定です。
よろしくお願いします。
桶藁さんの目的は一体?




