A-018.0728.1255 ポリシー
年は四十代くらいか。スタイルも良いし肌は白いし、黒のスーツもパリッと決まっていたが、にこやかで品の良い所作はどこか藤子と似たものを感じた。丁寧にマナーを学んだものの所作だ。
「初めまして。魚石アスカと申します」
「初めまして、担当だった白脊令子です。まさか会いに来てくれるなんて思わなかったわ」
「担当って言ったの?その白脊さんは」
「なんでもフリージャーナリストは一人一人担当がついて毎回情報や記事を買い取るらしいわ」
「へぇー」
「お時間を作っていただき、ありがとうございます」
「いいのよー。魚石さんにはお世話になったことだし。でも今日はどんな御用で?」
「荷物整理をしていまして。父は仕事で出ずっぱりなことも多く、仕事の話もあまり聞いたことがありませんでした。もし父の残したものなどがあれば引き取ろうかと思い、伺いました」
「なるほどね。残念ながら遺品はないけれど……彼の情報は重宝したものよ。この犯罪のない地下でも刺激的な記事が出せて、評価も高くついてたの。変わったポリシーをお持ちで相手にする人が少なかったけど、私はこの人だって思ったわ」
「変わったポリシー?」
「ええ。情報が必ず口伝えだったの。用紙にしろワープロで打ち込むにしろ、形にして提出するのが通例だから彼の売り方は特殊だった。だから、形で残っている物はないわ」
「でもね」
彼女の声色が変化する。
「どうやら一つだけ記事を書いたらしいの。直筆でね」
「そうなんですか」
「もし、見つけたら私にも教えてね」
「……分かりました。なにか分かったらお伝えします」
「ありがとう!ってごめんなさい。私そろそろ出なくちゃいけなくて。今日はここまででいいかしら?」
「はい。貴重なお時間、ありがとうございました」
白脊さんと電話番号を交換し、一鳥新聞社を出た。
彼女の瞳の奥で揺らめいていたものはなんだったのだろうか。
お疲れ様です。
魚石御月を知る他者の登場です。実は白脊令子は以前(EP32)記者会見で、鮫浦黎次に質疑をした記者です。全くもって重要ではありませんが、おっこんなところに?みたいな発見があるとワクワクするのが人間というもの。繋がりを大切にしていきたいです。
更新は一週間後、6月5日の予定です。
よろしくお願いします。
次回で従弟回は締めます。




