R-027.0721.1204 道すがら
地上東京に住む人々の生活圏は八重洲口側にある。左手には寂れた住宅街、右手には三年前の爪痕そのまま、更地が広がっている。以前は住宅や店が立ち並んでいたが、今は影も形もない。
コンクリートを割り、青々とした雑草が繁茂する平野。眺めが良い。ただ、未だ瓦礫が転がっていることもあり、安易には立ち入れない。
先輩たちはあそこで。
「せんぱーい。こっちですよー」
「……ああ」
住宅街に入り迷路のような路地を進んでいく。
右へ左へ細い水路をまたぎ、壁面を室外機で埋め尽くされたアパートの階段を上がるとなぜか隣の建物に繋がっている。三つ並んだ植木鉢に気をつけながら渡り、階段を下りた。ごはんの匂いがする。水道の流れる音。煙の出ている煙突もあった。
なのに、人と出会わない。ブロック塀の上からこちらを見下ろす猫がいたくらい。不思議なほど、人の気配がなかった。
普段からパトロールで町は見回るが、こんな奥深くまでは来ない。
子羊のように比女の背中を追随する。
道の先に、男が一人立っていた。
「こんにちは」
銀髪を腰まで伸ばした青年が声をかけてきた。年は俺と同じくらいか。
「あははーこんにちはー」
俺は返事をするか迷った。
「……なんか用か」
「道に迷ってないかと思ってね」
柔らかく笑う青年。
「あははーありがとうございますー。道は分かりますのでご心配なく!」
全く臆することなく答える比女。
「道に悩んだらここにおいで。案内するよ」
「そりゃどうもー。わっ、鮫浦先輩?」
軽く会釈をして比女の手を引き、その場を離れた。
「お前、そんなほいほい構うな」
「えー鮫浦先輩が居るから大丈夫ですよー」
「俺が居るのに声かけてきたから怖えんだろうが」
俺の評判が良くないのはよく知ってる。マスコミがあれこれ吹聴してるんだろう。まあ、全てが間違っているわけでもないんだけど。
そんな腫れ物扱いされている俺に平然と近づいてきた。滅多にないことだ。
警戒するに越したことはない……のだが。
「悪い人には見えなかったですけどねー?」
比女にそう言われてしまうとなにも言えない。
あの男に、悪意はなかったのか。
お疲れ様です。
東京駅から見て右手側が六・八にて破壊された地域になりますが、今のところ再建の予定はありません。予算も人手も限られている地上では、重要な部分にリソースを集中して直していく必要があります。
てか怪しいキャラが多いですね。伏線、ということにしておいてください。
更新は一週間後、5月8日の予定です。
よろしくお願いします。
次回は、ようやく目的地に着きます。




