M-258.0708.0536 UNOQ会議2
「えっとね。まずアタシたち酉井セキュリティは、TSSプロジェクトに影響を与えそうな思想犯を担当しているんだけど、新しく魚石アスカって子が出てきたのが、四月二十六日」
「アンテノーラちゃんから報告が入って、即座にD級を差し向けたけどあっさり退けられた。実力を見積もって五月五日にC級を用意したけど、魔石特務部隊の後援班に気取られて失敗。その後は鮫浦黎次が常駐してたせいで接触は不可能だったって」
二代目の脅威はこの場に居る誰もが知っていた。
ヤツは、兵士としては三流である。あれほど絶大な戦力を有しながら、人命救助にしか目がない変人であった。動機も本人の善性によるものではなく、先人の真似事に過ぎない。
ただし。こと人を守るとなると妙な勘の良さで周囲を徘徊し、犯罪に加担する人物と接触するという特性を持っていた。二代目の半径一・五キロ圏内で、暗殺行為は成立しない。
気持ち悪いほどに、他者への危機に対して嗅覚が鋭いのだ。
「魚石アスカがドミナンスを倒しかけたのは正直驚いたぜ。上手く調整できてたから自信あったのにな。出力負けするとはねえ」
チャラおじの鳩山が口を挟む。
「その後!魚石アスカは地下に帰ってー、内閣の要請に従ってー、試験を受けてA判定ー!アタシも映像を見たけど半端なかったよ!!すーごいね!アツくなってくるよー!!」
ばたばた元気な酉井。一鳥が人差し指で机をとんとんと叩いた。
「それで、続きは」
「ううんとね。次はー」
催促されてもマイペースな酉井は資料を捲り、あれこれ見比べている。
「これこれ、A級という試験結果から実力行使での処分は難しいと判断。鴪口食品協力の元、毒殺をプランニングした」
「でもこれもダメー。使い魔の鳥ちゃんが毒を察知して弾いてるんだって。魚石アスカが口に入れようとした瞬間ボッ!って。じゃあ今度は人質作戦だ!て言いたいところなんだけど、大掛かりになる上、戦闘に発展すると隠蔽が難しくなっちゃうから却下にした!!」
酉井本人は元気だが、難敵の出現に困り果てる酉井セキュリティメンバーの顔が目に浮かんだ。
「そこで昨日!長楼閣の抹消措置を使うことを決意!実行しましたー!!」
「ええ、もう使ったの?」
「すみません。使っちゃいました!」
てへっ、とでも言いそうなテンションの酉井。
抹消措置は奥の手だ。
とはいえ、実力主義の酉井セキュリティで若くして頂点に上り詰めた彼女が必要と判断したのである。
「まあ、減るもんじゃないしな。よくやった酉井。魚石アスカは交友関係も広いだろうから、偽装処理がいささか面倒ではあるが些細なことだ。ゆっくりやろう」
英断に拍手。ぱちぱちぱちと一人分の乾いた拍手が響き。
「……」
「……」
「……」
「……」
UNOQ会議では珍しい、沈黙の時間が流れた。
お疲れ様です。
鮫浦副隊長は厄介者として扱われます。地下に戻った魚石アスカの動向もぼんやり載せておきました。
あの手この手で魚石アスカを排除しようとしていますが……?
更新は一週間後、3月6日の予定です。
次回は、エレベーターの秘密?




