A-018.0526.0411 見て見ぬふり
目を覚ますとそこは寮棟の自室で、まだ外は暗く東京基地も静まり返っていた。
八重洲口から外へ出る。遠方まで、災禍の爪痕が残っていた。広場は山羊に踏み壊され、荒れ果てていた。
昨日、わたしは帰りの車内で意識を失った。
うっすらと記憶に残っているのは、運ばれていくたくさんの人。
薄暗い広場には、ぽつんと一部だけ破壊を免れた場所があった。街灯がベンチを照らしている。見慣れた人影が座っていた。
「おはよう。藤子」
「あ、アスカちゃん。おはよう」
「隣、座ってもいいかしら?」
「もちろん」
町はまだ静かで、音は少なく。
「大変だったね」
藤子が呟いた。
「ええ」
「なんか怪獣いるし。アスカちゃんもおっきな鳥引き連れてるし」
「ごめんなさい。隠し事をして」
「あ、違うの。責めたいわけじゃなくって。隠すのは多分間違ってないし……急に知らない世界を見て、唖然としたっていうか。びっくりしただけなんだよ」
目の前で未知の出来事が連鎖して、巻き込まれて、まだわたしたちはそれらを咀嚼しきれていない。
わたしたちの知っていた世界はあまりにも狭かった。それだけ。
「アスカちゃん。おとうさんのこと、なにか分かった?」
町の人たちには捜している人がいることを伝えた。協力的な人が多く、人伝に話が回っていき、当時それらしい人物が大きめの荷物を抱えてあちこちを巡っていたとの情報を得た。
写真の片隅に写っている人影を見せてもらうことも。背格好は確かにわたしの父さんに近かったけれど証拠とまでは言い切れなかった。
その後については分からないままだ。
『絶対に後世に残ると思ってさ。写真、いろいろ撮ってたんだ』
『あーいたいた!こんな非常時になにしてんだと声をかけた記憶があるよ』
『あたしだったら近づけなかったわ。当時は事件も多くて物騒だったから。強盗だったり放火だったり。爆発もあったかしら?海の方だった気がする。でも一番怖かったのは、ご近所さんが失踪したときね』
『六・八からしばらく事件が続いてたけど、今はめっきり聞かなくなったんだよな。なんでだろう?』
あけましておめでとうございます。
今年も精一杯書いてまいります。
牛歩ですので、ときどきで構いません。覗いてくれたら嬉しいです。
それと、今回の話で書かれていた情報はそれなりに重要だったりします。
一応、頭の片隅に留めてくだされば。
更新は一週間後、1月9日の投稿予定です。
よろしくお願いします。
次回は、日常への回帰?




