A-018.0525.1913 ドミナンス戦8
見たくないのに、目で追ってしまう。
散らばった身体は、藤子のものではなかった。
韋駄天の如く現れた鮫浦副隊長が割って入り、藤子をかばっていたのだ。
そう、貫いた相手は。
「さ、さめ……」
足元に転がってきた、副隊長だった一部に戦慄する。
立ち上がれず、口もうまく動かせない。
ヒカリの翼も消えてしまった。燃料切れ。
倒れていた人たちが起き上がり始めた。
山羊が鈍く光る角を掲げ、立ち上がる。
一瞬とは言え、攻撃を止めようとしたせいで狙いがぶれた。外した代償は大きい。角を構え、怪物が地面を蹴り出した。嘆く暇もない。迫る凶角。
一閃。
純白に透き通る剣が振り抜かれた。山羊の四本足をまとめて切り飛ばす。
山羊はバランスを崩しながらも、負けじと反撃に移った。操られた人たちが、鋭利な木片を持ち、副隊長に突っ込む。続けて、足を再生した山羊が角でまとめて串刺しに。
しかし、終わらない。山羊の傍に副隊長が現れた。
胴体に剣を突き刺し、勢いのまま走って、壁面に押し付けた。
「やれえ!!」
両者、血を噴き出し倒れ込んだ。遅れて、遠方から銃声が木霊する。
操られていた人たちも倒れ。
静寂が訪れた。
「?、??」
さっき、鮫浦副隊長はわたしが。血痕が消えている。肉片もなくなって。
「魚石」
呆然とするわたしの前に、副隊長は立っていた。
傷一つ無い姿で。
「どういう、ことですか?」
「扶桑剣のNコードだよ。言ってなかったか?幽体化の過程で身体を毎回作り直してる。死なないって言っただろ」
しばらくして、比女さんたちが迎えに来てくれた。
「あとで言いたいことあるよー?アスカちゃーん?」
「ごめんなさい……」
「そうだそうだ、言ってやれ」
「鮫浦先輩もあとが怖いですよー。羽須美先輩がお冠です」
「俺もかよ」
藤子のミーダは消えていない。きっと気を失っただけだ。脱力した身体の重みに、ようやく実感が湧き始める。
ひと息ついて、星を見上げた。
考えなくちゃいけないことはたくさんあるけれど。
わたしたちは、生き延びた。
お疲れ様です。
山を一つ乗り越えました。ひとまず決着。
この一か月、魚石アスカにとって刺激の多い日々だったでしょう。もちろん藤子も。
彼女らは今、どんな気持ちでここにいるのでしょうか。
次回更新も一週間後、12月26日の投稿予定です。
よろしくお願いします。
彼の名前を明らかにします。




