5.2.ジュノーについて
■ジュノーについて
発見されてから相応の年月が経過しているが、未だジュノーには謎が多い。
制御に失敗すると爆発し消失すること、供給手段が失われている為大胆な実験が行えないことが研究が捗らない最も大きな要因と言われている。
○エネルギー吸収物質ジュノー
ジュノーは電流を流し活性化させることで、位置・運動・熱・光・電磁気など、無機物が保有するあらゆるエネルギーを吸収するという性質を持つ。
周囲よりも高いエネルギーを有する無機物からそのエネルギーを奪い、自らのエネルギーとするのである。
不思議なことに、この特性は有機物に対して作用することはなく、また、自身より生じたエネルギーを利用した現象に対しても作用することはない。
この振る舞いに対しては様々な仮説が存在するが、未だ結論には至っていない。
○ジュノーエンジン
無機物からエネルギーを奪うことで、ジュノーは発熱しながら高速で回転する。
この特性を利用して、ジュノーエンジンが作られている。
ジュノーの最大の特徴は、エネルギーを奪う速度が余りに急速で、エネルギー変換に付き物のロスが殆ど生じない点にある。
ジュノーエンジンが他の動力とは比較にならない効率でエネルギーを生み出せるのは、この特性を利用している為である。
○エネルギーシールド
ジュノーが無機物の持つエネルギーを吸収するという特性に着目し開発された防御手段。
第四世代ギアの象徴とも言える機能である。
シールドと呼ばれているが、その実態はエネルギーの吸収による攻撃の無効化である。
但し、この効果を機体の外部にまで展開、盾として機能させるためにはジュノーに高負荷を与える必要があり、長時間の連続使用は難しい。
エネルギーシールドは調整によって、幾つかの使い分けが可能である。
エネルギーシールドが発生する下限の負荷を常時与え続けることで、エネルギーシールドを長時間、低出力で機能させ続ける使用方法。
パイロットが任意に活性化させ、数度に分けて攻撃の軽減を行う使用方法。
そして短時間に大きな負荷をかけ、瞬間的に非常に強力なエネルギーシールドを生み出す使用方法である。
○オーバーヒート
エネルギーを吸収し続けるとジュノーは制御を失い、エネルギーを吸収する領域を急速に拡大してゆく。こうなってしまうと制御は効かず、最終的には爆発を引き起こし自壊する。
ジュノーエンジンには、ジュノーがこのような状態となる前に強制的に非活性状態に移行させる機能が備わっている。
非活性状態となったジュノーからはエネルギーを吸収するという特性は失われ、ジュノーエンジンのエネルギー効率は極端に低下する。
この現象は兵士達の間ではオーバーヒートと呼ばれている。
■ジュノーに関する研究と悲劇
大戦中、ジュノーに関する研究が最も進んでいたのは倭国のアスモ重工であった。
倭国が月で採取したジュノーは多くがアスモ重工に預けられ、研究されていた。
ジュノーエンジンとエネルギーシールドに関する基礎理論はアスモ重工で作られたものである。
また近年帝国では大胆な手法と斬新な発想により、ジュノーに関する独自の研究が行われている。
ギアフォートレス計画が明るみとなったことが切っ掛けとなりアスモ重工が解体された現在、ジュノーに関する研究が最も進んでいるのは帝国だろう。
しかしその反面、ジュノーによる事故を多く引き起こしているのも帝国である。
暴走を引き起こし制御を失ったジュノーの爆発は都市一つを丸ごと消滅させる程の出力がある。
双子の悲劇事件とシンフォニアの臨界事故。立て続けに帝国で起きた二つの災厄を教訓として、ジュノーの取り扱いに関して幾つかの禁足事項が作られた。
1.ジュノーの研究施設は市街地から百キロ以上離れた場所に建造しなければならない
2.一つの機体に複数のジュノーエンジンを搭載してはならない
3.ジュノーをギア以外の動力として使用してはならない
4.ジュノーエンジンに施されたリミッターを取り外してはならない
5.ジュノー主義者にジュノーを与えてはならない
○双子の悲劇事件
活性化させたジュノー同士を近づけると、お互いのエネルギーを吸収し合い【共食い】が始まる。
【共食い】を始めたジュノーは制御を失って暴走し、研究施設の存在していたタルタムスが消滅した。
帝国で行われたツイン・ジュノーエンジンの実験失敗は双子の悲劇事件と呼ばれ、制御を失ったジュノーの恐ろしさを世界に知らしめた。
○シンフォニアの臨界事故
ジュノーをギア以外の兵器にも利用できないか。或いは、エネルギー資源として平和利用が出来ないか。
そうした研究も進められてはいるものの、成果は得られていない。
ジュノーエンジンはギア以外の動力として利用した場合その安定性は著しく低下し、ひとたび操作を誤れば臨界事故を引き起こす。
発電実験の失敗により帝国のシンフォニアは消滅。周囲の都市も大規模な停電が発生し、一時的にライフラインが麻痺することとなった。
○ムーンドロップ
暴走状態となったジュノーが周囲を巻き込んで大きな爆発を引き起こすという特性を利用した兵器。
意図的にこの暴走状態を引き起こし、敵対国の首都や重要拠点で爆発させるという兵器である。
ジュノーを暴走させる方法には二種類がある。
一つはシンフォニアで行われた実験のように、不安定な状態のジュノーを臨界状態とすること。
比較的容易な手法だが、ジュノーに内包されるエネルギー量も少なく爆発の規模も小さくなる。
一方で安定した状態のジュノーを暴走させた場合、不安定なジュノーと比較して内包されるエネルギー量は大きくなり、より大規模な爆発が生じると考えられている。
これまでの研究から、安定した状態のジュノーとはギアに搭載された状態のジュノーを指し、不安定なジュノーとはギアから取り外された状態のジュノーであると考えられている。
帝国で起きた二大事件は、どちらも不安定なジュノーが暴走したものである。
安定した状態のジュノーが、もし暴走を引き起こしたら……。今日までそれを知る者が居ないのは恐らく幸福なことだろう。
ムーンドロップの研究と製造を永久的に禁止じる。犬猿の仲である連合国と帝国の間ですら、そのような条約が結ばれている。
■ジュノー主義
ジュノーエンジンの存在が公開されて以降、ジュノーを神の使徒、意志を持った鉱物、賢者の石などと呼び神聖視する者達が表れた。
ジュノーに関する研究を行っていた高名な科学者もジュノー主義に目覚めることがあり、ジュノーは人を狂わせる石、ルナティックストーンなどと呼ばれることもある。
帝国、連合国のクラナダ、ラズフィアといった、ジュノーに関する研究が盛んに行われている列強国にはジュノー主義の者が少なからず存在している。
厄介なのは彼らがコミュニティや横のつながりを持たず各々の思惑で動いている点と、実際に行動を起こすまでその者がジュノー主義者であることが露見しないという点になる。
ある者はジュノー教の教祖となり、ある者は兵士達の間にジュノー主義を浸透させ、またあるものはジュノーの謎を解き明かすことは真理を知ることに繋がるとして過激な研究を繰り返した。
何らかの手段でジュノー主義者にジュノーが渡った場合、大抵は大きな悲劇を生むことになる。
ギアに搭載したジュノーが安定するのは、ジュノーが人型を求めている為である。
ジュノーはこの地での依り代として、ギアを求めたのだ。
ジュノー主義者達のジュノーに対する解釈は各々独自のものだが、上記の点については概ね共通している。




