5.1.この世界の歴史とギアについて
■歴史の扱いについて
この世界で起きた主要な出来事を説明する。
GMは自身のセッションに合わせて、出来事の改編や追加を随時行って良い。
■月陰暦
この世界で使用されている暦は月陰暦と呼ばれるものであり、これを新暦、それ以前は旧暦として扱われている。
その起源は定かではないが、倭国には月陰暦元年という記載がされた文書が発見されている。
そのため月陰暦の始まりは倭国にあるのではないかと主張する歴史家が多いが、捏造と批判する声も少なくない。
■年表
969年:帝国の打ち上げたロケットが初の月面着陸に成功する。
970年:倭国のアスモ重工が産業用強化外骨格を発表。後の第一世代ギアとなる。
992年:ラズフィアのアルティマ社が第二世代ギアを発表。世界初の人型巨大兵器として当時は脚光を浴びたが、後に様々な欠陥が発覚し兵器としては普及しなかった。
995年:アスモ重工が第三世代ギアを発表。第二世代ギアに存在した様々な問題が解消されたこの兵器の技術とノウハウを、アスモ重工は惜しげもなく世界に公開した。
996年:各国が競い合うように第三世代ギアの開発に取り掛かった際、ハード、及びソフトにおいて互換性を持たせたいと考えた技術者が多く存在した。この要望に応え、アスモ重工はアスモ規格を発表した。
1000年:倭国の月面探査船スバルが月面にて特殊金属ジュノーを発見。地球に持ち帰る。
1001年:ジュノーの発見を契機に世界には空前の宇宙開発ブームが訪れ、世界は連合国、経済連盟、帝国という大きく三つの勢力に分かれた。
1001~1010年:沈黙の10年
1011年:宇宙開発が過熱する最中、月に展開していた各勢力の打ち上げたロケットが悉く破壊されるという事件が発生。これが切っ掛けとなり、『大戦』と呼ばれる世界戦争が始まる。
1018年:『大戦』末期、アスモ重工が着手していたプロジェクト・ギアフォートレスの被験者達が離反。ローレスと呼ばれる組織を作り、国家からの独立を宣言した。
1019年:経済連盟、並びに連合国とローレスの同盟が締結。共同で帝国、並びにヴァンクールに対する作戦を執る。
1020年:ヴァンクールが経済連盟への加盟を承諾したことが切っ掛けとなり、帝国も終戦に応じ『大戦』が終結する。
1030年:現在(小説版本編の開始時点)
■ギアと見る世界の歴史
この世界の歴史を語る上で、ギアの存在は欠かせない。
ギアと近代史には密接な関係がある。
○第一世代ギア
倭国のアスモ重工が発表した産業用強化外骨格。当時ギアとは、この第一世代ギアを指した。
家庭のコンセントで充電でき、安価で供給され、最大五十キロの補助力を発揮するギアは瞬く間に世界で受け入れられ、産業革命を起こした。
アスモ重工はギアという製品に対する権利を強く主張はしなかったため、多くの企業でこの類似品が作られることになった。
これはアスモ重工が自社の製品に絶対の自信を持っていたことと、ギアの存在を世界に広く普及させたいと考えたためではないかと分析されている。
程なくしてギアは兵器として扱われるようになった。
ギアを使えば一人では運用できなかったガトリング砲や大口径砲などを楽に扱えた為である。
当時から大規模な軍需企業であったアルティマ社やW&G社はこれに目を付け、装甲を強化した戦闘用のギアを発表した。
続いてギアで運用することを前提とした重火器が多数開発され、歩兵の概念が大きく変化することとなった。
○ギアを用いた戦術と変わる戦車の役割
ギアは戦車の天敵だった。ギアは機動力はそれ程高くなく、戦闘用ギアといってもその装甲は戦車に大きく劣る。
しかしギアを身に着けた兵士を装甲車やヘリに乗せることで、この欠点は改善された。
単独で運用するのではなくビークルと組み合わせた運用をすることで高い機動性が得られ、防御能力も向上する。
この運用方法は現代でも通用する有効な戦法である。
二本の腕を自由に使えるという汎用性の高さがギアの最大の長所だった。
小銃、ガトリング砲、グレネードランチャー、キャノン砲、トリガーさえ付いていれば換装不要で、何でも扱うことが出来た。
任務に応じて容易に装備を変えられる上、戦車に比べて隠密性が高い。
そうして高い火力を手に入れた歩兵によって戦車が撃墜されることが増え、戦車の戦術的価値は薄れていった。
現在、戦車は侵攻に用いるのではなく拠点防衛用の移動砲台という立ち位置になっている。
攻撃能力と汎用性はギアに劣るものの、その装甲の硬さは今も一定の評価を受けている。
○失敗の見本市、第二世代ギア
第一世代ギアが発表され、第一世代ギアによる戦術が戦場に浸透しきった頃。
アルティマ社が第二世代ギアと銘打って初代ナイトG2を発表した。
最高時速四十キロ。
第一世代ギアでは使用できない大型装備も使用可能。
第一世代ギアのガトリング砲の直撃にも耐える強固な装甲。
地上戦の概念を覆すと豪語したその兵器はしかし、第一世代ギアの長所を全部投げ捨てて作った戦車もどき、歩く棺桶という酷評を受けた。
機動性を向上させ装甲を厚くした結果、第二世代ギアは強化外骨格でなく、大型人型兵器と化していた。
その結果第一世代ギアの利点であった隠密性が失われ、他車両に搭載しての運用も難しくなった。
また操縦は複雑化され、現場の兵士が直感的に使用できるものではなくなっていた。
この操作の複雑さが何よりも致命的だった。
ナイトG2が待機状態から武器を装備し、固定標的に狙いを付けて射撃を行うには、パイロット一人では五分以上の時間がかかった。
またオートバランサの性能も劣悪で、倒れたら二度と起き上がれないと揶揄された。
人型ロボットをマニュアルで操縦するということの困難さ、二足歩行の難しさを第二世代ギアは身をもって示したと言える。
尚、今現役で稼働しているナイトG2は問題であった操作性が大幅に改善された改良型だ。
アルティマ社は認めていないが、改良型の制御ソフトは第三世代ギアのものがそのまま流用されているという噂である。
○第三世代ギアの登場
第二世代ギアの登場から僅か三年後にアスモ社から発表された第三世代ギア八雲は、初代ナイトG2の問題点を完全に克服していた。
二足歩行の鬼門であったバランス制御と、予め複数の動作を組み合わせて登録しておくことが可能なモーションパッケージシステム。
それらを制御してパイロットの負担を軽減する制御システム、GCU(ギアコントロールユニット)。
第三世代ギアには幾つもの最先端技術が盛り込まれていた。
様々な新型センサーを搭載し、それらを組み合わせることで実現されたオートバランサは倒れるのが難しといわれる程だった。
またGCUの補助を受けることで、パイロットの操縦は大幅に簡略化した。
目標に対する射撃、目標方向への移動などの大まかなパイロットの命令に合わせて、GCUが登録されたモーションから最適なものを選択するという仕組みである。
100を優に超す特許が得られたであろうこの仕組みの全てを、アスモ重工はフリーライセンスで公開し、その利用に一切の制限を設けなかった。
第三世代ギア、第四世代ギアのパーツが比較的安価で生産可能なのは、中核となる技術に対しライセンス料が発生していない為と言われている。
これにより第三世代ギアは瞬く間に普及、発展を遂げてゆくことになった。
○アスモ規格の発表
各国が競い合うように第三世代ギアの開発に取り掛かった頃、互換性の問題が浮上した。
様々な企業が独自に第三世代ギアを開発していたため、仕様の不一致が生じたのである。
特に操作性の差異は前線の兵士にとっては死活問題だった。
これを受けたアスモ社はアスモ規格を発表。ギアの仕様や規格の統一化を図った。
アスモ規格は比較的素直に受け入れられた。中枢になっている技術は全てアスモ社の開発したものであり、アスモ社のGCUを使用するには元々ある程度規格を合わせる必要があった為である。
こうしてギアのパーツは原則、どのギアにも流用可能となった。
パーツ同士の相性は未だ存在しているが、ある程度技術のあるなメカニックであれば様々な方法で回避、対策することが可能な程度である。
○特殊金属ジュノーの出現と三大勢力の誕生
倭国の月面探査船スバルが月面で発見した特殊金属ジュノーは世界に空前の宇宙開発ブームを引き起こした。
この未知の金属の謎を解明するため、各国はサンプルを一つでも多く手に入れようと惜しげもなく資金を投じ、月へと探査船を送った。
この開発競争が月の利権争いに発展するのはある種必然であった。
混乱を避ける為、各国は協議の上ジュノーの保有数と月への探査船の発射を制限する条約を設けた。
その際に連合国、帝国、経済連盟という三つの大きな区分が生まれた。
それから十年の間、各国はお互いに牽制し合いながら宇宙開発とジュノーの研究を進めたが、ジュノーについての研究は遅々として進まなかった。
○世界大戦の勃発
それは唐突に起きた。とある国の打ち上げた探査船が高エネルギー反応を検知し、直後その反応が途絶えた。
この正体不明の『攻撃』は各国が月に打ち上げていた探査船を破壊し尽くした。
帝国はこの『攻撃』を連合国による妨害工作であると断定。
元々険悪な関係であった二大勢力による戦争が開始され、国力の低い国家の集合体であった経済連盟も巻き込まれる形で世界規模の戦争に発展してゆく。
この戦争で主力となったのが、比較的安価で生産可能かつ、兵器としての汎用性が高い第三世代ギアだった。
○ローレスの設立
世界大戦は帝国とその同盟国であるヴァンクール優位で進んでいた。
帝国は強い力を持つ連合国との直接戦闘を避け、軍事力に乏しい経済連盟の国を次々と支配していった。
その間、連合国と近い位置にあるヴァンクールは帝国の支援を受けて連合国と真っ向から対峙。
その動きを牽制する役割を負った。
そうして帝国派と連合国が睨み合い、経済連盟の国々が帝国の属領となり始めた世界大戦の末期。
アスモ社の軍事工場から九機の飛行戦艦――フォートレスが出現。軍事工場を完全に破壊し倭国を離脱した。
離脱したのはアスモ社が秘密裏に進行していたプロジェクト、ギアフォートレスの被験者達だった。
彼らはアスモ社が行っていた非人道的な実験の数々を公開。
自分たちの尊厳と権利を守る為、国家からの独立を宣言。傭兵組織ローレスを名乗り協力する国家を募った。
ローレスは協力国家に対し物資や資金を提供を求め、見返りとして軍事力を提供すると発表した。
殆どの国家はその宣言を黙殺した。とても真に受けられる内容ではなかったためだ。
ただ一つ、帝国に侵攻され滅びに瀕していた小国が、藁にも縋る思いでローレスに対し協力を名乗り出た。
高高度で待機していた九機のフォートレスは直ちに小国へと赴き、進行する帝国軍を相手に一騎当千の活躍を見せその国を滅びの危機から救った。
これを成し得たのは、彼らが第四世代ギアを所有していた為だった。
○経済連盟とローレスの同盟
ローレスの力を理解した経済連盟の国々は、ローレスとの同盟を結んだ。
連合国や帝国と比べて軍事力に乏しい経済連盟の国々にとって、ローレスからの提案は渡りに船だった。
ローレスは経済連盟の基地を間借りし、そこを支部とした。経済連盟に雇われていた傭兵達の多くもローレスに参加した。
ローレスの力を借りて経済連盟は帝国の侵攻を退け、その支配から解放されていった。
そうして経済連盟は帝国の支配から解放され、ローレスはその規模を拡大していった。
○大戦の終結
勢いの削がれた帝国を見て、連合国は経済連盟、並びにローレスとの同盟を締結。
共同で帝国、並びにヴァンクールに対する作戦を執る。
連合国の支援を受けてヴァンクールでは内乱が発生。
力を削がれたヴァンクールはそれ以上の戦争行動は不可能と断念。ラーダッドの独立を認め、自国も経済連盟に加盟することを条件に終戦に合意した。
これを受けて帝国も終戦に応じ、大戦は終結した。
○第四世代ギアの開発競争が開始
大戦が終結した直後、ローレスが所有する第四世代ギアについての情報が全世界にリークされる。
彼らの操るギアにはエネルギー吸収物質、ジュノーの特性を応用したジュノーエンジンが搭載されていることが明らかになった。
リークされた情報の中には、ジュノーエンジンの製造方法も含まれていた。これを受けて各国は自国が保有していたジュノーを用いてジュノーエンジンを製造。
ローレスの第四世代ギアに匹敵する、否、上回る性能を持つ第四世代ギアを作り出すことを目指して開発を開始するのだった。




