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アンブロシアの種  作者: でれ
第1章
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1-5 スキルと腕試し

 子供らしいけどどこか質素な部屋。ベッドとテーブル、明かりのついたランプ、いくつか道具とおもちゃが入った道具箱、少し見覚えのあるタンス。

 少年、ノアはベッドに腰をかけるととなりをポンポン叩き座るよう催促した。


「少し狭いけどしばらくは一緒に過ごす部屋だ。自由にしてね。」

「ええっと、ありがとう…でも、なんで?この世界の人は他人にだれでもあんな風に迎え入れてくれるの?」

「もちろんそんなことないよ。最近盗賊もいるし、町自体は余所者に厳しいんだ。何の疑いもなく君を受け入れてくれたのは君がもらったスキルのおかげなんだ。」

「スキル?」

「君が神から貰ったスキルは好感恩恵なんだよ。初対面でも相手にある程度好感を持たれるんだ。もちろんすごく愛されるわけではなく、あくまでも敵対されることはあまりなくなる、ってことなんだ。」

「えーーー!そんなスキルあるの?!」

「チャームってとこかな。魅了魔法と少し違うけど、効果は似てるよ」

「ひぇ……すごい……」

「これで街中は過ごしやすくなるんだ。どこをうろついても怪しまれないよ。もちろん魔物には効かないけど。」

「なるほど……スキルか」


 手を見つめて閉じたり開いたりしてみても、なにも見えなかった。スキルは直視できるものでもないみたいだ。もっとわかりやすくキラキラ光ったりなんかよくわからない音が出たりするかと思ったけど、なにも出てこない。実感もないもんだから、正直に言われないと気づきもしないスキルだったかも。


 ノアは立ち上がり、道具箱から本をいくつか取り出した。一冊を手に取り地図のようなものを見せてくれた。


「この小さな街はここ、エメという。リンボ国の中にあって、次君が向かう場所は首都のダイヤになる。そこには冒険者ギルドがあるから、ここで数日過ごした後はダイヤに向かうと良い。」

「へぇ。ダイヤ。冒険者になってあっちこっちを行くことになるんだね。」

「そうだね。首都は交通の便もいいし、仲間もできるだろう。ダイヤに行ってから色々見て、好きなようにすると良い。」

「うん、わかった。じゃあここでは冒険の前に色々教えてくれるってことだね?」

「その通り。力の使い方やこの世界でのこと、ある程度知ってから行けば仲間ができたとしても過ごしやすくなるからだ。」

「ありがとう、助かるよ。じゃあ明日からスキルや魔法について勉強しよう。」

「今日は始まりの一歩ですらないからね。ゆっくり休んで明日ものんびりやっていこう。」

「ふふ。」

「ん?どうしたの?」

「いや、神の使いなのに随分人間くさいなって」

「そうかな。でもそうだね。神は正直、人間より本能的で感情的になりやすいよ。力があるからみんな心優しくて穏やかではない。物騒なのも多いし冷酷だったり贔屓もする。娯楽に飢えているから片っ端から創造もするんだ。」

「ええ……そうなの?」

「作り出した後、この世界に介入することはあまりないけど、神殿や神の泉など、神聖な場所にいけば繋がることもできるけど膨大な魔力が必要になる。よっぽどじゃないと繋がれないけどね」

「へぇ……会うことはできないだろうな。」

「まぁ基本気まぐれだから。もしかしたら会えるかもね」

「うーん、それはそれで怖い。」


 ノアから首都の説明、周辺の情報を教えてもらっていると、先ほどの女性の声が聞こえてきた。夕飯の準備ができたようで、ノアと一緒に向かう。

 キッチンすぐそばにテーブルがあり、そこにはいくつかの食べ物が並べられていた。甘い匂いがするスープに畑で見た野菜のサラダ、恐らく食べたことのない肉料理。とうぜん使い慣れた箸はなく、フォークとスプーンが置かれていて、見知った食器があることに安堵した。ほっとして腰をかけると、ノアによく似た男性が現れた。


「お、今日も美味そうだな。」

「あなた、お帰りなさい。さぁあったかいうちに食べましょう」

「おう。って、そちらはどなたかな?」


 本当に警戒されることなく自然な微笑みで声をかけられる。男性は水を手に取ると俺に差し出した。


「は、はじめまして、タカラです。ノアくんの友達で……」

「へぇ!ノアにこんな大きな友達いたんだな!どこから来たんだ?」


 突然の問いかけに固まる。どこからなんて言えるわけもなく、言い訳を探したが何も出てこない。

 どうしよう、とノアを見ると、彼はフォークを野菜に刺して頬張った。


「タカラはね、辺境の教会から出てきたんだ。長い間病気で外にあんまり出られなくて、最近治ったから出てきたんだって。首都にいく予定だから、しばらく町を見てから向かうんだって!その間うちにいてもらうの!」

「ほぉ!身体はもう大丈夫なのか?無理しないでゆっくりいて良いんだぞ!」

「あ、ありがとうございます…」


 すごい、すごいなこのスキル。地味に見えてとても便利かもしれない。いや、絶対便利だろ。

 さらりと受け止めてもらえた事に拍子抜けしたが、これがスキルの力ならばこれ以上怯えても不自然だろう。俺はひたすらノアのお父さん、お母さんから来る雑談ににこやかに相槌をし、時折ノアに助けられながら自分のスキルについて考えていた。


 明るい食卓でゆったりと食事を楽しんだ後、湯汲みまでさせてくれた。

 驚いた事にこの世界はお風呂の文化はあるようだ。木造でできた大きな桶。自分の世界に似たような浴室。親しみやすくて嬉しいけど、なぜこれがこの世界にあるのか、まだわからなかった。

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